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平成31年の春に、旧家の跡取りは男子に限る、なんて映画が登場したのに呆れた。昭和30年頃ならまだ通用したろうが、当時でも、まともな監督なら喜劇にしたはず。それを大真面目にやってる。極めつきはラスト。加藤雅也演じる当主は、惹かれて関係を持った秘書の沙羅(陽月華)が子供を産めないからと彼との結婚を断ると、それまで遠ざけていた美紀(伊勢佳世)を抱くのだ。これじゃ女は子供を産むための道具という話じゃないか。それを女性製作者のもと女性監督が撮ったのに絶句!
難病ものから余命ものへ、という最近の恋愛映画の流れに乗った一作。余命1年のヒロインの恋愛、というのはお約束だが、彼女が幼時から病弱で、少女漫画の恋愛しか知らないとした点がミソ。そんな彼女は、偶然出会った男に、自身の病気を隠したまま契約恋愛を申し込む。いわば、恋愛ごっこの始まり。それが、いつ本物になるか、というのが物語を牽引していくのだが、そこでヒロインの少女漫画仕込みの「恋愛」と実際のそれとのズレがもっと出ていたら面白いのだが、そこまでは到らず。
映画を期待して見る映画ではない。ただし、タイトルが示している内容を学ぶには、格好のテキストになっている。同じことを書籍の形で出されても、それほど訴求力はないように思う。という点では、一応映画というメディアを使ったのは正解だろう。とすれば、劇場での期限付きの上映もさることながら、各地の自治体の予防医療関係の機関にでも働きかけて、全国の公民館等で上映をするのが、いまだ知識を持たない人々への、がんに対する啓発として大いに役立つのではないか。
このタイトルが、実に象徴的。というのも、まずは、「名張毒ぶどう酒事件」があった葛尾村が、奥西勝を犯人とする検察及び裁判所の決定に従い、以後57年、沈黙のうちに忘れたように眠っていること。そして、自供だけに頼った嫌疑を否定し、無罪判決を出した一審以外は、新しい証拠にも目をつぶり、自供を理由に死刑判決を下したばかりか、十度に及ぶ再審請求をことごとく棄却した日本の裁判所もまた、眠る村にほかならないのだ。この事件を執拗に追い続けた東海テレビに脱帽する。
これは絶品。跡継ぎを失った名家の家長とその母親の悪あがきを、あくまで正攻法、真正面から描く。昨今の風潮だと喜劇っぽくなりそうだがそうじゃない。見どころは多いが、とりわけ経営者一家と先代からの部下一家の関係が懐深くていいですね。愛憎関係と言ってしまうと愛より憎の方が強い感じ。これは愛情の方が中心。根は善人だが酷薄な加藤雅也社長が腹心の部下田中要次を左遷したことから起こるいざこざとか。日本映画らしからぬ繊細さで描かれる再婚候補者二人のてん末も優秀だ。
星は少ないが大いに楽しめる。病身の美少女が期間限定の恋人をお金で調達する、というコンセプトが抜群。と言っても汚らしい物語ではなく、あくまで純愛として成立させようとするのがミソである。そこにオーロラ観光もからめてムードは満点。でも三回もチャレンジしなかったら、もっと短い上映時間で済んだのではないか、と思わないでもない。そもそもなけなしの貯金が彼女にとってどういう意味を担っているのかがよく分からない設定なのだ。生活費と治療費はどうしているのだろう。
最近盛んに二人に一人がガンになる、と保険のCMで脅かされ、多くの人がそれなりに考えているようだ。この映画のナビゲーターも脅かされたクチで、それが説得力を増している。細かい内容は書かないものの、個人が病気と共に生きる選択をしやすい社会実現に向けて、効果的な情報宣伝になった。特に自身も現在ガンであるという女医さんの生き方が良い模範である。病気を楽しめとは絶対言えない道理だが、にもかかわらず、なったらそれを楽しむしかない。それが病という生の本質である。
このテーマ、ドキュメント・ドラマ形式で製作された版を見ており、特に今回のものを高く評価する理由はない。ただ日本のムラ社会の闇と、警察組織の不正をたっぷり見せつけられて圧倒されることに変わりはない。気がかりなのは「真犯人は誰か」という点にあり、最初、冤罪で逮捕された男の亡くなった妻を被疑者としていたと判明する。警察は、犯人を生きた者の中から出すことに面子を懸けていたのかもしれない。そういう考えの人達が我々をいつでも逮捕出来る社会、それが日本なのだ。
クレジットを見なければ外国人監督が撮ったとは気づくまい。イラン映画との親和性を思えば納得するが、ニッポンを誇張するカットもなく、描写力の厚みが突出する。親族と地元の人々が勤める中小のファミリー企業を舞台にしているのが良い。社内の上下関係と、私生活での親子、隣人の二重関係がドラマを膨らませる。ただし、天皇制への目配せとは言わないが、跡取り問題はそれほど格式高い旧家に思えず、大仰に見えてしまう。石橋静河だからと不必要に踊らせるのもイタダケない。
余命1年のヒロインが100万円を払って期間限定の彼氏を作るという設定は良く、最後に高らかに主題歌が流れる歌謡映画としては悪くない。彼氏とやりたいことに性交が入らないのは解せないが、病名も伏せられた余命は便利に使われるだけで、ヒロインに貯金が幾らあり、100万が痛い出費なのかぐらいは示して欲しい。中条は魅力的に映されているが、スローテンポな動きと喋りだからと映画の進行まで遅いのは困る。冒頭の2人の出会いを登坂が思い出す場面は盛り上げて欲しかった。
フィクションもドキュメンタリーも、がんとなると情感過多か、さもなくば胡散臭い話になりがち。基本的な知識を教えてくれる教育映画は少ないだけに押しつけがましくない提示には好感。最近も余命1年と宣告されて財産も処分したら5年経っても死ぬ気配がないという話があったが、個々の優先事項に応じたクオリティ・オブ・ライフの話は一聴の価値あり。執筆業も例に挙げられていたが、確かに書くことが出来れば気力は維持できそうな気が。女性の視点を多く取り入れているのが良い。
東海テレビは繰り返し本事件を取りあげているが、今回は山を越えて村に入っていく冒頭から不穏な雰囲気が漂い、まるで「八つ墓村」。村人たちの心を開いて対話を重ねていくことで冤罪の背景を静かに浮かび上がらせ、ここが特別な村ではなく日本のどこでも起こり得ることを実感させる。地元局だけに豊富なアーカイブ映像を活用し、同じ村人のインタビューを過去と今を対比させながら自在に編集できてしまうのが強い。奥西さんの妹が半世紀ぶりに村を訪れる光景に胸を打たれた。