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人物の出入りがともなう長回しというのはどこか段取りっぽさが出てくるものだが(そして上手くいっている場合、それが気持ちよさや面白さにつながったりするものだが)正真正銘全篇ワンショットのこの映画には、驚くべきことに段取り臭がまるでない。さらに、都合よくカットして数時間後の場面に飛んだりできないだけに、たったいま生起している出来事から逃げ出せない状況に観客も置かれることになる。ヒロインの人物像を鮮やかに示す、カフェのピアノのくだりにもはっとさせられる。
メキシコ麻薬戦争の悲惨さに触れながら最終的にはまったく別の域へとたどり着いていたヴィルヌーヴの「ボーダーライン」に対し、こちらは現実の状況を伝える映画。絶望的な気分にさせられるのだが、困ったことに異様に面白い。どうやってこれだけ現場に溶けこんで撮影できたのか(もしかしたらここに出てくるよりもずっとヤバい映像もあるのでは)と思わされるし、何より編集が巧みでスリリング。国境を挟んだ両国に登場する「ヒーロー」が、どちらもとても魅力的で、とても危うい。
マクベス夫妻に子どもがいないことが、この物語にとっては結構重要なのではと前から思っていたのだが、本作は冒頭でそれを前面に出し、以後、全篇にわたって「死」のイメージ、「死産」のイメージをたちこめさせる。一方、運命の奔流に押し流される超高速栄枯盛衰物語として知られる『マクベス』を、この映画はひたすら引き伸ばしているかのようだ。荘厳な台詞の合間に「イメージ映像」めいたものがたくさん突っこまれ、様式美でも写実でも活劇でもなく、いわば夢幻性が目指される。
同じ時間に別々の場所で起こっていることをカットバックしているのかと思いきや、実は1年の隔たりのある出来事をつなげていたとやがてわかる前半部分の編集は、「気配」や「痕跡」を感じ取りあうことで紡がれるこの恋物語にふさわしいアイディア。二人の恋の成就にとって邪魔となる、女性側の婚約者をストーリーからどう追い払うかについては、ずいぶんわかりやすくベタなことをしたものだと思うが、自然環境を生かした演出や水上学校の生活描写も興味深く、全体に気持ちのよい映画。
旅行するだけでは分からないドイツの都市の若者たちが巧みに表現されていた。助監督時代、撮影時間が少ないと、ワンカットで撮れば間に合うと冗談を言い合ったものだが、現実にそれを実行する監督がいると、やはり気になる。その実験精神とカメラワーク、それに見合う物語と段取りのよさには感服。スペインから来たヒロインの孤独や屈折もよく出ていてピアノを弾く場面とラストの哀切さがいい。ただ、手持ちの長回し撮影は見ていて悪酔いするので、映画が終わったとき、ほっとした。
メキシコの麻薬戦争をテーマにした映画としては「ボーダーライン」が見応えのあるドラマだったが、今度はドキュメンタリーの登場。「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグロー製作総指揮ゆえ、アクション映画のタッチだ。自警団が銃弾を響かせ、カルテルに迫る場面を同時録音で撮影しているのだから、スタッフの根性には驚くほかない。正義の人ミレレス医師がまとめた住民防衛の自警団も、組織の拡大につれて、悪の組織に染まる。ミレレスも獄中にあるのだから、トーンは暗い。
裏切りと復讐の血にまみれた物語をCGを駆使したスペクタクル絵巻にすることもできたはずだけれど、ジャスティン・カーゼル監督はロケーション撮影を多用し、シルエットの多い映像に仕上げている。その分、シェイクスピアの有名なセリフが耳に響き、観客のイメージはかえって膨らむ。王殺しの場面も、イングランド軍が攻めてくるラストシークエンスも、シンプルな映像が音響効果とあいまって、古典の味わいを出していた。過去の名作芝居や映画との比較のせいで星の数はきびしいが。
一冊の日記を媒介にして主人公の男女が最後の場面まで顔を合わせないという難しい構成だが、水上学校をめぐるディテールが丁寧に描かれているので、画面に見入ってしまう。粗末な掘っ立て小屋みたいな校舎のなかで、トイレが重要な位置を占めているのも笑える。木下惠介の作品を思わせるヒューマンな味わいが、悪意に満ちた学園ものの多い、最近の日本映画を見てきたものには新鮮だ。とはいえ解散したタイGTH社の知恵をしぼった物語の展開が、ときにあざとすぎて鼻につくのも確か。
古い例えだが、ベルリン版「走らなあかん夜明けまで」といった感じ。ガチで139分カメラ回しっぱなし、演技や台詞はほとんどアドリブ。それが功を奏し、夜の街を駆ける若者たちへの肉迫感も臨場感も躍動感も過分に出てはいるが、そう感じるのは中盤から。前半1時間近いグダグダした会話劇はかなり萎える。また、終始ヒロイン視点の構成ゆえに仕方がないが、銀行襲撃の予行演習は見せるのに、このシームレス手法で本番を見せないのにもなんだか。凄いけど、いろいろ燻ぶる一本。
「スパイダーマン」の格言〝大いなる力には、大いなる責任が伴う〟やオーウェルの『動物農場』を地でゆく世界。教室でも職場でもどこでも発生する現象やシステムだとわかってはいるが、それをカルテル絡みで内戦状態のメキシコで見せられるとやっぱり相当にエグい。そんなとこまで行くのか&撮るのかと制作陣の気合と根性には感嘆するが、アメリカ側自警団の扱いが紹介程度で残念。メキシコ側のほうがパンチありすぎゆえにやむなしだが、彼らが抱えているものも深くて重そうだった。
なにやらヴィジュアルはダーク、そこはかとなくムードは荘厳で重厚である。製作陣いわく強欲なマクベス夫婦の行く末を昨今の経済情勢と重ねてもいるらしいのだが、雰囲気重視でシェイクスピアをやってみましたという印象しか受けず。実際、映像やノリに関しては紀里谷和明の「ラスト・ナイツ」が観ているそばから脳内リバイバルしてくる感じ。とはいえ、M・ファスべンダーやP・コンシダインら英国のグッとくる俳優たちはさすがに魅せるし、コテやんも相変わらずの美しさである。
置き忘れられていたとはいえ、他人の日記。それをむさぼり読み、書いた者に恋い焦がれて捜索までしてしまう。よく考えたら気持ち悪いヤツの話だし、そういう類の手紙や日記って溌剌とした内容でも怖いはずだが、主人公の青年は見た目も性格も憎めないタイプ。そこに舞台となる水上学校の牧歌的風景、純粋無垢な子どもたちといったものが違和感なく乗っかり、うっかりこちらも終始キュンキュンして見入ってしまった。ヒロインを含め、出てくる女性が片っ端から美女なのも素晴らしい。