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日本映画のススメ Vol2 大映70周年特別企画 これを読めば5分で分かる! 「大映」~日本映画の黄金時代を築いた作品と煌めくスターたち~

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『座頭市』シリーズに凝縮された勝新太郎の魅力

悪名

■ 「悪名」

©角川映画

かたや勝新太郎は長唄の杵屋勝東治の次男として生まれ、大映では当初は時代劇スターとして売り出したが、彼自身も後に語っているように長谷川一夫のコピーのような白塗りの二枚目路線で演じていたため、雷蔵と違ってまったく芽が出なかった。その彼に転機が訪れたのは60年の「不知火検校」である。金のためなら人も裏切り、女も犯す悪逆非道の限りを尽くす汚れ役を生々しく演じて、強烈なインパクトを残した。勝の魅力は見た目よりも、その内面から醸し出す人間臭さにあることを周りも認識し、以降は戦前戦後を度胸と腕っぷしの強さで生き抜いていく侠客・八尾の朝吉に扮した『悪名』全15作、田村高廣のインテリ上等兵と中国戦線を渡り歩いていく型破りな兵隊・大宮に扮した『兵隊やくざ』全8作などに主演して、トップスターの仲間入りを果たした。中でも彼の代名詞とも言えるのが大映時代に22作、その後4本の映画が作られ、TVでも全100本のシリーズとなった『座頭市』である。天保の頃を背景に、盲目で逆手居合い斬りの達人・座頭市の活躍を描いたこのシリーズには、独創的でアクロバティックな立ち回りは勿論だが、勝が持つ人間的な可愛さや優しさが、すべて凝縮されている。『座頭市』シリーズは日本だけでなく東南アジアや香港の映画にも影響を与え、アメリカでは後に「ブラインド・フューリー」(89)としてリメイクされるなど、世界的に人気を集めた。市川雷蔵は時を超えて日本人の美意識を体現したが、勝新太郎は海を越えて世界の人間のハートを掴んだ俳優だった。

京マチ子、山本富士子に続く大映の女優として忘れてはならないのが若尾文子だろう。特に「青空娘」(57)に始まる増村保造監督とのコンビによる「『女の小箱』より 夫が見た」(64)、「卍」(64)、「刺青」(66)など女性の情念を表現する作品での演技は、その溢れ出るエロティシズムとともに記憶に残る。また勝新太郎と結婚した中村玉緒も、大映時代劇を中心に活躍した代表的な女優だ。

白い巨塔

■ 「白い巨塔」

©角川映画

このほか男優では『悪名』シリーズで勝新太郎とコンビを組み、社会派サスペンス「黒の試走車」(62)や医学界の裏側を描いた「白い巨塔」(66)、軽快なガン・アクションが魅力の『犬』シリーズなど、都会的なスターとして活躍した田宮二郎。さらには宇津井健や船越英二といった現代劇の俳優たちも大映映画の一翼を担っていた。

大迫力とスペクタクルで観客を魅了した特撮映画

ガメラ

■ 「ガメラ」

©角川映画

また大映が得意としたものに、特撮映画がある。49年には、戦後日本発のSF映画と言われる「虹男」「透明人間現わる」(この特撮には円谷英二が参加している)を作った大映は、56年になると画家の岡本太郎が宇宙人や円盤のデザイン、さらには色彩指導まで担当した「宇宙人東京に現わる」を発表。58年の「日蓮と蒙古大襲来」では蒙古の船団が暴風雨で砕け散る場面を、「釈迦」(61)では高さ28mのインドラ魔神像が崩壊する場面を特撮で描くなど、スペクタクル映画と特撮技術を融合させた大作も連発。

こういう技術的な下地があって、65年に『ガメラ』シリーズが登場する。東宝の『ゴジラ』シリーズに対抗する形で生まれたガメラは、熱線を吐き、空を飛ぶ巨大な亀形の怪獣。2作目からはユニークな敵方怪獣とのバトルが展開され、71年までに7作が作られている。ガメラの成功を得て、66年に全3作が製作されたのが『大魔神』。女性や子供の純粋な願いによって目覚め、悪を倒す魔神の大暴れを描いた作品である。以前、このシリーズの美術を担当した内藤昭に話を聞いたことがあるが、当時の大映京都には特撮のノウハウがなく、美術は普通の時代劇のセットを小型化したものを作ったとか。つまり張りぼてではない中味が詰まった美術セットだったため、魔神が建物を壊す時にもなかなか壊れない。それが逆に作品の重厚感にもつながり、見る者にインパクトを与えたのだろう。他にも68年には、「妖怪百物語」「妖怪大戦争」「東海道お化け道中」(69)と続く日本の妖怪キャラ総出演の楽しい子供向けシリーズもあり、大映は怪獣と戦争映画の色合いが強い東宝特撮映画とは一線を画した作品を生み出していった。

大魔神

■ 「大魔神」

©角川映画

良くも悪くも社長の永田雅一が豪腕を振るい、スターや話題作を世に送り出した大映は、日本映画界の斜陽に伴い、経営が悪化して71年12月に倒産。その後は徳間康快が経営を引き継ぎ、現在は2002年に営業権が譲渡された角川書店に大映の貴重な映像遺産は受け継がれている。この機会に、その歴史ある名作群を是非御覧になっていただきたい。

(文=金澤誠)

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