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撮影途中で監督交代のドタバタがあったとは信じられない快調な出来映え。場面転換に工夫があり、ありきたりになりがちな切り返しさえ全部非凡に見える。ライヴシーンの撮り方が素敵なのはもちろんだが、クイーンのゴージャスなサウンドが出来上がるまでをたどるレコーディングのシーンも面白い。メアリーの描き方に誠実さがあり、クイーンの各メンバーも魅力的に描き分けられる。フレディ役は外見をあまり重視せずにキャスティングしたみたいだけど、若きブライアン・メイ博士は激似。
ヴィルヌーヴの「ボーダーライン」は、暴力と絶望の彼岸にある祈りにも似た美しさがわたしはとても好きだったのだけど、続篇にあたる本作は、アクションスリラーとして普通に楽しめる作品。とはいえテイラー・シェリダンイズムは健在だし、前作の映像美を引き継ごうとしているかのようなショットもいくつか。デル・トロもブローリンもI・モナーも魅力的だが、音楽の付け方にやや納得いかないのと、演出部の不注意だとそしりたくなる箇所がいくつか見られたのとで、星の数は抑えめ。
無声映画のヒロインのようなルーニー・マーラが、何やら重い荷物を画面手前に引きずってくる、開巻間もないロングショットからしてもうよすぎる。光のきらめき、窓に散る雪、つねに気配が立ちこめている画面。テレンス・マリックに通じる世界だが、途中、まるで予想していなかった想像力の飛躍があって、思いがけない境地にまで連れて行かれる。「セインツ」の音楽も素晴らしかったダニエル・ハートが、この繊細な物語には大げさすぎるような音楽を、あえてつけているのもとてもいい。
ホラー映画と思われそうだが、どちらかというとサイコスリラー。設定から誰もが連想するだろう「クワイエット・プレイス」の作品世界が、どれほど入念に作りこまれていたか、本作を観るとよくわかる。あちらと比べると、舞台装置も設定も、ものすごく抽象的にさえ見えてくるのだが、もちろんそれは欠点ではない。特筆すべきは、監督が光を丁寧に扱いつつ、人物の心理を粘り強く描写しようとしていること。カンヌ映画祭の批評家週間に出品されたという前作も観たい気持ちにさせられる。
フレディ・マーキュリーの短いが、波瀾万丈の生涯をクイーンのメンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーが協力しているので、彼の辛く悲しい部分もきめ細かく描かれていた。パキスタン移民の子で、口が出ていることに劣等感をもつフレディを演じるラミ・マリックは見ているうちに本人そっくりになり、ブライアン・シンガーの演出も快調のテンポで、フレディがいかに観客をのせるのが巧かったかが分かる。伝説のチャリティ音楽イベント「ライヴ・エイド」の21分は圧巻。
メキシコ麻薬戦争を素材としていて、監督は違うけれど、製作・脚本を同じくする前作「ボーダーライン」や、ドキュメンタリーの「カルテル・ランド」とともに、この作品も見応え充分。トランプ大統領が今も解決できない問題なので、いろいろなアプローチもできる。CIAのジョシュ・ブローリンがカルテル一掃を目的に屈折した過去をもつコロンビア人の元検察官デル・トロを雇ったので、話が複雑になる。兵士としての任務より私的人間関係を選び、国境をさまようデル・トロに感情移入。
ケイシー・アフレックが自動車事故で愛妻ルーニー・マーラを残して死ぬ。マーラが遺体にシーツを被せて立ち去った瞬間、シーツが突然に立ち上がり、あけられた穴から目をのぞかせて動き出す。一見、クー・クラックス・クランのようなゴーストだが、誰もその姿は見えず、ゴーストの方は妻と暮らした家に戻って、この世にある人々を見守っていく。以下、いろんなエピソードが展開していくわけだが、日本の幽霊のように怖くはなく、むしろファンタジー映画として見るべきかもしれない。
得体の知れない何かが追ってくる恐怖を低予算で描いた「イット・フォローズ」の製作陣によるスリラーで、その続篇と言ってもいいくらい感触が似ている。私小説的な人間関係がドラマのポイントで、自分の家族を生きのびさせるために西部劇のように銃を構え、他人を寄せつけまいとするジョエル・エドガートンには共感よりも哀れさをおぼえた。死体が重なり合うブリューゲルの絵が家の壁に掛けられ、外敵を防ぐ扉が血の色に塗られているところなど、随所に新人監督らしい意欲があった。
早くから熱狂的ファンを抱えていた日本での場面が皆無なのが寂しいが、バンドの軌跡を実にわかりやすく追った内容。それでいて単なるバンド・ヒストリーには終わらず、フレディが抱えていた性的嗜好や出自に対する苦悩に迫ったドラマにもなっている。実際に短いセットリストだったライヴ・エイドのステージをクライマックスとしてフル再現するのも巧みでアガりっぱなし。終始、『おそ松くん』のイヤミとタメを張る前歯付きでフレディ役に挑んだラミ・マレックのガッツは敬礼もの。
冷酷非情なデル・トロとJ・ブローリンが主人公にシフト。さらに麻薬戦争の渦中に飛び込むのではなく、新たに戦争を勃発させる物語となっているので、前作のような深淵を覗いてしまった恐怖も衝撃もドラマ性も薄くなっている。かといってバイオレンスだけに徹してはおらず、暗黒版「ペーパー・ムーン」と呼びたくなるデル・トロとカルテル首領の娘との殺伐としながらも意外と染みる国境越えの模様を用意していたりする。中東系テロがメキシコからアメリカ入りするアイデアは新鮮。
レゴ・ブロックの人形や『オバケのQ太郎』のQちゃんでお馴染みである、目の部分がくり抜かれた大きな布を被ったタイプの幽霊を大真面目でチョイス。なんだかバカにされているようで軽く頭にきてしまうものの、この可愛らしくて滑稽なルックスが同じ場所から離れられずに数百年も佇み続ける切なさをかえって浮き彫りにして胸が締め付けられそうに。ファンタスティックな物語にほぼ正方形で四隅がカーブした画角が相まって、えらく雰囲気の良い絵本を読んでいるような気にはなる。
謎のウイルスによって荒廃した世界が舞台となっていて、それなりにサバイバル・スリラーの雰囲気も漂っている。しかし、この作品で描かれる真のウイルスは主人公一家の屋敷に入り込んでくる家族。彼らの存在が不安、疑心、恐怖を生み出し、取り返しのつかない悲劇と破滅を招き寄せるのだ。そうした暗喩的タッチを繰り出してくるものよりも、ストレートに感染者や暴徒などを相手に戦うタイプのほうが好みな自分だが、けっこうな緊張感にのみ込まれて最後まで観てしまうのは確か。