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まるで期待せずに観はじめたが、ディザスター・ムービー要素だけでなく、「ゼロ・グラビティ」以来(?)流行りの宇宙サバイバルと、誰が味方かわからぬスリルがあり、面白いカーアクションもあってバカみたいに盛り上がる。スペクタクルに負けないくらい人物も魅力的。異常気象ものというだけでもう反トランプの立場なのは明らかだが、大詰めのとある会話をオバマとトランプの対決みたいだと思いつつ観ていたら、やがてメキシコ人宇宙飛行士が美味しいところを持っていくのだった!
ホラー映画であることをとっとと諦めて、謎解きなどの別の面白さを追求しはじめる、みたいな映画。しかも途中からは、悪霊よりももっと怖いものがこの世にはある、みたいな展開に。しかし、大したことが起きてるわけでもないのにでかい音で無駄に怖がらせる(というよりも驚かす)やり方は、そろそろ禁じ手にしてもらえないものか。この映画の場合、画面がそこそこきちんと作られているだけになおさらそう思う。一方ヒロインは、無駄に泣きわめきもおびえもせず、かなりかっこいい。
開巻から少年に異変が起きるまでのシークエンスに息を呑む。以後全篇にわたり、すべてを映像だけで語ろうとする決然とした意志がみなぎる(ただし色調に疑問を感じたのだが、これは映写条件の問題かもしれないので保留)。キャメラがトリッキーな動きを見せるだけでなく、何をフレーム内に飛びこませるかがきちんと考えられていて、しかも作りこみすぎの感じがないからとても興奮させられる。寓話性とリアリズム、風刺性が一体となった面白さは、中東欧の文化特有のものかもしれない。
「憎しみの連鎖と赦しについての映画」だと要約すると珍しくもなさそうだが、1ダースほどいる主要人物の心の機微が全員きっちり書きこまれ、それらが繊細にからみ合っていく展開には圧倒される。最低でも5回は心を激しく揺さぶられる映画。主人公が神父に言い放った言葉が最後で効いてくる等、脚本の巧さが第一に賞賛されるだろうが、並外れた演技と言うべきF・マクドーマンド(鹿に話しかける場面の凄さ!)とW・ハレルソンを筆頭に、役者が全員素晴らしく、撮影も力強く美しい。
気象変動による地球各地の崩壊が見せ場で、東京銀座に巨大な雹が降り注ぐところは思わず笑ってしまうが、香港の地底マグマの噴出やムンバイの竜巻、各地の大洪水、氷結化など、スペクタクル・シーンはさすが。一気に異変が襲ってくるのも、デヴリン監督らしい。地球温暖化とアメリカのパリ協定不参加の現在、タイムリーな企画。原爆開発のマンハッタン計画という歴史を持つ国の映画だけにこれだけの大惨事を前に、科学者と政治家がせめぎ合って事態をこじらせる物語がリアルに見える。
パソコンやスマホで現実の奇怪な事件が起きているのに比例し、日本の作家を原作とするホラー・シリーズもテクノロジーを進歩させ、恐怖を加速化させている。見ると七日後に死ぬ呪いの映像も、荒れた画面と編集で迫力があり、恐怖の的である髪の長い少女はボニー・モーガンの身ぶりが不気味。元牧師役のヴィンセント・ドノフリオが巨体をゆすり、ヒロインのマチルダ・ルッツを追いつめるのも怖い。Jホラーがアメリカの風土に溶けこんでいて、このジャンルはこれからも続きそうだ。
国境を越えようとして銃撃されたさい、重力を操り浮遊する能力を身につけたシリア難民の少年と、その能力を利用して金を儲け、自らの治療ミスによる賠償金に当てようと企てる医師との物語だが、SFというよりも、難民問題をかかえるハンガリーの現実の方に眼がいく。ブダペストの街の上空に少年が舞い上がる映像はわくわくするけれど、男女の微妙な関係や医療施設の細部に力点を置く演出のせいで、「幻魔大戦」の脚本家としては、少年が超能力で国境を越えないのに少々いらついた。
警察署長の悪口を書いた広告看板を立てることに始まる脚本がいい。西部劇から抜け出たような強い女を演じるマクドーマンドの大人の表情と動きは圧巻。善悪だけでは括れない脇役たちも個性的で微妙な雰囲気があった。感心したのはサム・ロックウェルの使い方で、暴力に走りやすく、差別的な警官だったのが、最後には職を失いながらもヒロインと意気投合する過程を演出の力で納得させてしまうことだ。カーター・バーウェルの引用豊富な音楽がふしぎなサスペンスをかもし出していた。
一時期は〝破壊屋〟ローランド・エメリッヒの右腕的プロデューサーだったディーン・デヴリン。そんな彼の監督作だけに手当たり次第に地球を壊すかと思いきや、意外にも宇宙ステーション内がメインの小気味よいサスペンスに仕上がっていて、災害描写を物語各所のフック程度に投入しているのが○。とはいえ、黒幕はのっけからフラグを立たせまくりで陰謀の背景もありがちにも程がある。科学者=J・バトラー、大統領=A・ガルシアというイメージ完全無視の配役もここまでくると爽快。
ブラウン管から液晶へ、VHSから動画ファイルへ。さまざまなツールが軽薄短小になるのは非常に便利だが、それらを恐怖の媒介に用いると戦慄の度合いも軽く薄くなると痛感。薄型テレビから飛び出すサマラはまだしも、スマホから上半身をピョコンと覗かせる小さな彼女は可愛いらしくて簡単に倒せそう。さすがに作り手側もヤバイと思ったのか、終盤の見せ場にあてているのはサマラ誕生の根源となった人物との対決となっている。しかし、それも「ドント・ブリーズ」まんまで微妙。
浮遊能力を誇る青年を軸にして、ヨーロッパ(だけではないと思うが)の混迷を生み出す要因となっている難民、人種、テロ、宗教をめぐるアレコレも浮かび上げる。その狙いは伝わるが、青年の浮遊能力の使い方、描き方があまりよろしくない。物語のテンションに合わせて浮遊する高さも上昇させていけばいいのに、序盤の浮遊シーンが最も驚きを感じさせる仕上がりで、クライマックスに用意したものが最も地味になっていて盛り上がらない。長回し連発など、全体的に撮影は見事だけに惜しい。
ヒロインが真っ赤な看板にして掲げた憤怒。それを発端に炙り出される、さまざまな人々が抱える憎悪、偏見、差別、誤解はまさに現在のアメリカ(だけではないと思うが)の分断を作り上げた要因でもある。レイプ殺人をめぐるサスペンスとしての輪郭をブレさせることもなく、それらをシニカルにシリアスに伝える語り口は見事。そして、そうしたなかに必ずや博愛や希望もあると信じている姿勢になんだかジ~ンときてしまう。F・マクドーマンドがまとうワーカーズ・ファッションも◎。