パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
パレスチナやヨルダンで難民キャンプを訪問したが、ナクバから70年も経つと難民生活が定着し、都市の一部になっていた。本作で描かれるように、レバノンのパレスチナ難民が国籍を持たないがために、安価な労働力として使われたり、雇用主の都合で解雇されたりということは如何にもありそうだ。ふたりの男の諍いに端を発する法廷ドラマにしつつ、現代的な右派のヘイト・クライムの主題や、知られざる虐殺の歴史を提示するところなど、社会を多角的に切りとる手腕にうならされる。
テレビで昨今のテニスの試合を観ると、カメラの切り替えの見事さに舌を巻く。伝説的な名対決を映画化するにあたり、当然、監督は中継より劇的に演出する自信があったのだろう。スロー、真上からの俯瞰、ネットをナメた選手のアップなど、考えうる限りのショットが満載だ。特徴的なのは、不安定な手持ちやステディカムの浮遊感を使った、ボルグとマッケンローの表情をとらえる寄りの切り返し。映像面でもふたりの顔と表情のドラマにしており、こうやって編集するのかと感心した。
女優として監督として堂々たるキャリアをもつシルヴィア・チャンの監督・主演作。物語と登場人物の配置がすばらしい。父親の墓を移そうとする都会の女性教師と、それを阻止しようとする田舎の結婚証明書をもたない父の第一夫人による諍い。それをテレビ局で働く若い娘が引いた位置から相対化する。テレビ番組など大げさすぎる道具立てと、俳優への演劇的な演出に作為がほの見えて、リアリティが感じられず、感動したい場面でも微妙に感情移入できなかった。映画って本当に難しい。
俳優にほとんど興味がなく、名前もほとんど覚えられない。だが「ハクソー・リッジ」と本作、そして「アンダー・ザ・シルバーレイク」の3本の出演作を観てアンドリュー・ガーフィルドの名は脳内に定着した。少し髪型と衣裳を変えたことを契機に、完全に別人格を演じ切るところに驚いてしまう。実話の映画化なので、最後に本人たちが少し紹介される。顔かたちはそれほど似ていないが、表情やそこから醸しだされる空気感を、若き名優が模倣していたのだと気づくと戦慄すら覚えた。
発端は、排水管工事をめぐるパレスチナ人とレバノン人の諍いだが、舞台が中東レバノンなので、片方が正しくもう片方が間違っているといったレベルの話に収まらないと予測。案の定、全国民が注目する事態に発展。難民VS地元民のこの裁判劇があぶり出すのは、実は国が抱える政治や民族など、過去からの問題。映画が優れて特徴的なのは、国は難民問題に忙殺され、地元民、つまり国内問題の犠牲者に手が回しきれていないという視点。政治が招いた人の分断、国の実情。この裁判を忘れまい。
ボルグを主体にしたこの映画で、マッケンローの有名な悪童ぶりは評判のまま。氷の男ボルグのウッドラケットが繰り出す力強いストローク、冷静沈着な試合運びを目の当たりにして感動した記憶とは反対に、彼も少年時代に悪童だったことが興味を引く。プレースタイルが完成したのは、デビスカップの監督だったコーチの薫陶よろしきを得ての結果だったのだ!? 両者のウェアにお馴染みのブランド・ロゴがないのは間の抜けた感じだが、後半の決勝戦の臨場感はスポーツ映画の中でも出色。
三世代の女性による家族のごたごたから見えてくるのは、彼女たちの〈愛されたい〉〈愛したい〉と思う気持ち。題材のお墓問題はさておき、面白いのは強い女性陣と、男性との関係性。真面目だが勝気で口うるさく、時に突飛な行動に走るにS・チャン演じる妻に対して、物静かで辛抱強い夫(演じている田壮壮◎)。自分を見失わず逃げもしない娘の彼氏。情感とカラッとした爽やかさ。その調合が絶妙な、味わい深いファミリードラマだ。ドラマをうまくまとめた自作自演のチャンを称賛する。
美男美女が結婚。が、首から下が麻痺し人工呼吸器なしでは生きられない夫を、医師の反対を押し切り退院させ、幼子の世話をしながら、自宅で介護をする妻。善き人々による完璧に美しく楽しいエピソードにリアリティは感じないのに、作品には不思議と素直に好感を抱く。製作者キャヴェンディッシュの両親の実話なので美化はあるにせよ、心から愛し合う両親の元で成長した子は、人生に生きる喜びを見出せるはず。映画が発するそんなメッセージを当の製作者が実証しているからであろう。
序盤のつかみが上手い。事の発端となる些細な諍いの見せ方が秀逸で、ご近所トラブルから大事件に発展するような三面記事的な展開は日本社会にも容易く置き換えられ、実にリアリティがある。そこに民族的な背景を絡めたシナリオもいい。しかしそこはタランティーノ組出身の監督だけあってただの社会派では終わらない。大衆やメディアを巻き込んで大風呂敷を広げ、法廷劇もダイナミックなカメラワークで見せる見せる! ただ、ややエンタメに寄りすぎて結末のご都合主義感は否めない。
「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」に続くテニスもの。こちらはシンプルに男と男の闘いだ。ラブーフとグドナソンはヴィジュアルを本人に寄せつつ映画的に好演、そしてコーチ役のスカルスガルドの存在感ときたら。ウィンブルドンやウェアといったテニスカルチャーも楽しめる。約20分にわたりほぼ無言の打ち合いを見せる終盤の試合シーンはさすが。ただし、勝っても喜びより安堵の色を濃く滲ませる演出が音楽の使い方にもうかがえて切ない。コートの外で顔を合わせた二人の距離感が生々しい。
亡き夫が眠る土の上に身を投げ出して墓の移転を阻止しようとする老妻。その強烈な画だけでもこの映画は勝ったようなものだ。最初の妻を置いて家を出たきり生きて戻らなかった男は、別の土地で違う女性と結婚生活を送ったが、どちらも法的な婚姻関係を証明するものは行方不明。親娘三代のドラマに中国社会の仕組みや歴史がさりげなく織り交ぜられ、田壮壮監督の渋い演技も味がある。シルヴィア・チャン恐るべし。女たちのエゴ、業、愛を艶やかに映し出すリー・ピンビンの映像が美しい。
在宅介護のスーパーハードな現実がほぼ無視されているのが気になる。娯楽作品であることを差し引いても。介護をしながら家事も育児も完璧にこなすキラキラママのインスタを見せられているようだ。アンドリュー・ガーフィールドの佇まいにはどうにもデリカシーのなさそうなところがあり、しかもそのことを全く意に介していないような悪びれない雰囲気(決して無邪気さや愛すべき不器用さにはつながらない)にいつもイラッとさせられるのだが、本作ではその鈍感力を存分に発揮している。