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思想も世代も異なる南北の兵士(北朝鮮軍の新兵を演じるのは「ファイ 悪魔に育てられた少年」で注目された俊英ヨ・ジング!)が、敵対しつつへっぽこな戦車に乗って戦場を行くユーモラスなバディ・ムービー。中国軍に出くわすところから爆撃機との対決、さらには橋の上でのくだりなど、誇張されたベタな演技と演出の工夫がはまって相当面白い。でも、コメディ以外の要素も含めて全部載せしたような映画で、バランスが取れていればそれでもいいが、もたつく感じがあるのが相当惜しい。
こんなストーリーは何度も語られてきたはずなのに、一度も見たことのない話のように思える。最高レベルのアクション演出が見られるのに、アクション映画とは全然違う何かを観たかのような思いがする。まるで魂の奥底へと沈潜していくかのようだ。空を大きくとらえた画面も空撮も、これほど効果的に思えたことはない。硬質な映像で人物の心情をすべてすくい上げ、物語に圧倒的深みを与えるディーキンズの撮影。ヨハンソンの見事なスコア。ヴィルヌーヴは本作でいよいよ最重要監督に。
大スクープでも記者たちははしゃぐ気持ちになれなかったはずで、映画もそれを理解して奇をてらわぬ見せ方。テンポのよさで観る者を惹きつけ、ラストのまとめ方も上手い。M・キートンがブンヤらしさの出たイイ顔。だが「個人ではなく教会の隠蔽システムがわれわれの標的だ」と繰り返されるわりに、システムとそれを支える勢力の手強さと怖さがほとんど描かれないのがひどく奇妙だ。一瞬だけ登場する元神父の言葉と身体が、この穏健な映画にあって唯一の生々しい映画的瞬間を形成する。
冒頭で、登場人物のひとりが「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドの真似をする。世界に不条理は数あれど、パレスチナ問題は最大の不条理のひとつだと思わずにいられないし、この映画がその不条理について考えさせるものであるのは確かだが、その一方、誤解を恐れず言えば本作の枠組みは、実のところ、裏切りと復讐、行き違う不幸な愛に彩られた、正統派ギャング映画なのだ。俳優たちの顔つきとアクション演出に魅力があり、秘密警察に主人公が追われる2度のシーンが素晴らしい。
朝鮮戦争版or戦車版「太平洋の地獄」ともいうべき設定とノリかなと思いきや、かなりコミカル。戦車内での放屁を筆頭に、ふたりが何度も繰り返すドタバタした形勢逆転劇はベタだとわかっていても笑わされるし、T-34の走りも軽快、CG過多だが戦闘描写もイケる。それでいて、きちんと同民族の対立を嘆き悲しみ、統一を願って締めくくってもいる。良くも悪くもウェルメイド。それゆえにアガるわけでもなく、ズシンと響くわけでもない。韓国水墨画っぽいポップなOPタイトルは◎。
「麻薬の国のアリス」といったところか。ヒロインの目を通し、正義も仁義も法の遵守もありゃしない、卑劣で残酷でドス黒い麻薬戦争の実態を見せつける。そして、その渦中に飛び込んだばかりに困惑し、恐怖し、疲弊する彼女の姿が、観ているコチラと被ってくる。敵の姿をまったく見せないことで尋常ならざる緊張感が横溢するトンネル内の銃撃戦など、今回もD・ヴィルヌーブは非凡ぶりを発揮。すっかり肥えているのに俊敏な殺人マシンを演じ切る、デル・トロも見事だ。虚無感満点の傑作!
奇をてらわぬ、実直でオールドスクールな語り口。だからなのか、足でネタを集める記者たちの悪戦苦闘、カトリック教会のアンタッチャブルぶり、癒えることのない被害者の怒りと哀しみがジワリとズシンと伝わってくる。ただし、神父たちを小児性愛に走らせるカトリックの病んだ構造にもう少し踏み込んでもいいし、ジャーナリズム美化映画に終わっているきらいもある。それはともかく、記者たちが机を囲むキー・アートは、年度末の納会で宅配ピザを待っている感じにしか見えず。
米資本の前作「クーリエ~」が、なにをしたいのかわからぬ失敗作に終わったアサド監督。だが、良い意味でハリウッド的感覚を会得したようで、テーマもメッセージも重いが優れたサスペンスとしても堪能できる仕上がりに。特に市場と路地での警察からの逃亡は異様な緊迫感。ただでさえ壁で囲まれた自治区から出られないのに、秘密警察の奸計、裏切り者だと疑う同胞の視線、親友とのしがらみ、恋人への想いといった他の〝壁〟が次々と現れ、主人公が袋小路に入る展開も切なく巧みで◎。
朝鮮戦争を背景に、戦場で本隊とはぐれ同行を余儀なくされる敵同士、韓国の伝令兵と北朝鮮の新兵、二人の私戦がコミカルに描かれる。「手錠のままの脱獄」のバリエーションとも言えるが、生き物のように動き回るオンボロ戦車をはじめユニークなアイデアに満ちた戦争映画だ。名優ソル・ギョングと若手ヨ・ジングのコンビのいささかオーバーアクト気味の芝居が笑いと涙を誘う。国が分断され敵味方になってはいるが、二人が同じ民族の下級兵士という設定が効いている。
メキシコの麻薬カルテルとの戦いを描いた映画は多いが、これほどリアルな迫力をもったものは例がない。詳細を知らされぬまま戦いの一員に加えられたFBI女性捜査官の視線で正義も法律も無力化し暴力のみが支配する白日夢の街へ、投げ込まれ、瞬時の弛緩もないまま二時間の緊張を強いられる。二転三転する調査のいきとどいた脚本、荒廃しきった街を切り取る見事な映像、見応えのあるクライム映画の傑作である。テロに対してテロで応じるという現代戦争の縮図を見る思いがする。
アメリカ映画には「新聞記者もの」というジャンルが確立している。社会の木鐸といった悲壮な正義感でなく、彼らの身上がタフなユーモアなのはラニアン、ラードナー、ウィンチェルたちの伝統かもしれない。牧師たちの児童虐待という陰惨な事件がテーマではあるが、記者たちの活躍がサスペンスフルに描かれる。的確な演出もいいが、特筆すべきはキャスティングだ。人気スターを集めるだけでなくアンサンブルが見事。マイケル・キートンとマーク・ラファロの芸域の広さに驚嘆。
「パラダイス・ナウ」で自爆テロに走る若者を描いたハニ・アブ・アサドの新作は再びパレスチナ自治区に生きる若者たちを描く。当然イスラエルに対する報復を胸に抱く若者だが、作者の悲憤は、抵抗組織の壊滅をはかるイスラエルの秘密警察のみならず彼ら自身が属する組織の非人間性にも向けられる。欧米とは異なる宗教や世界観に従って生きる若者たちの行動、恋愛、友情がスリリングに描かれる。市街に聳える巨大な壁、前作同様ぶった切るように終わる結末は象徴的だ。