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交通事故にあった元プロボクサーと、彼を轢いてしまったピアニストの娘。そして主人公が初めて会う弟は、サヴァン症候群だがピアノの演奏に天性の才能を持っていて…。惜しげもなくベタな設定を注ぎこんだ韓国映画だが、俳優たちの力量でおもしろく見れてしまう。ピアノ奏者を演じたふたりの俳優は、カット割でごまかさずにショパンを弾きまくるし、庶民的なダメ親父を演じるイ・ビョンホンも新鮮だ。ホン・サンス映画でお馴染みのユン・ヨジョンによる人情あふれるオモニが最高!
1995年に上海、北京、中国東北部などを旅したときは、都会も田舎も未舗装の道路ばかりで、至るところが建設中という印象だった。本作では、古い国営工場のあるひなびた田舎町で連続殺人事件が起きる。主人公が刑事に憧れている工場の警備員というのも良い。沿岸部の経済発展のあおりを受け、内陸部の国営工場は次々に閉鎖され、工員が大量にリストラされていった現代史も背景にある。執拗に犯人を追う男と、美容室を開いてそれを支える女のノワール展開に胸が締めつけられる。
何とも人を食った物語設定でおもしろい。70年代の韓国において、演技下手の舞台俳優が受けたオーディションで、演技力よりも口の堅さを認められる。そして彼は、韓国の大統領が金日成と会談をするときに備えて、リハーサル相手に仕立てるべく金日成の替え玉になるための訓練を受ける。チュチェ思想も含めて俳優が人格まで本物に成り切ったら、その後どうなるのか。「グッバイ、レーニン!」のような転倒したコメディだが、東ドイツに比べて北朝鮮の存在はまだ生々しく感じられる。
悪い意味ではなく、このプロットやこのシナリオでよくぞ映画化に踏み切れたものだと感心してしまう。主人公は現実から少しだけ遊離してはいるが、家族想いの良き父親であり、良き夫である。ヨットで無寄港の世界一周旅行に出ようと思いつくまでは……。大海原を前にしたときの人間存在の卑小さが克明に描かれる。実話を基にした作品なので、物語を大幅に変更することもできなかったか。偉業を成し遂げる人物たちのノンフィクションを見慣れた目には、あまりに苦いリアルな物語である。
家族間の愛憎を感動に高めたこの映画には、これまで見た韓国映画に感じたことのない丁寧さがある。落ちぶれたボクシングの元チャンピオン、自分を捨てた母との再会と弟の存在。こうした設定に対して、兄弟でビラ配りをしたりラーメンを食べたり、公園で弟が飛び入りでピアノを弾いたりと、展開はオーソドックス。ハンディ撮影をしたそうで、互いを思い遣り、絆を結ぶ暮らしぶりが、映像日記のような気取りのない温かさを醸す。クライマックスで弾く「ピアノ協奏曲」で感動が頂点に。
ヤワな話でないとすぐに判明するが、冒頭、警察オタクの工場警備員が殺人事件の捜査に首を突っ込んだのかと。雨に振り込められ泥濘に足を取られそうになっている主人公を、97年当時の閉塞感の象徴とみた。対して、返還後の「香港」に未来の夢を馳せる恋人は希望。今やアメリカと堂々と渡り合うまでに経済成長を遂げ、さらなる覇権に向かう中国だからこそ、現代史を検証する意味もある。サスペンス仕立ての骨太なストーリーを動かす力強い映像。監督ドン・ユエは新人離れしている。
息子に「首領同志」と呼ばせ、「現地視察に行くぞ」と号令をかける役者だった父の、22年間も自分を金日成と思い込んでいるその妄執が哀しい。「リア王」の台詞の稽古をしてオーディションを受ける日々から一転、金日成を演じ続ける男が見せるあられもない姿の滑稽さは、道化師にも見えて。歴史の出来事を密度の濃い演出で父子物語へ収斂させたこの映画、父親役ソル・ギョングの大熱演があってこそ。市井の人間が味わった歴史の苦い記憶は22年くらいでは消えるものでないと胸を刺す。
まず主人公のレース参加の無謀は疑いようもないが、準備不足で棄権したい旨を伝える素人の彼を焚きつけた記者やテレビ局も如何なものか。ともかく航海中のアクシデントやトラブルに対処できないのは当たり前。そのせいか、追い詰められていく様をそこそこに、家族や支援者や報道のエピソードにかなりの比重が。ヨットの中の主人公から目を離さず、大海原での孤独や技術的な試練の話を描き込んでいたら、もう少し深みのある海洋冒険映画になっていたと思う。脚本も準備不足だったか。
困り者の兄と障害を抱えた天才の弟といえば、「あの日、兄貴が灯した光」(16)と共通点が多い。一本の中にこれでもかとジャンルとネタを詰め込みすぎなところもそっくりだ。弟の患っているサヴァン症候群は、山﨑賢人主演の「グッド・ドクター」でも注目されたが、リメイク元は2013年の韓国ドラマ。もともと根づいていた要素と近年の流行との合わせ技と言える。しかし弟役のパク・ジョンミン、なかなかブレイクしないから心配だったけど、久しぶりにがっつり見られてよかった。
「薄氷の殺人」(14)を彷彿とさせるチャイナサスペンス。全体のテイストはもちろん、警備員という主人公の設定、工場、女性の描き方などに同作との類似がかなり見られ、影響を受けていると思われる。スケートに代わってダンスを使った演出もしかり。シナリオはかなり力技で、それを成立させるには役者の存在感と演出力が不足している感は否めないが、雨の中の追跡劇や地方都市の光景をとらえた映像は新人監督ばなれしたダイナミズムがあり、ジャンルとしても発展してくれたら嬉しい。
文在寅と金正恩による南北首脳会談が重ねられつつある中での日本公開。しかし実は2014年と随分前の作品で、時代の流れを感じる。個人的に悪役が板につかないと感じているソル・ギョングだが「実は善良な市民」なら話は別。そんな彼が「史上最大の悪役」を「演じ」ようとするところに哀しみと可笑しみを見出し、シリアスとコメディのコントラストを効かせた本作はまさにハマり役だ。韓国では今年90年代の南北スパイ戦を描いた「工作」も公開されており、そちらもかなり見応えあり。
のどかな邦題とは裏腹に過酷で孤独なヨットレースに挑むコリン・ファース。デプレシャン作品でお馴染みのエリック・ゴーティエの撮影と故ヨハン・ヨハンソンのスコアが素晴らしく、大洋の中でたった一人、己と向き合う男のドラマが端正ながらもスリリング。青い海と美しい太陽の下、ヨットという限られた空間を様々な角度から見つめる映像はマッチョではなくどこかエレガントで、荒れ狂う波や吹きすさぶ風といった物理的な闘いよりも、そこに生きる人間の内面を掘り下げていくのだ。