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何ごとも食わず嫌いが一番いけない。高校、大学、社会人になっても、ひとりの初恋の女性を想いつづける男の姿は絵空事だが、信じてみたいとも思わせる。高校のときの彼女と結婚し、二子をもうけている同級生がいるが、本人たちからすれば本作のような劇的なできごとのくり返しがあったのかもしれない。と書いたところで、言葉が尽きてしまった。2時間近く最後まで楽しめた娯楽作だが、この作品を評するための言葉がわたしには欠如している。今までいったい何をしてきたのだろう?
見事に個性的なシナリオ。幼稚園のお迎えで知り合ったママ友が謎めいた美女のキャリアウーマンで、そこからプロタゴニストとアンタゴニストを対照的に描き、最後には主人公が成長して対立者を乗り越える。ハリウッドのエンタメ映画内でも、特筆に値するウェルメイドな作品だ。とはいえ、96歳で亡くなったジョナス・メカスが非商業的でオルタナティヴの、アンダーグラウンドな映画を擁護したのは、このような完成度の高さが非人間的な商品を生みだすだけだと知っていたからだろう。
日本とシンガポールのハーフの青年が、家庭の味のルーツを求めてシンガポールにくる。ストーリーは多少無理のある家族ドラマだが、シンガポールの国民食になった海南鶏飯や伝統料理バクテー(肉骨茶)の背景にある、深い歴史や洗練された料理法に感心するばかり。そう、これこそ書き手としてのわたしが、アジア映画に活路を見いだした理由のひとつなのだろう。ラーメンという中華や和食が混淆した料理に、主人公が自分のアイデンティティを見いだすラストシーンにも心動かされる。
イギリス映画が苦手なのは、必ず主人公の前に田舎の保守的な空気が立ちはだかるからだ。これまでの人生、どれだけ保守派や伝統主義を名乗る人たちのせいで、迷惑をこうむってきたことか。彼らは立派な御託をならべるが、結局のところ本作に登場するガマート夫人のように、他人が自由に楽しく生きることを邪魔したいだけなのだ。若いときは「さまざまな考え方の異なる人とも交流して……」と考えたが、残りの人生の方が短くなった現在では、保守的な人間とつき合っているヒマなどない。
恋愛映画の王道、すれ違いでつづる長すぎる春の話なのだが、邦題から結末は割れている。ヒロインが母と二人で父親のDVから転々と逃げ回っている設定も、すれ違いを支える必要な要素になるにはなる。であっても内容にこれといった新しさはなく、就活の失敗など、ここ一番の大事を人のせいにしてうじうじする男に対して、利発で行動的な女の恋愛を、「タイミングの合わない恋」というだけのエピソードで引っ張るのは物足りない。尺も長い。でも主演の二人の感じの良さに★一つ進呈。
人妻の失踪から「ゴーン・ガール」を思い出したが、しつらえに時代の違いがくっきり。ママ友からのちょっとした頼みごとを引き受けたことがきっかけのこのミステリーは、フレンチポップスのBGMで始まり、A・ケンドリックのキャラ設定もブロガーなので、動画サイトを閲覧している気分に。SNS時代ならではのスピーディな、誰を信じたらいいか混乱させられる展開は面白い。それでも、彼女がB・ライブリーを探しに行くあたりからは、やっぱりそうなるか……の、限界も感じる。
まず食が題材の映画は、大好きなジャンル。ほとんどの場合、食・人・場所が分かち難く絡まりあい、ドラマに人情味があふれているから。この映画がまさに好例。ルーツをたどる過程で、日本とシンガポールの両国に刻まれた不幸な歴史が浮かび上がり、それぞれの国のソウルフードを融合させた新しい料理に着地。ストーリーと展開、そしてキャスト (特に斎藤工とビートリス・チャン)の、三者間の調和でドラマが豊かに。ただフードブロガーの存在が浮いて、それに水を差しているのは残念。
保守的な田舎に他所者が本屋を開店しても、必ずしも周囲の賛同が得られない。それを承知の上で実行するヒロインの勇気と努力に監督コイシェの気質が重なる。劇中に登場する原作にない本『火星年代記』『たんぽぽのお酒』には彼女のこだわりも。特に読書が禁止されて本が燃やされる『華氏451』。トリュフォーによる映画に主演したジュリー・クリスティが今回ナレーション!? さらに映画の仰天の結末は、勇気のバトンの継承と理解した。力強く、本好きにはたまらなく愛しい映画。
腐れ縁の男女のラブストーリーかと思いきや、現代の韓国に生きる平均的な男と女の半生を長い目で見つめたほろ苦い人生賛歌で、いい意味で期待を裏切られる。進学、就職とコマを進めて行くにあたり、若者が直面する問題や挫折がさりげなく盛り込まれていて、いわゆる「普通」とカテゴライズされるであろう人の身に起こるドラマを過不足なく再現している腕はあなどれない。初恋が成就したからといって幸せになれるとは限らないし、ほんの一言が命取りになるのもまた人間の定めなのだろう。
いくらなんでもミステリーとしてこのトリックはあまりに強引でトンデモに近い。女性同士のバトルや共犯関係をサイコパスVSサイコパスの応酬として描く視点は悪くないけれど、それとコメディとのマッチングが上手く成立しているとは言い難い。この監督は「ブライズメイズ」でも女の友情をいじり倒していたが、女性のイメージを無責任に笑いものにされているようで気分はよくなかった。現代のステップフォード・ワイフ的なアナ・ケンドリックの顔に貼りついたスマイルがひたすら怖い。
昨秋パリで観たときは「ラーメンの味」という仏題で公開されていた本作。合作国でもあるフランスでは「お茶漬の味」的なイメージだったのだろうか。実際、原題の「Ramen Teh」の「Teh」はマレー語でお茶を意味し、劇中ではラーメンとバクテー(Bak Kut Teh=肉骨茶。バクテー自体にお茶は使われていないが)をはかることで、家族再建ドラマへと展開していくため、小津の連想はあながち的外れでもない……かも。グルメ描写や日本・シンガポールの国交プロジェクトとしてはなかなか。
海沿いの田舎町は風が強く、空模様は常に曇りがち。ドラマは終始不穏な気配に支配される。本好きのヒロインを演じたエミリー・モーティマーは自分の好きなものややりたいことは正しいと信じて疑わない(実際それが間違っているとは言えないゆえに厄介な)潔癖さを絶妙に醸し出し、そういう頑なな姿勢がある種の人たちの反感を招くだろうなと思わせるところがリアル。一つのシーン内で同ロケーション、同アングルのショットがもたつくくだりも多く、映像としてはやや辛いところも。