パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
占領軍を触媒として人々の悪意や階級構造が露呈するさまは面白いが、基本的に戦争を背景に借用した悲恋メロドラマだな(あと、何で英語しゃべってるんだろう)と思いながら観ていたら、突然力強い展開が訪れる。それは、のちのフランス解放を知ることも、作品を完成させることもなく収容所で非業の死を遂げた、原作者への鎮魂の試みであるかのようだ。最もありえない人物が英雄的決断を下す瞬間に感動。てっきり重要なモチーフかと思った時計の音とピアノ曲の扱いにはちょい拍子抜け。
冷戦期のアメリカ映画並みに実際の国際情勢を反映させたキナ臭い部分があり、中国政府の軍事的・外交的思惑や大国のパワーゲームのせいで、ほとんど部外者だったはずの香港が危険にさらされる話だとも言えるのだから、いまの香港の人々が抱えこんでいる気持ちが露骨に表われているかのようでもある。空間演出にまったく混乱のない緊迫したアクションシーンがさすがのハイレベル。掟破りとも言うべき、後半から終盤にかけてのまさかの展開には仰天。はたして続篇があるのか気になる。
完璧なファミリー・ムービーであると同時に、英国コメディの輝かしい伝統を受け継ぐ作品。さまざまな映画を想起させる細部も、映画好きにはたまらない。一方、19世紀から20世紀にかけて、南北米大陸やオセアニアなどから原住民が「標本」として欧州へ連れて来られていた事実を踏まえたかのようなくだりもあり、住処を失くしてロンドンへやって来るパディントンは難民のようでもあるのだから、この映画全体は、多様性を包摂する(理念としての)ロンドンへの、見事な讃歌になっている。
トリュフォーへのオマージュを交え、バイタリティあふれる老婦人を中心にドラマを展開しつつ、その息子と孫それぞれの迷いと選択を描く。家族写真をはじめとするさまざまな仕掛けが、人の人生の年月をしのばせてじんとさせるのだが、一方でこの映画の最大のよさは、英国風とも米国風とも違うコメディの味わいにある。定年退職した息子、孫のルームメートでいつもナンパに失敗している若者などじわじわ可笑しく、ガソリンスタンド内の店のシーンに至ってはナンセンスコメディすれすれ。
ナチス将校との忍び逢いはもとより、戦闘機による爆撃、レジスタンスの保護と逃亡幇助、ユダヤ人母娘の行く末などなど、スリリングな要素がちりばめられたなかで図太くなるヒロイン。なんだか重い作品かと思っていたが、意外にもハーレクイン・ロマンスっぽい仕上がりだ。ナチス侵攻に乗じて村人たちの性根や抱えていた怨嗟、嫉妬、憤怒が浮き上がるのも怖いし、盛り上がる。台詞は独語と英語のチャンポン、キャストの国籍も枢軸国と連合国が入り乱れているが不思議と違和感なし。
『24~』の1シーズン全話を2時間に短縮したようなノリ。とにかく緊急で非常という状況下で、ドタドタと人が現れてはバタバタと死に、前振りもなく裏切りが発生して黒幕が浮き上がる。キビキビしまくっているのは悪くないし、嫌いでもないが、タメやドラマが無きに等しいので観る側には相当の置いてきぼり感が到来。イヤホン型翻訳機なる都合の良いガジェットが登場するが、香港、中国、韓国の捜査員&諜報員が一同に会話する度にそれをいちいち装着するのが面倒そう&笑える。
CG製パディントンが、濃厚獣臭が立ち上ってきそうなほどガチに熊。が、そんな容姿と吹き替えを務めたB・ウィショーの朴訥口調&礼儀正しき言葉遣いのギャップにキュンとなり、いつしか彼の虜に。ペルーからの来訪熊が文化摩擦を起こしながらも一家に受け入れられる物語も、伝統と歴史の街にして移民の街でもあるロンドンに相応しくて◎。ニコマンが「ミッション:インポッシブル」の元夫トムクルよろしく宙吊りスタントをこなし、同作テーマ曲もバッチリかかるのだが、何故に?
新凱旋門、エッフェル塔といった名所が見切れまくり。そんな狭小感満点の状態で映し出されるパリの街並みが、漠然とした不満や不安を抱える各キャラクターの胸中を表すかのよう。一転、彼らがあれこれから解き放たれる契機の地となるノルマンディーは空撮ガンガンの美景バシバシ。こんな具合に風景で情景を語るのだが、それだけに頼らずユーモアと人情味もほどよくまぶされていているのがいい。ミシェル・ブランは役柄といい、ルックスといいフランスの角野卓造と呼びたくなる。
ナチ占領下のフランス市民を描いたヴェルコールの『海の沈黙』は抵抗文学の名作として学生時代の必読書であった。後にメルヴィルが映画にした。この映画の原作も同じ状況が描かれ、どちらのドイツ将校も知的な音楽家だ。『海の沈黙』の主人公たちは、フランス文化への敬愛を語る将校に終始沈黙をもって接するが、本作のヒロインはいつしか愛情を抱く。しかし共通するのは、同時代を生きた者の深い悲しみと怒りだ。映画は大胆ではあるが誠実な脚色で見事に原作の世界を再現した。
荒削りで、ルーティーンな展開ではあるが豪華な顔合せと切れ味のいいアクションシーンで香港映画の活力を見せてくれる。女テロリストを演じるジャニス・マンがハードなアクションと演技で錚々たる共演者を食っている。極めて魅力的! 事件は解決しないまま、意表をつくエンディングを迎える。当然シリーズ化されるような雰囲気だ。そんなアナウンスメントはないが、大いに期待したい。ヘリオスの正体が政治的背景を持つテロなのか、金銭目当の愉快犯なのか興味はつのる。
パディントン君は誰にも愛される素直でやさしい熊ちゃんだ。彼がくりひろげる大冒険の数々は、大人も子供も楽しませるイギリス児童文学の伝統の産物だろう。大地震を生きのび、暗黒大陸から、「この熊をよろしく」という札を首に下げてロンドンへやってきたパディントンの姿に、移民問題を重ね合せることは容易だ。当初、排除しようとするリスク管理を専門とする主人が、やがて命がけで一匹の熊の命を守ろうとする姿は素直に感動を呼ぶ。脚本監督のポール・キングの手腕は見事。
ヒロインの配偶者の葬儀から始まり、彼女自身の死で終る物語だが、陰鬱な悲劇ではなく人生の甘美さ、厳しさがユーモラスに描かれ、いかにもフランス映画らしい映画を観たという心地よい満足感を味わった。アニー・コルディの凛とした佇まい、ミシェル・ブランの自在な可笑しさ、孫役の青年の新鮮さ……三世代を代表する役者たちの最良の部分を引出す演出術は俳優出身の監督ならではのものだろう。給油所の売店主、監督自ら演じるホテルの主人など点景人物の造型、描写も楽しい。