裕福な家庭で育った新次(井浦新)は、妻との間に一人娘も生まれ、周りの誰もが羨む理想的な家族を築き上げた。しかし、死の危険を伴う病気に蝕まれた今は、とある病院で療養していた。手術を控えた新次には、臨床心理士のまほろ(水原希子)が付き添い、常に心理状態をケアしていた。それでも眠れず、食欲も湧かず、不安に苛まれる日々の中、まほろから“普段、ためこんでいたことを話すと、手術に良い結果をもたらす”とのアドバイスを受け、過去の記憶を辿る。そこで新次は、海辺で知り合った謎の“海の女”(三浦透子)や、“強くなりなさい。そうすれば守られるから”と母(斉藤由貴)に言われた幼い頃の記憶を呼び起こす。記憶が蘇ったことで、さらに不安が拭えなくなった新次は、まほろに“それ”に会わせてほしいと懇願する。“それ”とは、病気の人間に提供される、全く同じ見た目の“もう一人の自分”だった……。“それ”を持つのは、一部の恵まれた上層階級の人間だけ。選ばれない人間には、“それ”を持つことすら許されていなかった。“それ”と対面した新次は、自分とまったく同じ姿でありながら、自分とは異なる内面を持つ純粋で知的な“それ”に関心を持ち、のめりこんでいく……。