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そのものずばりを映してはいないのに、残虐なシーンが生々しく痛い。こういう場面のある映画を娯楽映画として成立させるには、捜査チームのやり取りに愛嬌やユーモアをまぶすのが定石だが、「新感染」で途轍もなく魅力的だったマ・ドンソクを軸に、そこをぬかりなくクリア。だが何より驚くのは、キャメラ位置もカット割りもずば抜けて明快かつスムーズで、まったくストレスなしに観られること。ものすごく新しいことをやっているタイプの映画ではないが、上質のエンタメとしてお薦め。
怪物としか言いようのない実母が元凶なのは当然として、それ以上に階級差別と性差別に押しつぶされていくトーニャの悲劇には、同時代に活躍した伊藤みどりと彼女とを分けたものは何だったのかと考えざるをえないのだが、あのバカすぎる事件に至る経緯のまぬけぶりには、やはり笑ってしまうのだった。ドラマ部分と俳優が演じているインタビュー部分とが相互干渉するのが面白く、フィギュアスケートという競技のダイナミズムを映画はこのように表現できるのかという発見と感動もあり。
ケダモノだらけの世界のなかで、無力な子どもはどう生きのびるのか。ニッキーの家のなかで進行する事態と、街全体が直面する事態が連関することなく並べられ、クライマックスで両者が接続しても、いまいち効果が上がらない。演出は全体にもう少しブラックコメディ風味が欲しい。でも、大詰めの場面でのM・デイモンとN・ジュープ(ニッキー役の子役)は圧倒的な素晴らしさで、ラストシーンにも泣かされる。デスプラがB・ハーマンを明らかに模した曲をまじえて今回も完璧な仕事ぶり。
どんな戦意高揚映画を見せられるのかとおののいていたけれど、クリアすべき課題を次々提示していく構造で書かれた脚本がなかなか上手で、最後まで引っぱられる。そのうえ文化衝突のテーマがあり、山岳地帯の地形の面白さがあり、馬に乗ってのガンアクションがあり、特殊部隊員の心意気がある。こんな深刻な背景を持つ実話でなければ、もっと明朗なタッチで「荒野の七人」みたいにしたいところ。クリヘムもいいがN・ネガーバンが結構魅力的。役者M・シャノンの凄さを個人的に実感。
カン・ユンソン監督のデビュー作だが、「新感染ファイナル・エクスプレス」以上に気合いの入ったマ・ドンソクの刑事役のおかげで、力作となった。中国から来た朝鮮族暴力組織にまつわる実話だというけれど、新興組織のボスを演じるユン・ゲサンの存在感が圧倒的。過去の話だとはいえ、朝鮮族全員が冷酷で非倫理的に描かれているので、青少年観覧不可能映画にしたところで、日本なら、差別問題が起きてしまいそう。全篇、怖い男の顔をよく揃えたもので、行動に移るまえに殺気が充満。
クーベルタン男爵の理想とは離れて、オリンピックをめぐるイヤな噂が耳に入る昨今だが、94年のナンシー・ケリガン襲撃事件の映画化である。キワモノというよりは、脚本の真実追求の姿勢がよく、製作を兼ねてトーニャ・ハーディングを演じるマーゴット・ロビーの体当たり演技もリッパ。娘のスケートの才能で貧しい生活から脱却しようとする母親アリソン・ジャネイのクールな顔が悪夢だ。襲撃犯とされる男性たちもリアルで、観客はつい、ナンシーよりもト―ニャに肩入れしてしまう。
「アメリカ・ファースト」などと大統領が言っている国でハリウッド映画人が50年代黄金期の郊外生活をコケにするノワール・コメディを見せてくれた。ただ笑ってばかりもいられないのは黒人家族が居住することを完全に拒否したレヴィットタウンのドキュメントに基づいて喜劇が作られているからだ。ジョージ・クルーニーの演出のもと、マット・デイモンやジュリアン・ムーアが悪人を本気で演じていて、まともなのは子どもだけというのが怖い。夢の国だったアメリカがまた崩れていく。
戦闘による死傷者が多かったアメリカによるアフガニスタン侵攻は、同時多発テロの犯人を捕まえるために始まったわけだから、映画もグリーン・ベレーの大尉を熱演するクリス・ヘムズワースが、平穏に暮らしていた家庭で、9・11の映像を見てしまうことから始まる。ブラッカイマー製作の戦争映画のパターンだが、男たちは志願しても、妻たちが反対するのは、さすが。当時、空爆の映像ばかり見せられたけれども、馬に騎乗した兵士たちが爆撃を誘導していたとは驚き、勉強になった。
イキっているワルどもを片っ端から、バカスカと殴って、捻って、吹っ飛ばしまくる。そんなマ・ドンソクの無双な姿がとにもかくにも痛快。悪玉に同情すべき点は一切ないが善玉はどこまでも人情味満点、上司や同僚との程良く熱くて緩い絆もイイ感じでアゲてくれるし、クスッともさせてくれる。早い話が、ドンソク版「ベテラン」といったところ。まさに〝糞〟としか言いようのない悪玉を始末する場をトイレに持っていくあたり、その限定された広さや設備を活かした殺陣の設計もお見事。
劇中で人物が事件を「バカしか出てこない物語」と評するが、まさにその通り。しかし、その背景には貧困や毒親があり、それらが延々と〝負〟を連鎖させ、肥大化させていくという悲しき常理しっかり浮き上がらせている。とはいえ決してメソメソとしたノリではなく「グッド・フェローズ」的テンションな語り口なので、下衆な視点でハーディングたちの右往左往を観てしまうのだが。彼女が実際に演目で使ったZZトップ『スリーピング・バッグ』をはじめ、流れる楽曲は最高。
郊外の住宅街に越してきた黒人一家に対する差別が横行するなか、隣の白人一家とその周囲の白人は殺し合い。トランプ政権以降うんぬんを問わず、アメリカが抱える闇を「ファーゴ」チックな犯罪サスペンスで炙り出してみたのだろう。しかし、黒人一家をめぐる騒動に主人公たちはほとんど関わらないで物語が進むので、そちらの問題にはなんだか引き込まれず。まぁ、差別に我関せずを決め込んだ白人たちも揶揄していると思えばいいのだろうが。あまりにも美しすぎて逆に不気味な住宅街は◎。
9・11の弔い合戦というだけでなく、グリーンベレーが西部劇の騎兵隊よろしく馬を駆って戦う。アメリカ人ならば燃える題材と設定だろうが、あのテロの背景には中東に対する同国の振る舞いもあったことを考えるとこちらは弱火状態。また、白兵戦や狙撃もあるにはあるが敵地に空爆を誘導するのが戦いのメインとなっており、舞台も荒涼とした山岳地帯を転々とするのでなんだか最後までアガらず。実話ベースとはいえ、そこは「13時間-」のようにメリハリある見せ場を用意してくれないと。