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ハンサムで聡明で論理的なゲイリー・ハートの魅力と欠点(それもまた魅力だが)をヒュー・ジャックマンがきっちり体現。でもこの映画は彼の物語というよりは、彼を中心とした群像劇。お仕事ドラマとして観るのも可能。ハートの活躍の裏で女たちが踏みつけにされていたことを示唆しているのがイマっぽい。スクープをものにしたマイアミ・ヘラルドの政治記者の複雑な表情も、ポスト紙の若い黒人記者が抱える行き場のない思いも心に残る。ピアノをフィーチャーした音楽もなかなかいい。
古典ミュージカル映画の感じをこれだけ踏襲している映画は随分久しぶりで、嬉しくなってつい星の数を奮発。その「感じ」に最も貢献しているのが素晴らしい楽曲群なのは言うまでもない。64年版を踏まえてどーんとバージョンアップしたアニメ合成シーンが楽しく、本物のミュージカルスター(ミランダ)と互角にわたり合うE・ブラントにまたもや瞠目。おまけにディック・ヴァン・ダイクが、64年版でバート役の傍らカメオで演じた役の息子に扮し、しかも踊るのだからもうどうしましょう。
さまざまな映画や伝説の楽しいパッチワーク。海底版スター・ウォーズが展開されるだけでなく、半神ヘラクレスにも似た境遇の青年アーサーが、ヘラクレスのように各地を冒険し、やがてエクスカリバーならぬ三つ叉の槍の引き抜きに挑む。こんなに何でもCGで作れてしまっていいのかという気もするが、ここぞというタイミングで必ず決めポーズみたいに投入される、圧倒的イメージの魅力に抗するのは難しい。活劇的には、シチリア島でのアクション・シークエンスの、空間の使い方が白眉。
チャゼル監督の過去作はどれも、成否はともかく「俺はこれが撮りたかったんだ!」という声が聞こえてくるかのようだったのだが、今回は、「俺はこういうのも撮れるんだ!」と熱弁されているような気分。観客をエモーショナルに巻きこむ明確なストーリーラインが不在であることと、あたかも即興撮影であるかのような画面は、この映画をまるでドキュメンタリーのように見せている。接写の多さから来る閉所恐怖症的な感覚が強烈。一カ所だけワルツが流れるのは「2001年」オマージュ?
ヒュー・ジャックマンの演技からゲイリー・ハートがアメリカを良くすることに熱意を燃やす政治家であることは伝わってくる。だが、現代のわれわれからすると、とるに足りないと思える女性関係の質問について、彼がなぜ、もっと丁寧に答えてやらないのかと、いらいらする。政策とは別問題だと、上から目線で応じないのだ。一方、いまでは珍しくもないマスコミがどっと押し掛ける事態にはそれなりに慌てる。ライトマン監督はそんな時代の移り変わりをクールな演出で見せてくれた。
ジュリー・アンドリュースの「メリー・ポピンズ」をロブ・マーシャル監督やヒロインのエミリー・ブラントが大好きだったことで、55年後の映画化も巧くいっている。街灯点灯夫リン=マニュエル・ミランダが歌と踊りと人柄のよさを感じさせる演技で冒頭から作品を引っ張り、傘を手に空から登場するブラントは堂々としてツンとすました顔。「クワイエット・プレイス」とはまた別の面を見せる。点灯夫たちの自転車部隊や風船の乱舞など、さすがディズニーらしい贅沢さで、楽しめた。
地上と海底とにわたるアドヴェンチャー活劇なので、海底の動きがいかに撮影されているかが最大の興味。自然に見ることができたから、映像技術の進歩にまずは感動。配役もアクアマンとしては打ってつけのタフさをもつジェイソン・モモアと赤い髪を海中になびかせて動き回るメラ、アンバー・ハードのコンビは絶妙。冒頭からアトランティス王国の元女王としてニコール・キッドマンが妖しく登場するのも作品を面白くした。ウィレム・デフォーが主人公を賢人として見守り、映画は成長物語風に。
ニール・アームストロングの月面着陸については夢中になってテレビを見た記憶があるが、チャゼル監督のリアルな演出によりその舞台裏を知り、おどろいた。現代から見ればお粗末な設備で犠牲者も出しながら、宇宙飛行士たちは危険なミッションに挑む。ニール役のライアン・ゴズリングと妻を演じるクレア・フォイのコンビが説得力のある芝居で彼らの人間関係もよく分かった。クライマックスの月面着陸は光と影を巧く使って臨場感たっぷり。宇宙飛行の果たした意味は何か考えさせる作品。
公人として優秀ならば、私人としてのスキャンダルは許されるのか?政治家に対する過剰報道は、公人の適正ジャッジとして機能するのか?ゲイリー・ハートの失墜劇を息詰まるタッチで描きつつ、そのあたりもしっかりと考えさせるのはさすがジェイソン・ライトマンといったところ。彼と長く組んでいるE・スティーバーグによる撮影も素晴らしく、弁解しようがない醜聞を捉えた写真を携えた記者の来訪を機に、ゲイリーがすべての終わりを悟るまでを追いかけた終盤の長回しはお見事。
VFXバリバリだが、前作の世界観を壊さないクラシカルな画作りを目指した仕上がり。伝説のアニメーター集団ナイン・オールドメンが手掛けたかのようなアニメーションと実写の融合はやはり楽しくて夢うつつの状態に。メリーが混迷の世を生き抜く術を子供たちに教える展開はいま風だが、主人公一家の窮地を救うのが投資だったというのは夢がなさすぎ。そのわりに夢と希望を持とうと訴える矛盾には、スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャスと唱えたくなる。
『アーサー王の伝説』と「マイティ・ソー」をブレンドしたプロットだが、鱗を模したタトゥーに長髪というワイルドな風貌、言動すべてが不遜極まりないアクアマンのキャラに惹かれて気にはならない。それでもハリウッドスター版『浦島太郎』でも見ている気になるが、奥にヒロイン、手前にアクアマンを配したレイヤー的構図で斜面状の街を戦いながら駆け下りる長回しのパルクール的アクションを繰り出したりするので気は抜けない。イルカやシャチに乗って賢人ぶるウィレム・デフォーも◎。
アポロ11号の月面着陸は、人類の誰もが知っている話。だからなのだろう、デイミアン・チャゼルはアームストロングの目にしか映らなかったもの、頭に浮かんだものだけをとことん再現して見せようする。従って臨場感はあるが、スペーシー全開といった高揚感のある画はなるたけ排除。それゆえに月面から地球を見上げるアームストロングといった「これぞ!」というキメた画に思いっきり鳥肌が出てしまうのだ。IMAXもいいだろうが、できるなら4DXでガタガタ揺らされて鑑賞したい。