由美は十九才の洋裁学校へ通う平凡な娘だった。女手一つで育てあげた母親のトミにとって、由美は何ものにもかえがたい宝であった。だが、長年水商売を渡り歩いて来たトミは男っ気がとぎれたときがほとんどなかった。吉村もそんなトミの何人目かの男だったが、吉村は由美の見事な身体に食指を動かし、ある晩由美を犯した。帰宅したトミは興奮のあまり、吉村を包丁で刺殺した。刑務所へ入った母親のもとへ由美はせっせと通ってはげまし続けたが、自分の生活のためにトミの勤めていた場末のバーを手伝うようになった。トミは自分と全く同じ道をたどろうとする由美を案じて、バー勤めをやめるように説くが、由美の決心は固かった。由美に目をつけ、執拗に追い回すやくざの風間から彼女を救ったのは、銀座の高級クラブのマネージャー野沢だった。野沢は由美の身柄をクラブのママで自分の愛人でもある衣子にあずけた。銀座に出た由美は水を得た魚のように、着実に得意客をふやしていった。しかし、由美は母親の悲しみを見てきただけに肉体の安売りだけはしたくなかった。それは野沢のどこかくずれたインテリ臭さにひかれるものがあったせいでもある。やがて、由美を手に入れようとする男が何人か出てきた。由美はポーカーの勝負で負けたら、言いなりになるともちかけ、玄人はだしの腕前で、たちまち数十万円を稼いだ。だが、この賭博も仲間のホステスの密告で、警察の取調べをうける破目になった。そんな時、野沢は由美をクラブの社長加田に紹介した。加田には妻子がなかったが、妻になれと言い、野沢もこれをすすめるのだった。由美は野沢の言葉が哀しかったが、かえってふんぎりをつけることにもなった。莫大な日々の手当と豪華なマンションと加田のあくなき愛撫をうける由美の生活。こうした由美を刑務所のトミは複雑な気持ちで見つめていた。この生活も長くは続かなかった。加田が脳溢血で急死した。由美は加田の子を妊娠していれば、身寄りのない加田の遺産が相続できることを知ると、野沢の前に身体を投げ出した。こうして、懐妊証明書をたてに、地団駄を踏む親類を尻目に大金を手に入れた由美は結婚を迫る野沢をも振り切って、トミのもとにもどってゆくのだった。