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思わず「何ですと!?」と言いそうになった結末には賛否両論出そうだが、アメリカ映画の法廷物はそもそもテッパンとはいえ、複数回ある衝撃の展開で、毎回必ず大きな衝撃を与える演出はかなり巧み。面白さのポイントは、映画の開始と終了を裁判のそれと一致させていることと、被告となる少年を、法律の知識と観察眼を有する明敏な秀才に設定したこと。当初主役にはダニエル・クレイグが予定されていたらしいが、キアヌが演じたことで作品の色合いがどう変わったかを考えるのも一興かと。
アーティストのゲリラ的活動を(にわかファンもたぶん多いだろうとはいえ)熱狂的に追いかける人たちがNYにはこんなにいるのかと、あの街の豊かさにまず素朴に驚く。露わになるのはそれだけではない。この映画の主題はバンクシーというよりNYそのものであって、人々の行動力、エネルギー、したたかさ(そうした反応もまたバンクシーのアートの一部ではあるが)が、次々と描き出されていく。何度塗りつぶされても立ち上がるグラフィティー・アートにも似た、強靭なストリートの知性。
幼い子どもの目には狭い部屋も無限大の世界に見えることを示すキャメラにまず感嘆。脱出シーンのスリルも素晴らしいのだが、ほんとうに驚かされるのはそのあとだ。特別な絆で結ばれた母と子の特異な経験。言葉少なにつづられるすべての場面、すべてのショットに胸が締めつけられるような思いがする。「ショート・ターム」でもトラウマを抱えた女性を好演したB・ラーソンが、自身の演技はもちろんのこと、子役の演技を引き出すことにも貢献。完璧に表現される5歳児のリアルに瞠目。
広い意味での喜劇ではあるものの、宣伝ヴィジュアルの明るい色調と日本公開題名から想像されるだろうものよりずっとシリアス。「天使のような歌声」が「天使のような男」へと変奏され、男は(衣裳を通じて)主人公の妻と息子を合わせたかのような存在へと変化。彼らがいる室内の扉のガラスにはつねに十字架のような光が映っていて、やがて感動的なクロスカッティングとともに、映画全体が「愛」と「赦し」の主題へと収斂していく。後半から登場する、ある女性キャラクターが効いている。
人種や貧困という問題を、スリリリング極まりない犯罪劇へと落とし込んだ「フローズン・リバー」。その監督の第2作、しかも彼女自身も弁護士資格を保有。ゆえに期待が高まったが、なんとも陳腐な出来栄え。真実を追わずに無罪を作り上げる米法曹界の実情を抉ろうとしているのは伝わるが、なんとなくわかってしまう真犯人、安っぽいメロドラマな真相、これ見よがしに映す〝正義の女神〟像と、決定的な証拠が出てこぬ物語に反してダメな要素が続々と突き出されて萎えたまま閉廷する。
ものはいいよう。アジテーションも悪ふざけも芸術を名乗れば芸術になるし、そこに批判性を盛り込むと支持者が付く。こうしたセオリーを熟知したバンクシーの術中にはまるのは悔しいが、狂乱のNYと踊らされる人々が〝作品〟になっていくさまはやっぱり痛快で引き込まれる。しかし、騒ぎを追うだけでは物足りないと感じたのか、都市の再開発がグラフィティー・アートを表現する場を失わせているなんて問題にも触れているが蛇足気味。これはこれで興味深いので別個で撮ればいいのに。
どんな環境、空間、世界に放り込まれようとも、母子の愛と絆は揺るがないし、親離れ、子離れの時期は訪れる。原作小説の勝利かも知れぬが、そんな親子の摂理をまったく遠く離れたイメージのある監禁と絡めて描く視点に感嘆。そして5歳児の息子にとって究極の〝はじめてのおつかい〟ともいえる脱出劇でとことんハラハラ、外界に出てからの試練のドラマでとめどなく涙ボロボロと、どちらでもアゲる振り幅上等な監督の手腕にただただ唸る。B・ラーソンも見事だが、やっぱり子役も凄い。
片やなにかと自縄自縛に陥り、片やどこかに収容されてもおかしくないほど無垢で奔放。そんな相反した彼らのやりとりに笑い、徐々に明かされていく主人公の過去にハッとし、妖しい歌謡ショーと清々しいマッターホルンの景色で昇華する。その語り口が非常に滑らかでテーマやメッセージがスッと入ってはくるがそのまま抜けていく。まぁ、観ている間は楽しいから難はない。先進的で開放的なイメージのあるオランダだが、田舎だとけっしてそういうわけではないと教えられる作品でもある。
ネタバレを気にする風潮が映画の観客や言説を衰弱させているという説が最近ある。良い映画はネタバレ如きで価値をなくさないと言うわけだ。基本的に賛成だが例外もある。ヒッチコックの「サイコ」、ワイルダーの「情婦」、クルーゾーの「悪魔のような女」のような結末の意外性に賭けた作品だ。本作もその一つ。最後まで意外な結末を期待して面白く観た。脚本は一寸ズルイところがあり、結末の詰めがいささか甘いが、良くできている。ミステリーファン必見。ネタバレを読まないで観て欲しい!
グラフィティー作家バンクシーのドキュメンタリー、といっても彼は指名手配中なので画面には現れない。予告した場所に作品を残し、野次馬や警察が駆けつけた時にはすでに姿を消している。まさに怪人二十面相だ。作品が引き起す社会現象も作品と考える七十年代に流行ったコンセプチュアル・アート、寺山修司や赤瀬川源平などの仕事を思い出す。SNSで大勢の人が動きネットオークションで高値を呼ぶというIT時代の狂騒を描いたドキュメンタリーとして大変面白かった。
1監禁幽閉、2脱出、3救出後の世界の3幕からなる映画だ。通常脱出成功で大団円となるところだが、本作は救出後の第3幕に意味がある。幽閉された状況での母子の濃密な世界と救出後の情報と煩雑な人間関係に溢れた世界 我らが棲んでいるのは果して解放された世界なのか?不穏な問いかけが浮び上がる。鮮烈な問題提起だ。サスペンス映画を組込んだメタシネマの趣もある。決してスムーズな語り口とは言えないが、上出来のエンタテインメントとして楽しめる。母子の演技は圧巻だ!
死んだ妻の思い出に生きる謹厳実直な独居老人のフレッド。知的な風貌だが幼児的な言葉しかしゃべれない浮浪者テオ。偶然始まる二人の生活のおかしさ。オランダの長閑な田園街にも男同士の共同生活を疑惑をもって見る目はある。ワイラーの「噂の二人」の男性版コメディーとも言える。フレッドはホモでもバイでもないけど。同性婚、宗教、差別問題などが背景にあるが、コミカルな展開が心地良い。決してぶれないフレッドの生き方、あくまで天真爛漫なテオ、両優の存在感がさわやかだ。