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金融関係の知識があれば面白さ百倍だが、そうでなくても面白い。前半はポール・グリーングラス作品の画面にシャレオツなモンタージュを組み合わせ、メタな経済コメディーをやっている感じ。危なっかしい若者二人組をはじめとするチャーミングな人物たちが登場し、わかったようなわからんような、人を喰った「解説」が入るのも可笑しい。だが、ある時点から登場人物たちはそれぞれの理由から、事の重大さに苦悩しはじめる(画面もそれに合わせて転調)。そこもこの映画の重要な見どころ。
母娘が積年のどろどろした思いをぶつけ合う、「秋のソナタ」みたいな映画(?)を想像していたら、全然違ってライトな喜劇。薄味すぎる気もするけれど、気楽に観られるのがいいところ。そういえばアメリカ映画には、家を離れていた親のひとりが子どもの結婚を機にふらりと戻ってきて、ひと騒動起こるというホームコメディーの系譜があるのだった。M・ストリープのロックシンガーぶり以上にR・スプリングフィールドの俳優ぶりが驚き。エンドロール映像がミュージカルっぽいのも楽しい。
新聞社論説主幹以外の悪役がぺらぺらでつまらないのが難だが、こみいったストーリーを運ぶだけで手一杯になるのではとの不安をよそに、アクションシーン(それほど多くはないけど)にも人物のちょっとした動きにも、美術装置にも工夫が見られるのがなかなか面白い。ビョン様が記者会見を開いたところで終わりかと思いきや、そこからの展開がほんとうの見どころ。腕力で片をつけるのではなく、「言葉の力」での対決の様相を呈する。あと、エンドロールに流れるテーマ曲がかっこいい。
象徴の解読へと人を誘うものが次々映し出されるので、物語の設定にも何らかの象徴性を見出したくなる。重層的な時間、夢と現実とのあわいを漂うような世界であり、そのなかで主人公はやがて、「リアルなもの」との遭遇を望みはじめる。だが、星をつけるという行為にこれほど違和感を覚える映画もない。それはこの監督が、われわれの知る「映画」とは、何か違うものを目指しているからかもしれない。「ブンミおじさんの森」には、映画的なアクションがもっと横溢していたと思うのだが。
経済破綻を予測して儲けてもスッキリせず。けっして華麗とはいえない邦題に反した逆転劇を通して金融界の虚無と低劣を浮き上がらせ、ダン池田ばりに〝金融界本日モ反省ノ色ナシ〟と締めくくる。その姿勢は買いたいが、クセありキャラをこれ見よがしに演じるC・ベイルやR・ゴズリング、ブラピ、筋とは無関係のスターを引っ張り出す用語解説が、なんだか鼻につく。A・マッケイならば「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」のほうが、金融界への怒りがガシっと伝わっていた。
メリル・ストリープが、なんだかアミダばばあ。さらにバンドのメンバーを演じたリック・ローサスは死去、バーニー・ウォーレルは末期ガンで闘病中と、なにかと絵面が沈痛である。家族のギクシャク劇に、人種、貧富、セクシャル・マイノリティーなどをめぐる世のギクシャクもさらりと放り込んでいるのが巧み。とはいえ、メッセージ的にもストーリー的にも同じJ・デミの「レイチェルの結婚」セルフ・リメイクといった感じがしないでもない。演奏シーンは、音楽ものの名手でもある彼だけに○。
『スチュワーデス物語』の片平なぎさのごとく、イ・ビョンホンが黒い革手袋を外して義手を見せつける。この幕開けからから一気に最後まで持っていかれる130分。悪人どもの描き方は画一的だが、どこまでもワルをえげつなく描く彼の国固有のタッチ、組織の犬・巨悪の犬として生きてきた検事とチンピラが抗い、敵同様にしたたかな作戦を立てる構図と展開はどうしたって燃え上がる。「ベテラン」と同時期に製作されているが、韓国エンタメ系では今後この手の作品が増えるのか?
眠る兵士たち、眼をカッと見開くオバサンなどが、クーデターを繰り返してきた歴史、軍事政権への沈黙や注視といった、微笑んでばかりではないタイという国を比喩。ということなのだろうし、ユニークでもあるが、延々の長回し&ロング・ショットが、自分のような多動性映画が好きな者には堪える。そこへスヤスヤしている眠り兵の皆さんが映し出されると、御一緒したくなる。青・緑・赤と色を変える治療機器は、形も発色も新宿・歌舞伎町セントラルロード入口のアーチに似ている。
ウォール街の不正義に挑む四人の男たちが巧みに描かれているので、経済音痴の私も上出来のサスペンス映画を観るようで、十分に楽しめた。不幸にして我々はサブプライムローンの破綻という結末を知ってはいるがネタバレ感はない。ストーンやスコセッシのウォール街ものとは視点が違うし、破産に追込まれた被害者たちを描いたのが「ドリームホーム99%を操る男たち」だから併せて観ると面白い。主人公たちそれぞれの社会観、正義感が提示される結末は気持がよい。
「センチメンタル・アドベンチャー」「クレイジー・ハート」「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」等々、老残のミュージッシャンを描いた映画は傑作が多い。大いに期待したのだが失望。夫も子どもも捨て音楽に生きるこの女性がよく判らない。一族再会のドラマも盛り上がらないまま予定調和の演奏シーンでハッピーエンド。このヒロイン、クレバーでスクエアーなのだ。ロッカーはもっとクレージーでヒップでなけりゃ。カラオケに興じるストリープを眺めるのは眼福耳福ではあるが。
政財界とマスコミの癒着腐敗を奇妙な友情で結ばれたヤクザと検事のコンビが暴いて行く―この種の設定のアクションドラマは昨今の韓国の世情を反映して、いずれも当っているという。リンチのシーンは凄惨だし、裸女を侍らせての乱痴気宴会は啞然とするが、きびきびしたタッチは快調で、七〇年代の日活や東映のアクション映画の持っていたアナーキーな反体制的エネルギーを懐かしく思い出す。主演のイ・ビョンホンとウ・ジャンフンが好演、二人の対比がなかなか良い。
タイの東北部、眠り病で眠り続ける兵士の病院を訪れた二人のボランティア女性と患者の兵士―三人の夢、想い出、深層心理、霊能力による交信などが美しい自然を背景に静かにゆっくりと描かれて行く。吹く風、流れる時間を感じさせる画面だ。最近スローライフなどという言葉をよく耳にするが、さしずめスロー映画とでも言ったらいいかもしれない。安らぎと心地よさを感じさせる映画で、一見古風に見えるが、物質中心の近代社会批への批判がこめられた実験性を持つ作品だ。