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ホラー映画が大好きな監督だということは画面とサウンドから滲み出てくるので、いまに何かが起こると待ちかまえているのに、一向に怖くならない。むしろ舞台となっているデトロイトの廃墟の寒々とした光景の方が怖い。その家並みに亡霊がとりついているような気がするのだ。怖いのは人間なのだから設定や仕掛に凝るよりも肝心なのは登場人物の謎と魅力だ。「それ」を誰かにうつすことによって厄払いできるという話ゆえ、友人や近親者とややこしい関係が生まれるのだが、怖くはない。
文化大革命の時代、北京から下放された知識青年の眼で見たモンゴル内陸部の物語であるが、さすが「薔薇の名前」のアノーだけに、人類学から当時の政治的状況にいたるまで目配りがきいていた。しかし大平原にひとたびオオカミの群が出現すると、その迫力が圧倒的で、主人公のウィリアム・フォンがオオカミの子を飼おうとする挿話さえ吹っ飛んでしまう。「自然界の秩序を乱すことはするな」と諭す遊牧民族長バーサンジャブの風格が優雅。草原で老いの身を静かに葬られるまで美しい。
幌馬車で西部へ向かった時代は昔のことで、現代のアメリカ人は定住意識が強く、それがストレスになる。主人公もようやく手にいれた家屋がリーマンショックのためにローンが払えず、手放さなければならなくなり、発狂寸前の状態。不動産屋が警官とマイホームの追い出しにかかる場面は実にリアルでイヤな光景だ。不動産屋を演じるアンドリュー・ガーフィールドの憎々しい悪役ぶりが作品を一気にサスペンス・ホラーにする。目の前の利益を求め、カルチャーのない人間ばかりの登場が苦痛。
40年住んでいるうちに値段の上がったマンションを売って新しい部屋に住み替えようと、あたふたする老夫婦と、彼らを取り巻く都会人の人情物語は、東京もどこか似たところがあり、ディテールが具体的で身につまされた。モーガン・フリーマンとダイアン・キートンの夫婦の寄り添い方がみごとで、間に入る不動産女子シンシア・ニクソンの、ニューヨークを生きているという鋭敏な言動もみごと。周りの人間群像も個性的で、街の古い感じも味があり、都会に住むシニアにはお薦め。