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問題は「高度ではなく態度だ」(Not altitude, it’s attitude)というセリフが出てくるこの映画は、エベレストが顧客を集めての登山事業の対象となった90年代の実話に基づく。晴れ間をねらっての頂上への道には複数グループが集中し〈渋滞〉が起き、さらに下山のほうが大変な模様が、見事な視覚効果でまるで記録映像のような迫力で描かれる。家族から登山基地への衛星電話は毎分25ドル、命がけのヘリコプター救出など顧客側登山者と案内人事業者側双方の群像ドラマが巧みでうまい。
夫婦がシャワーを浴びている開巻場面は、クレジット表記が日本語字幕より小さいほど穏やかで繊細で、そこからすべてが始まっている。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の妻(ヒラリー・スワンク)の介護に応募したがさつな女の子(エミー・ロッサム)は、常に乗用車ではなくトラックを運転してくるが、その性格が妻にはなくてはならない存在になっていく過程がいきいきと描かれ、〈難病映画〉の枠を超えた魅力とユーモアで観客をひきこんでしまう。周囲の多様な人たちの姿も印象的な秀作。
開巻タイトルは60年代初めの横尾忠則のアニメをちょっと思わせて笑わせるが、内容もそのままだ。思えば一九六八年は「2001年宇宙の旅」が公開され、月面着陸に成功、だがヴェトナム戦争は? という状況だったが、これはそのすべてと、欧米のポップカルチュア、音楽シーンの動きをまるごと包みこんでみせたファース(笑劇)である。ヴェトナム後遺症のタフガイが米政府の密命で巨額の札束と共にイギリスに乗りこみ、ヒッピーやヤクザを巻きこみ暴れまくる構成は馬鹿げた真実味がある。
色彩を極度に押さえたこのカラー・スペクタクルは、炎の朱色と樹木のかすかな緑のほか、雪の白さと黒ずんだ城砦が美しい。これは『忠臣蔵』を西洋の架空の時代と国に置きかえて成功させた最初の映画として特記されるべきだろう。日米欧亜のスター俳優たちの演技や殺陣も力強く、人物の性格を掘りさげつつ基本的には非常にわかりやすい物語構成で、無国籍だからこそ国際俳優による無駄のない英語のセリフがとても聞きやすい点も、見ていて楽しいのではないか。これは傑作だ。
1996年に起きたエベレストでの遭難事故を実写映画化。3Dの映像は確かに迫力があるが、登山はなぜ人を魅了するのかと妙に考えてしまった。プロの登山家と、彼らをガイドとして雇い頂上をめざすアマチュア登山家の一行に降りかかる災難。確かに制覇を望む理由は各人にある。これが実に人間臭いというか。客観的、かつ生々しく描いているので、実話と思うとよりやりきれない。スターを含めた俳優陣が、ドラマの奥行を深める。エベレストと人との関係。無知な私も知りたくなった。
ALSを患った女性と、その介助人となったミュージシャン志望の女子大生の交流を綴る。「アリスのままで」を少し思い出させるが、この作品は、タイプのまったく違うふたりの女性のつながりに焦点を当て、互いの変化を描いていく。難病ものではあるけれど、闘病の中から、ふたりの男性観や家族観が見えてきて、特に、両親との関係がよくないことが彼女たちの共通点であり、少し踏み込んだ女性映画という面白さもある。ヒラリー・スワンク、エミー・ロッサムも期待通りの好演。
1969年。ヴェトナム戦争帰りでトラウマを患うCIA諜報員の男が、アポロ11号失敗の保険のため、ある任務を任される。キューブリックに偽の月面着陸映像を作らせるというもの! こうして飛んだイギリスで、そもそも人違いをしたことから事態はハチャメチャな方向へ。時代はヒッピー文化真っ盛り。サイケデリックなディテールが、映像につめ込まれているのが嬉しい。物語自体は何てことないが、インモラルな空気とおバカなテイストがいい塩梅にミックス。監督はフランス人。なるほど。
紀里谷和明がハリウッドで撮った監督作。『忠臣蔵』を題材にした騎士道の物語だが、まず、キャストの豪華さに驚く。クライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマンだけではない。アン・ソンギ、伊原剛志ほか、欧米アジアの才能が揃う。アクションもあるが、静謐なムードが印象的で、ことさら俳優の目の表情から多くを伝える演出に独特なものを感じる。日本人の中の無国籍感覚が、世界を巻き込みひとつの作品へと結実したような。監督の壮大な挑戦は、今後どんな展開を見せるのだろう。
このところ、CGの全面活用に対するバックラッシュがハリウッドに起きていると感じる。現実空間での生身の身体にやどる迫真性にふたたび投資すること。「ニード・フォー・スピード」や「M:I/ローグ・ネイション」とならんで、本作はその格好の作例となるだろう。この映画はエベレストでの撮影そのものについてのドキュメントでもあり(簡潔なタイトルは正しい)、映像がほんらい的にやどしている記録性と虚構性を過酷な状況下で調停している。それにしてもよく撮ったなと思うよ。
ヒラリー・スワンクが今度もすさまじい。筋肉や皮膚の生物学レベルでALS患者を演じているかのようだ。動けないヒラリーに対して、よく動くエミー・ロッサムの軽快さもよい。主人公にマリファナを吸わせ、いけないことばを叫ばせるPC(政治的正しさ)に逆から配慮した描写はかえってそらぞらしいだけだが、難病ものが傾斜しがちな大仰さを避け、省略を活かしてドライに描いた点には好感をもった。性愛や友情ではない、女性同士のシンパサイズは近年の重要なテーマだと思う。
アポロ計画とヴェトナム戦争というケネディ時代の遺産は、いまだにアメリカにとってのトラウマであるらしく、その意味でこのフィルムは「インターステラー」と同じ精神風土に培われている(①月面着陸の否定、②〝カーツ大佐〟としてのマット・デイモン)。という個人的関心を確認できた以外には、さしておもしろくもない映画だった。アポロ、ヴェトナム、ウォーホル、LSDがもっと深いところでからまりあってマーブル模様のシックスティーズを描くのなら大歓迎だったのだけれど。
全篇スローモーションで何かともったいぶった騎士道残酷物語。それがスタイルだとしても、開巻からエンドマークまで一貫して、暗い、重い、鈍い、のトーンで塗りこめられてはしんどい。「CASSHERN」や「GOEMON」にあったマンガ的なエモさは影もなく(そりゃそうか)、ひたすら暗く重く鈍い映画になっているのは残念である。日本人監督自身による演出ながら、好敵手の伊原剛志が「チート」の早川雪洲以来変わらない東洋的エキゾチシズムにおいて描かれている点にはおどろいた。