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この奇想天外な世界を説得的に視覚化するのは相当な困難だと思えたがまあまあクリア。スター不在のキャスト(余計なお世話じゃ)でこれだけの製作費を回収するのは果てしなく難しそうだが、続篇のほうが面白くなりそうなので、できれば続けてほしいところ。いちいち機械的に回想シーンを入れる凡庸さは何とかしてほしいが、宮崎駿の活劇を思い出させられるところもあり、意外なことに正統派恋愛映画でもある。ヒロインを追う人造人間のキャラクターが、哀しみがあってなかなかいい。
映画として特別冴えているわけではないし、これだけの長距離を移動していながら土地ごとの風土が映像にほとんど表われてこないのももったいなさ過ぎるのだけれど、主人公ふたりの魅力がそれらを補って余りある。「誰これ?」と言いたくなるくらい増量してV・モーテンセンが演じたイタリア系(!)のトニーも、一歩間違えばただの偏屈男になるところをM・アリがエレガンスと知性で魅力的に造形したドクも、好きにならずにいられない。車内でフライドチキンを食べるくだりは名シーン。
主人公にはイーストウッドがこれまで演じたすべてのキャラクターが重なり、「父と子」の主題が次々とずらされつつ変奏され、やがて「贖罪」の主題が浮上する、まさにイーストウッド映画! だが何よりもまず、コメディ、サスペンスとあらゆるジャンルを軽やかに横断し、やがて急転直下で観る者の胸を締めつける、相変わらずのこの手腕は何なのか。撮影が今回トム・スターンではないことと関係しているのか、90年代のイーストウッド(「パーフェクト・ワールド」等)もちょっと想起。
「イップ・マン 継承」でとても魅力的だった敵役、チョン・ティンチのその後を描くスピンオフ。戦時中に各国で製作されたナショナリズム高揚映画みたいな匂いも多少するけれど、アクションシーンでこれほど興奮させられたのは久しぶりだ。振付けも素晴らしいが、動きに合わせてのまめなカット割りもキャメラの動きも、アクションを最も美しく見せることにひたすら奉仕しているのが素晴らしい。主人公が守ろうとしていた「普通の暮らし」を、的確に描写している冒頭部分も何気によい。
最終戦争で荒廃した地球が舞台。生き残った人類は移動型の都市で、より弱い都市を喰いながら存在しているのだが、移動する設備のデザインがなぜかノスタルジックなイメージなのがおかしい。移動都市ロンドンが遠景に見えて動きだしたときは、誰しもそのディテールに過大な期待をもつ。世界はやはり弱肉強食で、富裕層は高い所に住み、低地の労働者は難民のように描かれる。銃器をもって戦う場面になると、人間の物語なので、P・ジャクソン製作でも、普通のアクションものになっていく。
音楽史に残る黒人ピアニスト、ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)と彼に運転手として雇われて、アメリカ南部を旅するトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)のコンビが絶妙だ。ニューヨークのコパカバーナに始まり、行く先々のクラブで音楽がたのしめ、ロードムービー独特の風物もいい。トニーの息子、ニック・ヴァレロンガが父から聞いた実話を脚本化したもので、こまかいエピソードが面白くて笑わせる。しかし1962年の南部の黒人たちの姿は哀しすぎて、怒りをおぼえる。
イーストウッドの映画を見続けてきたものには、全篇、思い当たる所が多く、画面にひきつけられた。園芸にうつつをぬかして家族をかえりみなかった老人を主演にすえるとは、脚本からして素晴らしいアイデアだ。彼が麻薬の運び人に利用されているとどこで気づき、また、悪事を反省しているのかどうかなど、はっきりさせない展開も、この主人公らしい。劇中の娘を実の娘アリソンが演じ、いろいろなエピソードもイーストウッドの私生活を反映しているようで、よくぞここまでやってくれたと思う。
イップ・マンとの闘いに敗北し、武術を捨て、小さな食料品店を営みながら、息子を育てている主人公チョン・ティンチをどこか影のあるマックス・チャンが演じているのが適役。1960年代の英国植民地下で、必死に生きようとする家族の物語にしたことで、ベテランのユエン・ウーピン監督はパターンになりがちな香港アクションを活性化している。街並みはいささか嘘っぽいが、闇の世界から足を洗おうとするミシェル・ヨーの姉と悪に徹する弟ケヴィン・チェンのサブストーリーもあって派手。
ロンドンが小都市を捕食する冒頭は見入るが、都市や建物が疾走するアイデアはモンティ・パイソンの「人生狂騒曲」や「ハウルの動く城」「鋼殻のレギオス」などでお馴染み。また、デス・スター的兵器を抱えたロンドン、そこへ突入する戦闘飛行船群ととどめの刺し方、空中都市の造形とそこに敵が現れて崩壊するさまなど「スター・ウォーズ」をトレースしたような描写が続き、良くも悪くも同作の偉大さを痛感。プレスに載った、ウェイランド湯谷のTシャツを着た監督には親近感を覚えたが。
主人公ふたりが車で回るのは米南部だが、その片方は黒人。時代は60年代初頭。どうしたって辛いシチュエーションが続くわけだが、その合間に同国ならではの国土だけではない懐の広さ、風景だけではない美しさも映し出す。実際に足を運んで目にしないとわからないアレコレを彼らの旅を通じて教えてくれる、ロードムービーとして極上の作品。黒人の大好物=フライドチキンのエピソードを筆頭に、差別や偏見の芽となる先入観を笑いと涙の双方で活かすP・ファレリーの手腕はお見事。
ラストベルトとなったデトロイトや再び壁で騒がれる国境沿いが舞台と、アメリカについていろいろと考えてしまう要素がちりばめられている。だが、「ハドソン川の奇跡」同様に“お仕事映画”として鑑賞。稼ぎ方の選択やそれに伴う責任といったものだけでなく、年長者として父親としての本分といった意味での“仕事”も描かれる。もちろん、人たらしによる人情劇、クライム・ロードムービー、そして実娘と父娘役で共演することで醸されるイーストウッドの私映画としても見入ってしまう。
香港&中国を蹂躙する外国人を倒すという話は本線シリーズと変わらないが、やはりM・チャンが演じた張天志を消すのは惜しいし、彼のアクションも観たいのでそのあたりは気にならず。しかも相手はT・ジャー筆頭に腕に覚えのある者ばかり、戦いも袖看板を跳躍するものから数十人をぶちのめす大立ち回り、そしてパワー重視の巨軀西洋人との激突と多種多彩なのも◎。といっても、そこも本線と変わらないが……。武術家を引退した張天志が、木人椿を洋服掛けにしているのには笑った。