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有名俳優陣てんこ盛りで楽しめるのだが結局テレビですむでしょという感じになっちゃう。惜しい。わざわざ劇場版をやる以上、もっと映画的な趣向が欲しかった。二人の信長、という基本のアイデアはそれにうってつけだったはずなのだが、単なる辻つま合わせになってしまった。それと最大の不満は現代への戻り方。ネタバレで多くは書けないが。ウィリアム・アダムスが携帯を持って現れるあたりは面白い。SF映画の醍醐味だ。信長が自分の死に方を教科書で読まなかったのは何故だろう。
星が増えたのは、私が雑誌『幽』の大ファンだから。原作者の夫婦作家に加え、平山氏、福澤氏っぽいキャラまで現れて「まいりました」と言うしかない。手法としては投稿実話怪談を模した古典的スタイル。エピソードがエピソードを呼ぶ「呪怨」風、あるいは「フィッシュストーリー」風とでも。生き埋め炭鉱夫の怨みを描いて、亀井文夫のある作品に通ずるところもある。呪いが感染する日本近代史。ただ主演の橋本愛が死ぬほど怖い目に遭うわけじゃない、これが不思議。ほどほどなんだね。
アントニオーニかタルコフスキーか、という映像美は文句なし。空気の流れを感じさせるモノクロ場面も効果的。テーマは「父と息子」の奇妙な再会。いわば「放蕩息子の帰還」のパロディをやっていて、この旧約聖書的な物語の強度は普遍的なものだ。親父のラスト・パフォーマンスもいかにも前衛舞踏家っぽくて良い。でも無駄が多いね。女が無駄。ブルジョワ青年も無駄。無駄と言っちゃいかんのか、つまり効いてない。息子にとって親父が何だったのか、あまりよく分からなかったのが残念だ。
猫の映画は難しい(演出が)。呼んでも来ないから。でも健闘している、この映画。イントロを経て、猫と人のサヴァイヴァル戦略みたいになる展開が秀逸。わざわざ木の枝で釣りをしている。そのおかげで猫の飼い方という実際的な側面を、元ボクサーの人生修業の物語に無理なく合体させるのに成功した。風間の年齢不詳みたいな存在感も最適だ。私は猫派で星を足したが、逆に猫嫌いにどう映るか知りたいところ。一部で有名なシタビラメの猫缶が出てくるあたりも可笑しいね。猫好き必見作。
ザックリ、パサパサ、味も塩っけもない電気紙芝居の戦国物ごっこ。固有名詞の連発と説明台詞で話を運ぶ脚本も乱暴だが、どの人物も切り紙人形のように薄っぺらで、俳優陣もみな上っ調子。リアルな演技禁止令でも出たのかも。原作漫画もアニメ、ドラマも知らないので、現代の高校生がタイムスリップして信長の身代りにという話の、どこがウケたのかこちらには不明だが、冒頭から仲間ウチ映画のノリ。安っぽくふざけたプラスチック映画など、時間のムダと外っぽを向くしかない。
ノンフィクション仕立ての小野不由美の原作は、奇妙な現象が繰り返し起こる場所や空間を、過去にまで遡って克明に追求していたが、正直、あくまでも活字による怪談話、読んでいて怖くなることは全くなかった。それだけに怨念や因縁もからむ原作をどう映画化するか期待したのだが、〝音〟と何者かの〝動き〟の見せ方は成功しているものの、超常現象を謎解きしたりの理詰めの部分が凡庸で、得体の知れない恐怖だけでグイグイ押してほしかった。で、思った。一番怖いのはやっぱり、人間。
暗い水面に浮かぶ無人の小さなボロ舟。心象風景としてはありがちで、既視感を覚える。それを言えば、強風の効果音や、砂浜に無言で立ちすくむ男たちの映像も、以前にどこかで観た記憶があり、ストイックに、シンプルに虚無や孤絶感を描こうとすると、描写が似てくるのか。いや逆に、伝わり過ぎるから既視感を覚えたのかも。ともあれ、〝囲い屋〟をしている主人公の心理を台詞や説明抜き、映像で描出しようとする竹馬監督の意図は頼もしく、いささか通俗的な肉親幻想も救いになっている。
猫を動く小道具にした甘ちゃん男子の日常的迷走スケッチ。迷走といっても猫を追っかけたり、オモチャにしたりする程度なのだが、それにしても主人公男子の面白味の無さにはアキレた。ボクサーの夢を断たれ、無為な日々を過ごしているという設定だが、生活感のないガランとした室内からして無個性で、これで猫たちが画面をウロチョロしなかったらとてもじゃないが間が持たん。猫がらみのエピソードも実にいいかげん。ま、猫に安易な癒しを求めないところと、タイトルにはナットクしたが。
連ドラ版を観ていないので冒頭にダイジェストで説明してくれるのは有り難いが「SW」の様に中途から始まる魅力があるわけではなく、完結篇は映画という趣旨のみ。フザケた内容でも真剣に演じる小栗と山田があらゆる面で救いのような映画だが、信長として生きることになった現代の高校生が日本史に無知すぎて、タイムスリップの意味がなく、瓜二つの盗人(「影武者」)でも大差ない。喉を震わせて喋る柴咲のコントみたいな時代劇演技には驚いた。ま、ドラマが好きだった方はどうぞ。
因縁の連鎖は戦前旧家の奥山家一家皆殺しという横溝的な世界にまで至るが、その長い時間と闇を取材対象者から丹念に聞き取る過程を中村義洋が撮ることで凡百の怪談映画と一線を画する。何せ『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズの監督だけに近年の作品には首を傾げることも多かったが原点回帰である。橋本愛のごく普通な女子大生ぶりや、「はやぶさ」と同じく眼鏡をかけると異様に地味になる竹内結子も本作には相応しい。因縁と言えばこの会社が配給で「奥山怪談」とはね……。
東京と近郊の地方都市を結ぶ視点は「NINIFUNI」の脚本家らしく冷徹。若者たちがホームレスから生活保護を巻き上げるために用意した小屋という社会の縮図のような空虚な空間が素晴らしい。何が起きるわけでもないが、ガイラの息子こと小水たいがや大久保鷹(往年の若松プロみたいな並びだが)の存在感が惹きつける。さらに後半になると〈動き始める〉田中泯が絵画の如き風景の廃墟・砂丘に拮抗しようとする。人と空間、人と風景を見事に対比させた佐々木靖之の撮影が凄い。
猫さえ映しておけば事足りると思っているような映画と違い、猫寄りながら主人公の挫折と再起を語る姿勢は好感。子猫から成猫になっているので、それなりの歳月が過ぎているはずだが、バイトのようなことをして飢えをしのいでいるが家賃も食も深刻な問題にならない〈楽しき極貧生活〉。貧困が主人公の再起や猫の病気と結びつかないので、やはり猫を愛でるのが主になる。それで良いと思うか、食費捻出にも四苦八苦して猫に当たり散らすようなリアルを見たいか。私は後者が見たい。