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中国へ出稼ぎに出た北朝鮮の主婦が人身売買されるドキュメントで、売買先の中国農村の夫のことが好きになるというメロドラマ的展開を見せる。中国で新家庭を築くプランはもろくも崩壊。亡命先の韓国で北朝鮮時代の前夫、息子たちとの4人暮らしとなった彼女は、前夫のいる前でこれ見よがしに中国の夫とスカイプでしゃべる。前夫は表情ひとつ変えない。ぞっとするシーンだ。彼女は家庭にまで分断を持ちこんでしまった。余計なナレーションを排して当事者の声だけに耳を傾ける。
メンフィスという神話的な音楽都市へのトリビュート。ボビー・ブランドやスキップ・ピッツのように、この映画の撮影時にぎりぎり生きていた勇姿が拝める。名門ロイヤル・スタジオにおける大御所と若手による初対面の9セッション。ソウル、R&Bがラップと出会う。若手たちは大御所に会うと必ず開口一番「貴方と共演できて光栄です。貴方の曲を聴いて育ちました」と述べる。白人も黒人もない。ただただ優れた音楽への敬意だけがある。現代社会の最も美しい場のひとつである。
まさにトランプ時代の風刺喜劇である。年金打ち切り、住宅ローンの不当な利上げなどで進退窮まった老人3人組が銀行強盗に打って出るわけだが、彼らに向ける作り手側の視線には慈愛と同情しかなく、これが凶悪犯罪だという認識は1シーンたりとも匂ってこない。〝悪いのは銀行なのだから成敗してよし〟だ。このニヒリズムは、社会の病巣が行くところまで行き着いた証左だろう。鼠小僧次郎吉は、最後には夥しい御用提灯に囲い込まれていった。はたしてジーサンズ3人組はどうか?
ソクーロフ「太陽」で昭和天皇と香淳皇后を演じた二人が再び共演し、ラトビアの首都リガの街頭を着物姿で彷徨したりする。それだけ聞くとひどく面白そうなのだが、言語の問題があったためか、名優たちにとりあえず演ってもらっただけのような演出の緩さ、集中の欠如が目につく。震災犠牲者への鎮魂と国際交流への熱意は一応伝わってきたものの、どうも映画としての体をなしていない。一つ星評価としたが、妙な味わいがあるのも確か。珍作好きの通人は拾っておいて損はない一篇である。
またしても北朝鮮ものかと思う。だけどこれは題材が異色で。中国人に売られた既婚の朝鮮人女性がいて、彼の地でも夫婦生活を送っている。彼女は脱北ブローカーで稼ぎ、それを生かして息子二人と元の夫を韓国に逃亡させる。もちろん自分も一緒。もうドラマも顔負けの展開で、あれよあれよと見つめる。だけど単なる北朝鮮批判映画になっていないところに衿を正す。北でもなく、南でもない。結局、彼女が安堵できるのは置き去りにした中国人夫で。〝国〟じゃなくて〝人〟なんだと。納得。
ソウル・ミュージックの大御所連が、いま流行りのラッパーたちとスタジオ・セッションする。バックも打ちこみじゃなく老若揃った生ミュージシャンたち。いやもうその演奏に胸躍り、からだは揺れて。当たり前のことだけどヒップホップも、大本はR&Bなのだと改めて認識。創生期から黒人白人混成バンドが当たり前だったスタジオの歴史や、黒人差別、解放運動の流れも盛り込みメンフィス音楽の意義と魂を浮かび上がらせる。全曲、もう少し聴きたい! と叫びたくなるほど、嬉しい快作。
英国のダニエル・ブレイクさんと同様、米国のジーサンズも老後の金で四苦八苦。だけどこちらはカラリとしたコメディ・タッチで、ま、変型のドロボー映画の趣き。その手口もズサンというかユルユルだけど、お年寄りゆえにこちらもノンビリと眺めた。もう一押し二押しジーサンズが危機に陥るハラハラドキドキがほしかったという欲も。なんか全篇、お約束の展開で安心はできるが刺激不足の感が。とはいえ相変わらずお色気発揮(歌のサービスも)のアン=マーグレット姐御にはニヤニヤ。
ラトビアの監督が日本食や着物に目を細めている。それ以上に、桃井かおり、イッセー尾形、この二人の演技、奔放なやりとりに感心し、うっとり見つめているのが分かって。古都リガ、その石畳の黒光り、石造りの建物の佇まい、それを背景にして孤独な女と幽霊の男が、まるで家庭にいるように日常の言葉で語り合う。するとこれがイッセーのコントにかおりが呼ばれての二人芝居に見える。面白い。けど、日本と役者たちに見とれ見惚れて、ギュッと手綱を引き忘れた演出のユルミも感じて。
十年前、家族のために出稼ぎに来たはずが騙され、中国の貧しい農村へ嫁として売られた北朝鮮女性B。長年会っていない祖国の家族。それなりに受け入れてきた中国の家族。2つの家族の間で揺れる彼女は、やがて、韓国へ脱北した北朝鮮の夫と息子に会いに行く。バタ臭い題材のわりには、洒落た印象すらある不思議なドキュメンタリーだ。フランスと韓国を拠点にする監督ユン・ジェホは、独特で逞しいマダムBを、フランス映画のヒロインみたいに撮る。そのタッチが映画に奥行を与えた。
テネシー州メンフィス。多種多様な音楽が生まれ、伝説的ミュージシャンを数多く輩出してきたこの地で、巨匠たちが次世代へ音楽を継承していく交流や貴重なセッションをとらえたドキュメンタリー。音楽のもとで、人種も性別も世代も超えて本物の才能を生み落としてきたメッカならではの豊饒さは、コアなファンだけでなく、誰もを幸福な気持ちにしてくれるだろう。レジェンドたちの顔のよさ、ハートの熱さ。あなたに救われたと互いに感謝し、恩を返そうするプロたちの絆。カッコいい。
アウトローのクライム・ストーリーも、無邪気に楽しめなくなってしまった時代に、名優たちがガツンと挑んだ庶民派活劇。フリーマン、ケイン、アーキン、全員80歳越えのツワモノたちがタッグを組んで、打ち切られた年金分を取り戻そうと銀行強盗に出る。おとぼけ系コメディに終始するかと思いきや、なかなか凝ったディテイルが張り巡らされていて、着地点も粋(これ、原題はお洒落なんだけどな)。カッコいいジーサンはイーストウッドだけじゃないよね、としみじみ唸らされる。
3度目のタッグになる、桃井かおりとラトビア出身監督による合作映画。20年前に娘を亡くし、夫が消え、孤独に暮らしてきた女性が、着物ショーに参加するためラトビアへ。夫の幻影を道連れに、異国で自分の人生を振り返る。主人公の名はケイコ。そんなタイトルの映画がかつてあったが、外国人からすると、日本女性は自分がなく、ふわふわして見えるのか。その迷宮的な内面が夢うつつに探られる。桃井がそこに揺らぎない芯を存在させ好演。終盤の、彼女の独白シーンがすごくよくて泣けた。