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ゴージャスなソファで頬杖をつくエレガントな老女。しかし、マルコムと築き上げたパンク・ファッションについてなど「洗いざらい話す必要ないでしょ?」と辛辣だ。話したいことしか話さない、退屈な過去にまつわるインタビューより、グリーンピースとの北極訪問など、環境保全活動に奔走する、彼女のいまの姿を追いかけた方が、アイデアに富んだ、華やかなヴィヴィアン・ウエストウッドの世界観に、相応しい気もする。彼女の一貫した政治的主張は、マルコム以上にパンクだと思うから。
「ボディガード」(92)をはじめ、いわゆる彼女の全盛期に、アメリカン・ポップスとはおよそ縁遠い生活をしていた筆者には、彼女の歌はラジオや街中で流れるBGMに過ぎなかった。しかし本作で彼女の歌の背景を知ったことで、歌の印象はガラリと変わった。例えば「I Have Nothing」などは全く違う歌のように響いた。天使から悪魔のように激変する彼女の顔が、絶頂から転落までを雄弁に物語っている。歌への情熱や愛さえも奪ってしまう、ドラッグの恐ろしさに、改めてゾッとする。
プレゼンター兼プロデューサーのマイケル・ケインいわく60年代のロンドンは「未来が若者によって作られた、人生最良の時だった」。未来への扉は「スウィンギング・ロンドン」たちの薬物使用であっさり閉ざされるが「若さとは年齢じゃない。心のあり方」と、いまなお未来志向のケインらしい(ミニスカートに難色を示す中年とは大違い!)ポップなドキュメンタリーに仕上がっている。キンクスからプレスリー、ストーンズ、ビートルズ、ザ・フーへと音楽が奏でるドラマも聴き応えあり。
青い海、白い砂、オレンジのライフジャケットの山、コントラストの美しい映像は、現代美術家ならではだろう。ドローンで空撮した、トルコの街を縦横に貫く道が、十字架のように見えて、印象的だった。ドローンやスマートフォンを自在に使いわけ、6500万人もの難民たちの苦しみや哀しみの先に見える、地球規模の深刻な問題を印象づけている。世界に忘れられたガザの暮らしが嫌いではないと笑う少女をはじめ邪気のない子供たちの笑顔は、学校にも行けぬ難民生活の危機感を強調する。
本作は同欄「マイ・ジェネレーション~」の続篇とも言える。70年代後半は終末思想のもとパンク=NWが台頭。ヴィヴィアンは自分の店の店員と常連客に衣裳を着せてセックス・ピストルズとして売り出す。彼らはストーンズらをOWとこき下ろし、「恐竜はさっさと滅べよ」と毒づく。私事だが筆者はこの当時、ローティーンのNWかぶれ。筆者が音楽を真剣に聴いたのは人生でこの数年間に限られる。ヴィヴィアンの服はもうパンクではないが、彼女自身は依然としてパンクだ。
音楽や美術、バレエなどアーティストのドキュメンタリーがここ数年激増しているが、このジャンルでこれほど悲しみを宿した作品は見たことがない。ホイットニーの親類や関係者、元夫のボビー・ブラウンなどが彼女のことを語る、それぞれのフィルターを通して。だから「あいつの存在が悪影響を及ぼした」とかいう証言が増えてくる。画面を見ているうちに筆者は、母親と兄弟も含めた出演者全員に怒りが込み上げてきた。「彼女がここまで堕ちたのはあなた方全員のせいだ」と。
60年代ロンドン・カルチャーが惜しげもなく噴出する。ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フー、ツイッギー、マリー・クワント……。音楽、写真、ファッションが取っ替え引っ替え出てきて果てしなく画面は活気づくが、マイケル・ケイン中心に語られるイギリス映画だけ足を引っぱっている。「国際諜報局」(65)も「アルフィー」(66)も悪い映画ではないが、それらではレノン=マッカートニーの楽曲群やミニスカートの衝撃的なカワイさには太刀打ちできないのだ。
40カ所もの難民キャンプや国境地帯でロケされ、あたかも〈難民大図鑑〉のごとし。チャプター区切りとしてドローンによる俯瞰が多用されるのは、流行の後追いではと疑問を感じた。しかし地上では違う。艾未未は、世界各地で出会う人々に俯瞰ではなく同じ目線で語りかける。大したやり取りはない。ただリスペクトを表明し続ける。そんな風に夥しい数の場所が写され、地球がもはや〈難民惑星〉だとさえ思えてくる。そして艾未未自身も行き先なき亡命者として漂流しているのだ。
彼女がパンク・ファッションの生みの親と聞いて身を乗り出す。ピストルズ、カッコよかった。それからのデザインはあまり魅力を感じない。大向こうを狙った奇矯を売り物にしてるみたいで。でも大メジャーなんだよね。だから自分は門外漢なんだ。けど知らない世界を見るのは面白い。もっとヴィヴィアンその人に語らせたらと思う。他者のコメントを控え、個性そのもののご本人に密着して、徹底的に本音を吐き出させたらと。(元を含む)夫たちや息子たちのどこかイジけた顔つきは彼女の反映?
売り出しから、栄光、そして薬物依存による転落。この種のミュージシャン映画を何本見せられたことか。だけどこれは紛れもない事実。そこが痛ましい。どうして彼女がこうなったか。元夫を詰問したり、少女時代の性的虐待の犯人を探しあてたりするが、そちらを追及しても無意味な気がして。ホイットニーに公私ともに寄り添っていたレズの女性。後半、姿を消した彼女こそ、ホントの哀しみを受け止めていたのでは? この女性を核にしたらと思った。彼女の眼を通したホイットニー像をと。
60年代の英国はカッコよかった。M・ケインを案内役にロック、ファッションと当時の流行を辿っていく。それが階級社会の厚い壁を破る若者たちのレジスタンスだったことも分かって。キンクス、アニマルズなんて懐かしい歌曲もふんだん。ツイッギー、M・フェイスフルらのコメントも嬉しい。その流れは薬物の蔓延によって止まった――という見方はちとウーンだけど。全体、動くグラビア集の物足りなさも。映画のことももう少しふれてほしかった。007が登場しないのは体制側だからか。
中国から追放されたアイ・ウェイウェイが難民を見つめる。時に彼らの中に入って交流する。中東の、欧州の、アジアの、世界中の。彼らがなぜ難民にならざるを得なかったか。それは問わない。黙っていても、その気持ちは伝わるとばかりに、彼らの顔を、姿を捉えていく。撮影が凄く美しい。これはアーティストが作ったドキュメントだと思った。美しいがゆえに残酷さも引き立っていた。だけどここで必要なのは、ジャーナリスティックな視点じゃないかとも。いま、何が起きてるかは分かるけど。