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展開は全部予想がつくし、伴奏音楽の使い方もあまりに型どおりなのだが、そういうことを言うのが野暮なように思えてくる映画。幼稚園存続への努力以上に、貧困のなかですさんでいた大人たちが生き生きとした表情を取り戻していく過程に感動させられる。穏やかなルイス・クーも味わい深く、美術も撮影も丁寧。しかしラストのあれはどうしてテロップで処理してしまったんだろう。あと、実話がそうだったからなんだろうとは思うけど、やはり「なぜギロチンなのか」と思わずにいられず。
もちろんトム・クルーズはいつでも最高で、クライマックスでホテルをよじ登っていくときの身のこなしの軽さなどいつもながらほれぼれするのだけれど、映画自体は弛緩した感じで、彼が主役じゃなかったら★の数はこれよりひとつ少なかったかも。シリーズ前作の、引き締まった美しい画面とタイトなクリストファー・マッカリー演出の記憶があるから余計に分が悪い。それでも、肉弾戦の迫力をたくさん見せようとしているのと、サマンサ役の女優がいわゆる美少女タイプでないのは見どころ。
冒頭の事故のくだりは猛烈な素晴らしさで、このままバーナード・ハーマンみたいなデスプラの音楽に乗って心理スリラーになるのかと思いきや、人の思いも考えも、長い長い年月をかけて変化するものだと言うかのごとく、ヴェンダースは悠然と時を操る。よもやこれは成瀬? まさかムルナウ? と思っても、何もかもがこちらの予想を裏切り、想像もしなかった境地へ連れて行かれる。3Dが人工的なスペクタクル性ではなく、ぬめるような独特の生々しさを映画にもたらしているのも面白い。
鉄道の音を模してぐわんぐわんと鳴り響くスコット・ウォーカー作曲の序曲が、これから始まる映画をリアリズムのつもりで観てはいけないと告げる。エピローグ部分以前の出来事の内容を冷静に考えてみると、父親の職業の特殊さを除けば、実は結構多くの家庭で起こっている出来事であり、こんな仰々しい演出にしなくてもいいのではないかという気もしてくるが、この仰々しさこそが作品世界をぎりぎり成立させているのだから、その意味でこの監督の演出力は高く評価されるべきだろう。
観光ではなじみのない現在の香港で生きる人たちがリアルに描かれているのが新鮮だった。幼稚園の園長を演じるミリアム・ヨンと彼女を取り巻く子どもたちの魅力による作品だが、冒頭、ヨンが勤める有名幼稚園へ、若いエリート層の夫婦が子供のことで文句をつけにくる。その不快さの演出が巧妙だ。我慢できないヨンは廃園寸前の幼稚園にみずから志願して勤務する。実話に基づくというが、地方との貧富の格差はすさまじい。夫ルイス・クーの理解も得て映画はハッピーに終わるけれども。
トム・クルーズとズウィック監督が組んで一匹狼J・リーチャーを映画化したのだが、超法規の快感で、2時間近くを飽きさせない。アフガンでの麻薬と武器をめぐり、米軍上層部が汚職をしているという、ありきたりの物語ながら、知性も体力もあるスーザン・ターナー少佐をコビー・スマルダーズが魅力的に演じて、男に引けを取らない。「戦火の勇気」で女性軍人にスポットを当てた監督だけにさすが。花火があがるニューオーリンズのハロウィン・パレードをクライマックスにしたのも効果的。
不可抗力な交通事故で子どもを死なせた主人公(ジェームズ・フランコ)は法律とは別にひどいトラウマを抱える。しかし彼は作家で、周囲の人たちの心配をよそに、書く小説が良くなるのだ。このあたり、ヴェンダースのキャリアからくる本音が出ていて興味深い。歳月を経て、もっとも傷が浅いと思われていた少年のサスペンスフルな登場もみごと。ラストシーンのフランコの笑顔を見ていると、彼自身による事故であっても、この作家は小説を書くことで生きのびただろうと思えて怖くなる。
孤独な少年の感受性がスコット・ウォーカーの音楽と共振して、終始、不安なままに進行する。知性も教養もあると自負する両親が一人息子を「いい子」に育てたいと考えるのだが、少年は教育など受けていない、素朴なお手伝いのおばさんになつき、両親のよかれと思う行為のすべてが気に入らない。その気持が痛いほど伝わってくるので、いまに何かが起こると観客はハラハラする。こんな少年は体験を活かして、アーチストにでもなってくれればいいと願うのだけれど、政治の道へ進んでしまう。
経済状況や親の不和を筆頭に、園児たちを取り巻く相当にヘヴィそうな問題が、ヒロインの家庭訪問一発でほぼ解消してしまう。また、園児もそうした環境に置かれているにもかかわらず非常に良い子で、あまり大変なムードを感じられず。ただし、そんな彼女の奮闘と交互にギロチン台の実物大模型作成に燃える夫ルイス・クーの姿を映すという、どうかしているセンスは買いたいところ。入院した彼女を励まそうと、夫が完成させたギロチン台を見せに持ってくるシーンは本当にどうかしている。
前作とタメ張る無双ぶりを誇るリーチャーだが、それを発揮するシーンやシチュエーションがクライマックスを除いてなんとも小ぶり。そのうえ、なにかとホテルを拠点にして出たり戻ったりするものだから落ち着かない。おまけに、黒いコートにジャケット、手には指出しのレザー・グローブ(こちらも黒をチョイス)という、時代錯誤というかあまりにベタな刺客の格好にも言葉を失う。しかし、トムの映画は〝彼の彼による彼のための映画〟でもある。ゆえに、グダグダ言ってはいけない。
身も蓋もない題名で、中身もそうとしかいいようがない。他人を不幸にしてしまった過去の出来事をプラスなものへと転化させる作家の性も、そういうものだとしかいいようがない。そこはかとなくサスペンス味のふりかけを掛けてはいるが、どうしてもヴェンダースならではのダルくてチンタラした感じが強いので、個人的には苦痛の二時間弱。ただし、窓から差し込む光にまばゆく反射する部屋のホコリ、白銀の街に舞い散る粉雪……といった3Dで捉えられた圧倒的な風光明媚には息を飲んだ。
後に独裁者となった男の少年記。というわけだが、たしかに母親もエキセントリックだし、少年の言動も危なっかしくて、そうなる素地や下地みたいなものは伝わるが、独裁者道驀進を決定づけるエピソードみたいなものがないので、〝癇癪子供の怒りっぱなし日記〟くらいにしか感じられず。ただし、本気で美しすぎる主演少年の容姿、やたらとカッコいい音楽、なんだかデカダンスしている屋敷、そのなかを走り回る少年をどこまでも追いかけるカメラが醸し出す、独特の雰囲気には酔える。