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結婚を餌に男から金を騙し取る口実に、「ヤクザの組長の娘」を装うというのは、純然たるフィクションではリアリティがないと退けられるだろうが、実際の事件がそうだとなれば、受け容れるしかない。これは、映画にとってはハンディになるが、それを、さほど気にならずに見せてしまうのは、髪型を変えただけで、印象がガラッと変わる瀬戸さおりなら、男を騙すのは簡単だろうと思わせる(笑)一方で、喰い物にされる岡山天音が、イノセントな男の愚かさを自然に表現しているからだ。
シナリオ教室で、偶然の出会いについて自信たっぷりに語る伊藤に、思わずゲッとなったが、これは、痛男ぶりを印象づける岡田将生の計算だろう。この自己愛だけで空っぽの男は、その空虚さ故に、相手の女を鏡のように映し出す。いわば、伊藤とAからEの女たちは、互いに互いを映す合わせ鏡なのだ。物語は、そこに映る自分にいかに気づくかというように展開するわけだが、演出で感心したのは、ルームシェアしている実希(夏帆)と聡子(池田エライザ)の何気ないやりとりである。
文体で、その観念性を具体的に見せている中村文則の小説の映画化がいかに難しいかということを、正直に露呈した映画だ。つまり、ここには映画的なアクションが、決定的に欠けているのだ。確かに、主人公を演じる玉木宏は、暗い過去を背負ったような憂鬱な顔を見せている。だが、香織(新木優子)に近づく男を殺したといっても、毒物を使ったという説明があるだけで行動はない。彼を脅迫する兄(中村達也)にしても、言葉以上のアクションはない。終始、この調子なのだ。
用具係とはいえ、サッカー選手のスパイクの減り具合から選手の体調を測るのだから、ホペイロというのも立派なプロだ。これを演じる白石隼也の佇まいがいいし、鬼塚という役名がぴったりの水川あさみ(失礼!)扮する男勝りの広報担当とのコンビもなかなか。チームの命運がかかる試合を前にして起こる事件も、さほど大きくないのだが、それぞれに捻りがあって楽しめる。試合には勝ちたいが、勝った結果が必ずしも目出度いことにならないという伏線を残したラストも悪くない。
これも「全員死刑」同様、実話の映画化が売り。上手いのは主人公の悪女が、カモにする男への態度と本当に恋した男への態度をコロッと変えてしまえる部分である。演ずる瀬戸さおりのお手柄。女は怖いよ。カモ岡山天音も、自らをカモと気づいてからの奴隷キャラで大いに得をした。男ってこうなんですよ。もう一つ見どころは瀬戸の恋した男とその姉の屈折した姉弟愛なのだが、ネタバレなので書けない。ただ全体に平板な感じはあるか。以上四人以外のパートがおざなりなのだ。もう一息。
かなりじんわりくる話。映画内で語られるように、女たちが「痛い男」岡田将生に振り回されてかえって成長するのがいい。佐々木希のじゃけんにされっぷりといい、池田エライザの罵倒といい岡田の様々な側面をあぶり出すアグレッシブな仕掛けは適切である。女たちを操る木村文乃は観客に憎まれる損なキャラだが、クライマックスの「対決」で見事に挽回する。ただドラマ版を私は全く知らないので評価は微妙。また鉄板処女夏帆に振り回される中村倫也もいい味を出しており、笑えます。
壮大なる野心作、と言えないこともない。だがキャラクター設定があまりにずさん、話も結構自分勝手。さぞ思弁的な原作だろうと推測はするが「悪」の観念が中二病レベルである。なので美女をストーカーする青年の妄想譚みたいになっちゃった。この美女もずいぶん鈍感なヒトだなあ、と私は呆れたわけだがラストの主題歌を聴くとそうじゃなかった、と判明。不思議な趣向である。歌こみで物語なのか。主題の一つであるテロの扱いも感心しない。俳優の顔が美しいのは大いなる救いであった。
サッカー用具係の目と手を通して、いわゆる「日常のミステリー」をやる、という抜群のコンセプト。なのだが最初に不満を述べておくと常識的すぎて彼じゃなくてもすむ部分がある。ダメなベテランのその理由じゃなく、活躍してるけども実は、といったギミックがないと無意味である。それにこのベテラン、横柄で嫌な感じも。まあそこは狙いだろう。メインの謎が可笑しいので飽きないものの、プレスとホペイロの健気さに他の人が応えていないようだ。二人で次のチームに移籍して続篇を。
日活の映画でもないのに「恋の罪」「凶悪」と並べる惹句に首を傾げたが、実話を元に映画らしい飛躍を見せた掲題作と違い、一応ほぼ事実に沿って展開する本作は常識的な人間ばかりがその範疇でしか行動しないので驚きがない。ヒロインが男声でヤクザを名乗って男を騙すのは面白いが、残念ながら観客は騙してくれない。誰が聞いたって女声なのに、普段会っているくせに気づかない相手の男が馬鹿に見える。本物はオネエ言葉のヤクザと称して切り抜けたらしいが、そっちの方が映画的。
シナリオ作協の講座出身者としては、自分も岡田将生の様に御託を並べて書かなかったのを思い出す。木村のもとへA〜Dの女たちが相談に来る面談シーンの繰り返しはつまらないが、各挿話を絡ませる職人芸は流石、廣木隆一。岡田は「何者」あたりからナルシズム演技を自在に繰り出すようになり、本作の無神経な猪突猛進ぶりは他に演じられる同世代俳優を思いつかないほど突出。それにしてもファンから恋愛話を集めまくった脚本家がそれを元にドラマ化ってモデル問題で揉めるのでは?
小説で読めばさぞかし面白いのだろうが、原作をなぞっているものの映画的なメリハリに欠けるので140分弱は冗長。舞台中継の如く平板なカット割りとアップで抑揚に欠ける会話シーンを延々と見せられるので、柄本明以外の主要キャストに長丁場の芝居を引っ張れる俳優が不在ということもあり、退屈に拍車をかける。「霊的ボリシェヴィキ」の息づまる対話を直後に観てしまっただけに分が悪い。悪だの邪だのと大上段に脅かしてくるが、蛇が出そうで邪も……いや蚊も出ぬ映画だった。
大阪芸大出身の注目株と聞かされつつ機会を逃してきた加治屋彰人の初見参となったが、量産型の手抜きのご当地映画とは一線を画す確かな力量を示す。サッカーに国威を持ち出すような愚もなく、馬鹿騒ぎのサポーターを嫌うのも良い。陽の当たらない用務員を主人公にささやかな事件を通して幅広い年齢の人々を巧みに描く手腕は、メジャーの商業映画でも充分通用するとみた。原作の軽妙なミステリー風味が薄まっているのが惜しいが、白石から白川和子まで役者を的確に動かしてみせる。