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生まれたばかりの赤ん坊に注がれる両親の愛情に、自分が取り残されたように感じる甘えん坊の男の子と、物語の起点になるのは、小さな話だが、それが次第に大きくなり、ついには、一人で世界に向き合うなかで、自分が何者なのかという問いにぶつかる展開は、アニメーションならではの自在なイメージ展開と合わせて魅せる。とくに最後の、東京駅を思わせる巨大な駅に迷い込み、忘れ物係から問われても、両親の名も自分の名前も言えずに列車に引き込まれそうになるくだりはワクワクした。
花を女性性器の比喩として提示する写真は、すでにアラーキーの作品にあるが、ここでは比喩でなく、直接、性器にカメラが向けられている。だが、女性のほうから自身の性器を撮らせようとするのは、何故なのか? 自分の目では見ることができないからか。対して男の場合は、単純な欲望から女性性器を見ようとする。しかし、その実際は、自身の欲望を投影した幻像を見るだけに終わる。それを正すのが写真という物質なのだろう。花より枯れ葉に似た性器の写真が、そんな思念を見る者に促す。
このテレビ・シリーズが、どれほど人気を集めたかは知らないが、初めのほうの、その視聴者に、見て見てといわんばかりの、人物紹介のせわしない撮影・編集には苛々させられた。それが過ぎると、今度は、余命わずかな末期癌患者の女性と恋人の、涙溢れるお話になるのだが、それも、どこかで見たような結末を迎えと、次々繰り出されるドラマが、いずれも、いかにもな人情話めいていて脱力する。まあ、救命医療に取りかかる医師や看護婦の動きがそれらしく見える点は、悪くないけれど。
大戦末期の沖縄北部で、陸軍中野学校出身者が、十代半ばの少年たちを護郷隊として組織して謀略戦=「裏の戦争」を行ったという事実を、本作で初めて知った。そればかりか、陸軍中野学校出身者は沖縄各島に配置され、内一人は「疎開」と称して住民を悪性マラリアが猛威をふるう西表島に送った結果、波照間の住民の3分の1が犠牲になった。軍にとっては、住民は利用し、監視する対象であって、守る対象ではない。現在に通じるこの現実を、これほど明瞭に示した映画はない。
現代建築が好き。本作の舞台がまさにそれ。この建築家自邸のコンセプトは自然を家の内にしつらえ、コンクリート扉で外を完全にシャットアウトすること。有名な「住吉の長屋」がヒントか。冒頭に昔の家の様子を超俯瞰で示すことから分かるように、戦後初期から平成を経て未来の日本までを建物の外観やそこに住む人の使い方から幻視する構成になっている。突然お兄ちゃんになって親からかまってもらえなくなった子どもの自己確立を、彼の視点というか地点から描く意図がそれで生きる。
現代日本映画界において、商業映画的な設定とほぼ実験映画というしかない抽象的なコンセプトをスマートに両立させる、ワンアンドオンリーの存在が矢崎仁司監督。大きな声では言えませんが、本作ではちょっとアブないスチル写真が最後に出現する、その過程を物語にしている。なるほどあのアングルだとこうなるんだな、ときちんと分かる(オリジナル版では)。私の世代のイコンともいうべき伊藤清美が死ぬ寸前の抜け殻のような裸身を提示するのもデュシャン風設定共々見どころだな。
このシリーズを見るのが全く初めてで冒頭のキャラクター大量投入には面食らうしかなかったが、大丈夫すぐに慣れます。ほとんどがいわゆる「にぎやかし」であった。医者と看護師がヘリで事故現場に向かう緊急医療体制を描くというのは自然に了解できる。映画用に細かいエピソードが沢山用意されたが、そっちは普通。面白いのは主演陣それぞれの個人的事情の解決に限られる。十年分の集大成だし、それで良かったと思う。一番効いているのは最後のサプライズ、初見の私でさえ感動した。
沖縄戦というのは聞いたことがあったが、この作品に描かれるのはその名で呼ばれる戦闘時に島の北の地域で起きていた事例。少年を兵隊にし、スパイにし、わざと捕虜にさせて破壊工作をやらせる、という明らかな戦争犯罪を指令したのがかの「陸軍中野学校」である。さらに彼らが、食料を強奪する目的で島民を強制的にマラリアの島へ疎開させたと聞けば、沖縄の静かな憤りが他ならぬ日本に向けられるのも当然だろう。戦後PTSDを発症し座敷牢に閉じ込められた少年の挿話が悲しい。
4歳児の生き生きとした姿が活写されており、庭を挟んで上下階に配置されたリビングとこども部屋を結ぶ空間が幼児の躍動を描くのに活用されている。「トトロ」の糸井重里みたいな星野源の不器用な父ぶりをはじめ、ファンタジーに頼らなくとも、この家と家族の物語だけで成立したのでは? 派手に盛られた異世界と繋がる庭も、実は脇役に過ぎなかった未来から来る妹も、東京駅の見事な空間造形も、脚本が壊滅的では要領を得ない。次回作は奥寺佐渡子との再タッグを切に望みたい。
近年の商業作品からは、この監督独自の魅力が薄まったと思っていただけに、未知の女優たちを美しく際立たせた本作で久々の本領発揮ぶりを堪能。女性器を撮ることは〈日本映画〉では不可能だが、女性器を撮る写真家を映すことは出来るだけに、女性たちに向けられる柔らかな眼差しという矢崎映画の核が活かされている。女性器や螺旋階段などから足立正生の「鎖陰」「銀河系」を想起させるが、原作者が劇中に本人役で登場したりと、60年代のアートフィルムを違和感なく継承した感。
TVシリーズ未見でも問題ない作りなので助かるが、結婚式を縦軸に置き、事件を盛り込みながら展開させていく構成が(モノローグを各キャラへ不要に振り分けるのを我慢すれば)良い。ただし、加算の度が過ぎ、次々と事件が起きすぎて登場人物が振り回され、山下智久に重大な事態が起きると、結婚式を控えた末期がん患者の扱いが途端にどうでもよくなってしまう。それにしても同じ服を纏うせいもあって戸田、新垣が細く見えすぎる。患者に手を貸すことすら覚束ない腕の細さに興醒め。
苛酷な戦争体験を余儀なくされた沖縄の子どもたちが80代も半ばを迎えて生々しく語る声と表情に圧倒される。少年ゲリラ兵の悲惨な境遇を今の時点で聞くことが出来る貴重さは、歴史を忘却した振る舞いが大手を振る中で重く響く。暗躍する中野学校出身者にゾッとするが、非武装の離島に教員として現れて愛嬌を振りまいた後に豹変する姿が、痕跡を多く遺す島の風景に証言が重なっていくことで異様な迫力を生む。最近まで生存者がいたために語られなかった地元の闇に言及した点も見事。