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サーカス団が巡業に出発するオープニングからC・ファレル登場までの流れるような導入部で、素晴らしすぎて早々に泣く。もっと落ち着いたペースで見せてほしい気もするが、どこから集めたのかと思う見事な顔の役者たち、ダニー・エルフマンの劇的な音楽、神経の行き届いたT・バートン演出の名人芸を、最後までぜひ楽しまれたい。ディズニー映画なのに、M・キートンがノリノリで演じる悪役がテーマパーク経営者なのがめちゃロック。科学少女ミリーが最後にたどり着く場に心打たれる。
チェイニー夫妻の演技にはシリアスさがあるが、それ以外の有名人たちはそっくりさんショーレベルに戯画化された可笑しさ。途中にラストシーン(?)があったり急にシェイクスピアになったりの、人を喰った映画にこの演技モードはふさわしい。でも、おふざけよりも怒りの気持ちのほうが作り手のなかで勝っているから、最終的には、軽やかさを志向しながらもそうなれずにいる、みたいな映画に。とはいえこの怒りは当然だと思う。エンドロールが始まってもすぐには席を立たないのが吉。
誰もが言うだろうとおり、「タクシードライバー」と見せかけて、という映画だが、スタンダードサイズで色の抜けた映像にクラシカルな文字で題名やキャスト名等がかぶさるオープニングが古典映画を思わせるほか、設定はベルイマンとブレッソンの某有名作品を参照していて、彼ら、あるいはカール・ドライヤー的なものを志向していることは、「霊性」を帯びた画面からも見て取れる(興味深いことにそれはホラー映画の画面に似る)。あるシーンでのA・セイフライドの髪の動きに深く感動。
何かを憎めば人はその憎しみの対象と似てしまうものだとはよく言われるが、この物語はまさにそう。殺人鬼の狂気が感染し、人生が狂わされていく。しかしマイケルがいなくなったら、マイケルに取り憑かれているローリーもまた生きていけなくなるのでは、などと考えさせられ。小道具を活用し、衝撃的シーンへの段取りを丁寧に積み上げていく手つきが堅実。アクションスリラーの面白さがあるのでホラーが苦手な人にもお薦め。ジェイミー・リー・カーティスが言うまでもなく素晴らしい。
さすがティム・バートンの演出だけあって実写映画化のダンボが誕生するところからして質感がある。貧しいサーカス一座の哀愁と笑いもよく描かれ、やがて一同が金のある大舞台に移行していく場面はメリハリがあって、見事。コリン・ファレルやエヴァ・グリーン、マイケル・キ―トンらの演じるキャラクターが明快であるのとともに、物語が実に分かり易い。群衆の頭上をダンボが大耳で風を切って飛んでいくのを見ると、バートンにはさらにディズニー・アニメの実写化を期待してしまう。
副大統領にスポットを当てた政治劇ということだけでも興味深いが、ジョージ・W・ブッシュのような大統領が相手だと、クリスチャン・ベールの迫力のある演技もあって、イラク戦争を始めた黒幕はやはりチェイニーに違いないと思える。ロブ・ライナーの「記者たち」と同時代を描く作品でハリウッドの政治的関心を表現。だがイェール大学を素行不良で放校された男がリン夫人の支えがあったとはいえ、どうしてアメリカを動かす人物になれたか。ワイドショー的手法では、判然としない。
「タクシードライバー」の主人公と同じく、ニューヨークにある教会で牧師を務めるイーサン・ホークもまた、現代アメリカが抱える、日常的な諸問題に悩みながら生きている。イーサンは息子にイラク戦争の従軍牧師になるように勧めた結果、彼を戦死させ、そのせいで妻とは離婚。さらに地球温暖化を怖れるあまり、自殺する信者もいて、物語は途方もない展開になる。しかしポール・シュレイダー自身、牧師の子なので、教会や信者との関係はリアルに演出され、撮りたかった意欲が伝わる。
ハロウィンの夜、なんの罪もない少女たちがブギーマンの仮面をつけたマイケル・マイヤーズに襲われる。それがトラウマとなってローリー・ストロードは家庭生活も破綻する。マイケルを研究する精神科医や仮面を突きつけて取材をするジャーナリスト男女たちが自由になったマイケルに連続して殺されるのはまだしも、40年も武装して怯えながらマイケルの出現を待つローリーの物語は、あまりにも暗すぎる。登場する男性すべてが頼りなくて、ローリーと、その娘、孫娘の女性3人だけが闘う。
母を亡くした姉弟と母と引き離されたダンボ、腕を失った曲馬師と巨大な耳を持ったダンボ。人間のキャラたちとダンボの境遇を重ねた展開はウェルメイドしているが、空を飛ぶだけで終わりの旧版と比べれば内容があると言える。だが、旧版は“ピンク・エレファンツ・オン・パレード”を堪能するトリップ映画でもあるので、それをバートンがいかに膨らませるか期待したが軽いオマージュ程度で残念。でも、ファミリー向けにしておいて某世界的遊園地のダーク・サイドを揶揄する姿勢は◎。
新保守主義を支えたディック・チェイニーの思想や信条がどのように生まれていったのかには触れていない。だが、なにかと夫をけしかける妻の背景は短いがバシッと理解できるよう描かれている。憶測でもいいから彼なりの大義や価値観について踏み込まないと、この手の政治家はただの悪玉にしか見えなくなってしまう(まぁ、けっして善人ではないだろうが)。というわけで伝記としては半端だが、アメリカがイヤ~な感じになっていく過程を追った実録ものとしては問題なく観られる。
厳格なクリスチャンの両親に育てられたP・シュレイダーが抱いてきたであろう宗教の矛盾や欺瞞への怒り、それでもそこに神秘や奇跡があるはずだという願い。宗教と企業の癒着を見せられてゲンナリしていると、突如として宇宙へと繋がるスピリチュアルな場面には、本気でハッとさせられると同時に彼の想いをひしひしと感じさせられた。中盤からは、シュレイダーが脚本を務めた「タクシードライバー」のトラヴィスよろしくE・ホークが狂気に駆り立てられる展開となっていて身悶え。
なんだか「ターミネーター2」みたいな話だが、マイケルという怪物の存在によってジェイミー・リー・カーティスもまた彼の討伐に取り憑かれた怪物となってしまったという設定が素晴らしい。二階から転落するも瞬時に姿を消したり、教室の窓越しに佇んでいたりと、第一作でマイケルが担っていた不気味なシーンを彼女で再現するあたりも怪物化に拍車を掛けていて◎。こうしてふたりの殺る気を見せつけて迎える対決にしっかりと燃えた。間の7作がないものとされるのは寂しいが……。