パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
前半の、高ピーなキャリアウーマンふうだった長澤まさみが、ようやく突き止めた相手の家の前で、隣の男から、あなたたちは? と問われたとき、「妻です」と答えるところで、それまでと一変した表情を見せるのが良かった。それに対して、意識不明の男の手を握って語りかけるところは、やや過剰。それは長澤のせいというよりは、科白が多すぎるためだが。高橋一生が、気弱そうな笑みで相手に安心感を与えながらも何を考えているかわからぬ感じを出しているのも悪くない。
愛する女が死んだと思い、失意のどん底に落ちた男が、マジシャンになろうと決意したんだと。ま、何になろうと勝手だけど、マジシャンになると心が癒やされるのか!? その原因は先代マジシャンにあったという作りも、瓜二つだと思った女が、実は……だったという話も、無理矢理作った感じは否めない。大がかりなマジックの仕掛けには、手間も費用もかかったと思うので、その分★一つおまけするが、どうせやるなら、もっと違うことにエネルギーを使った方がいいのでは?
野球部に、ちょっと待てという前に、この映画、公開前に、ちょっと待て、と言いたい。いや、見せるの止めなさい、というのじゃないよ。老爺心ながら、想定する観客層を、はっきり決めてないのではないかと心配になったのだ。これを見たところでは、主たるターゲットは、小学生に限定すべきだね。せいぜいオマケしても中学1年生の夏休み前まで。原作マンガを覗いた感じでは、絵柄とコマ割りで、高学年にも通じそうだが、実写の人物も、そのバカぶりも、そこまでいってないのだ。
松坂桃李扮する宇相吹(嘘吹き?嘯き?)が、ターゲットの潜在意識に働きかけて死に至らしめる事件を、小さいところから、警察内部、さらには……とエスカレートさせていく手際は、なかなかなもの。とくに、沢尻エリカの刑事のお陰で更正して感謝しているという料理人が、それと裏腹な気持を抱いていたというあたりは、面白かった。むろん、個々の殺人の動機はどうかと見れば、喰い足りないともいえるけれど、それよりここでは、動機の希薄さのほうを買うべきだろう。
トップを獲った長澤のキャリアウーマンぶりはガラにハマっていて見どころあり。にわか探偵コンビの珍道中も楽しいのだが、キャラクターの基本設定が甘く、物語のつじつまが合ってない。よく考えると高橋が身許を詐称する理由がないのだ。玩具の件、夕陽の灯台の件にしてもモヤモヤ気分だし、暇つぶしの小説執筆というのも不可解。この企画を通しちゃう人達の感覚が理解できない。最近ミステリーの映画化が多いが、実話にインスパイアされたにしてもセオリーを無視してほしくない。
この監督はトリッキーな趣向が得意技で、しかも本作のテーマがマジシャン。そうなるとクリストファー・ノーランの「プレステージ」を思い出してしまう。フーディーニを描いた「魔術の恋」よりもね。どこかで意識していたはずだ。でも本作の方が私は好み。大がかりな仕掛けと小技とが「不可能な恋愛」譚に組み込まれており、トリックのためのトリックになっていないから。また北海道ご当地映画という側面も効果を挙げている。手品には必ずタネがあるが真実が芽吹くタネなのだ。
スポ根じゃない野球映画、というパターンも近年あるね、狙いは良好。いじめもなく、悪人がいないのもいい。得したのは選手より監督の方だったかも。だが友情賛歌というのは隠し味にしかならない類のものだろう。それの裏付けになるちゃんとした物語がないと、飽きる。とはいえ、救われるのはあくまで悪意のない「笑い」で話を進めていく構成にある。細かいエピソードの連鎖なので本来ならばもっとギャグがつまっていてほしかったところだが。先輩が優しすぎる、が怖いよりはいいよね。
犯人と、実はよく似た警察官、その対決という設定は定番。問題ない。沢尻も健気で良い。しかし「犯人は起訴不可能だから野放しにしとけ」という上司、頭おかしいのではないか。さすがにそこまで日本の警察は民主的ではないよ。犯人を偽名と知りながら追及せず、お引き取りいただくというのもどうなのか。何かお子さまランチみたいな警察官ばっかり。また企画者はテロというものを誤解している。動機も手口もヘン。ただし不能犯桃李クンは魅力的であり当然続篇を考えているだろう。
同棲中の男が倒れると、名前も経歴も嘘と判明する設定自体は良い。過去のヒントとなる彼が書き残した小説の出来は良くないと一言で済ませる省略ぶりもオリジナル企画ならでは。だが、ヒロインが得体の知れない男と暮らしてきたと知った時の〈生理的な嫌悪感→逡巡→受け入れる〉という過程があっさりしすぎで、調査中も猪突猛進が過ぎて感情の揺らぎが欲しい。結末を知ると、数年前のここまで大きな出来事なのだから、最初に警察が介入した時点で正体が分かるだろうと思ってしまうが。
生き写しの生者と死者をめぐる北海道を舞台にした恋愛劇だけに「Love Letter」の影響濃厚だが、メソメソしたモノローグが多用されると岩井俊二的というより新海誠的。設定に次ぐ設定が過剰に上乗せされ、30分が過ぎた時点でどこまで広がるか不安を覚えたほど。重大な出来事が台詞だけで軽く流され、マジックを魔術として描くのかトリックとして描くのかも判然としないご都合主義だが、これくらいやってのけないと純愛映画なんて撮れるかという居直りぶりは支持。
最近、プレスシートのプロダクション・ノートを読んでいると撮影日数の短さに驚くことが多い。本作もわずか6日である。にしては上出来じゃないかと思うものの微温的な笑いだけなので好き嫌いが分かれるだろう。子役出身俳優はテクニックを持っているだけに、このところ大化けした須賀が牽引し、同じく子役出身の小関が達者に切り返すので2人を眺めているだけで満足。殊に須賀は脇の時と違い、主役の時はリアクションで相手の芝居を膨らませるなど練達の技を駆使して楽しませる。
莫大な予算をかけなくとも、質の高い挿話を丹念に積み重ねて細部を充実させることで大きな世界を描くことができる。そうした方法を駆使した白石の「オカルト」を更に飛躍させた傑作である。沢尻、松坂の非熱演型による汗も涙もないドライで無機質な演技が日本映画的鈍重さとも無縁に善悪の彼岸を越えた戦いを成立させる。内面を描こうなどと欲をかかず、表層的な人物たちに演出と演技で厚みをもたらし、やがてサイコキネシスとテロリストとスペクタクルを見事に結実させて唸らせる。