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トラブルや問題は多々あれど、ともかくもハリウッド万歳という話だが、コーエン兄弟がなぜ今わざわざこんな映画を撮ろうと思ったのかがどうにも不可解。色々と豪奢な映画内映画の数々もパスティーシュの域を出ていない。ハリウッド・テンの描き方は、あれでいいのだろうか?今更反共映画はないでしょう。せめてもう少し全体的に焦点を絞ればわかりやすくなるのにと思ったが、そういうわけにはいかないのだろう。アルデン・エーレンライクの「能力の高いバカ」ぶりは良かったです。
私でも名前は知っている有名ブランド、マリメッコの創業者アルミ・ラティアの半生を描くフィクションという枠組みで作られた映画で、物語は全篇、劇場内にしつらえられたミニマルなセットで展開する。当然、語り口は人工的、抽象的にならざるを得ないが、ポストモダン的な雰囲気よりも、役者の演技をじっくりと見せたい監督の意図を感じる。ただそのせいで、テレビ的なこじんまりとしたスケールに留まってしまっているのも確か。アルミを演じるミンナ・ハープキュラは好演している。
M・ムーアのこれまでの作品同様、一本の映画として評価せよと言われたら限りなく否定的にならざるを得ないが、突撃世直しセルフ・ドキュメンタリーとしては、気持ちはよくわかるし健闘していると思う。各国のエピソードはいずれも興味深いが、中でもチュニジアの女性ジャーナリストが「アメリカ人」に向けたメッセージは感動的。しかし観てて次第に気が滅入ってきた。率直に言ってニッポンはムーアが繰り返し嘆いてみせるアメリカの現状より酷く、更に酷くなっていく可能性が大だから。
題名だけ見て、てっきりエルヴィスの伝記映画だとばかり思っていたら、全然違っていた。監督アルマンド・ボーはイニャリトゥ作品の共同脚本を手掛けてきた人とのことだが、どういう要素を担っているのかなんとなくわかる気がする。妄執の物語であり、絶望の物語であり、狂気の物語なのだが、なぜ今になってエルヴィスなのかといえば、ジョン・マキナニーという存在ありき、ということなのだろう。この人、歌は確かに上手い。しかしこのラストは好きではないな。安易じゃないですか?
映画業界もののカテゴリーに入るけれど、ゴシップ記者のような周辺の存在まで物語に組み込まれて登場するのが面白い。撮影というと技術スタッフは作品の内部に集中していればよくても、実際は世間との交渉の連続で、ロケともなれば街頭の人々と直接対峙する人員が不可欠だ。ブローリンの演じるスタジオの何でも屋は今で言うと制作部の領域に近いだろうか。対人能力に長けている上にタフな商売は映画制作のうさんくさい側面をケレン味たっぷりに見せる。劇中劇の華麗な水中芸は眼福。
マリメッコの創業者であるアルミ(故人)を、舞台で彼女の役を演じる女優のアプローチとともに見せていく手法。アルミの複雑な内面をとらえようとする女優の姿と、舞台として演出された映像を織り交ぜることで、波瀾万丈な人生とエキセントリックな人柄を描こうとする試みは見てとれる。その中でアルミは統合失調症のような症状も見せているが、マリメッコのテキスタイルを用いた舞台的な演出のエンタメ性が強いゆえに、人物像の着地点は追求しきれなかったのではないか。
登場する各国の企業は誰もが知る一流どころばかり。業績もネームバリューもあるそれらは対内的にも対外的にも社員制度や福利厚生を充実させる必要とメリットがあり、本作への出演だって恰好のアピールになる。だがそれを国の実態と結びつけるのは危険すぎる。アメリカだってピクサー社の施設は素晴らしいし、日本も有名企業の正社員の待遇はいいが、表に出てこないブラック企業のほうがずっと多い。というところまで考えるきっかけとしては十分に機能している。
自らをプレスリーの生まれ変わりと信じる男の寝顔が印象的だ。事故で生死をさまよう妻の手術中も、妻の意識回復を待っている間も、その妻が意識を取り戻すときも、彼はいつもぼんやりと眠っている。現実の厳しさから常に半歩逃避してきたような彼の中に流れる時間がその寝顔に垣間みられる。「キング・オブ・コメディ」や「タクシードライバー」的な主人公の思い込みの激しさが喜劇にもヒーローにも結びつかなかった悲哀が染みるが、ナルシシスティックなラストが惜しい。
大物フィクサー、マニックス(J・ブローリン)の動き回るハリウッドの裏話はどれも面白いが、ドル箱スター(G・クルーニー)が共産党シンパの脚本家たちに誘拐、洗脳され、マニックスに一喝される件りは大笑いする。赤狩り直前の頃だろう。唄う大根カウボーイ、水着の女王、ミュージカル・シーン(チャニング・テイタム最高)など面白いエピソードがあまりにも沢山盛り込まれているので、「バートン・フィンク」に比べると統一感を欠くが、古い映画ファンにはたまらない。
華やかな色彩、童心のように無邪気でシンプルでかわいいマリメッコのファッション。だが、創業者のアルミはそんな雰囲気とは正反対の矛盾に満ちた女性だ。天才的ひらめきと芸術センスを持つ情熱的な女権論者は、同時に自己中心で激情的なアル中の家庭破壊者でもある。劇中劇でアルミを演じる女優が「どんな女性なの?」と執拗に訊ねるがそれがこの映画のテーマだ。彼女の頑固一徹な純粋さは、ベルイマンやカウリスマキの北欧映画に登場する老人たちの魅力に通じるものを感じる。
年間8週の有給、昼休みが2時間のイタリア、フルコースの給食が出るフランス、大学授業料無料のスロベニアなどなど、各国のすぐれた政策を略奪して母国に持ち帰ろうというマイケル・ムーアの企画。いつもながら彼のキャラクター、話術と相まってワンマンショーの面白さだ。彼の意見は一見、過激で極論に聞こえるが、極めて正論。彼が自虐的に比較してみせるアメリカに無批判に追随している我が国が情けない。知性のある人間が国の方向を決定している国々を羨ましく思う。
そっくりさん映画と思って見て打ちのめされた。静かな哀しみに満ちた映画だ。他人の人生を模倣するしか生きるすべのない男の悲劇が身に迫る。初監督のアルマンド・ボーはA・G・イニャリトゥの「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の脚本家と知り納得。他人の人生を生きるという意味では俳優も同じだ。自己回復に苦闘するマイケル・キートンと死を選ぶこの映画の主人公J・マキナニーはまさに表裏一体。エルヴィスファンのみならず全映画ファン必見の傑作。