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MOZU「マニア」ってのが多数いるらしく、私はそうじゃないので困ったことになっている。話が分からないのだ。それはいい。私のせいだから。問題は場面と場面がきちんと連携していないことで、見てると話が飛ぶんだね。突然海外に行っちゃう。どういう身分で西島秀俊が動いているのか不明だし。そういうドラマなのか。ただしロケのカーアクションは一級品。日本じゃ撮れない。難点は黒幕の存在が効果薄なこと。本来語られなきゃならない部分をよけて通ってるみたいな映画である。
亀仙人みたいなミッキー・カーチスが可笑しいが、見終わると彼の設定が単なるにぎやかしじゃなかったと判明する。世界観はややこしいので略。ただ、明らかに『牙狼』と違う方向を目指している。怪物化したキャラがいないし、主人公も現代版時代劇といった衣裳とムード。決闘はコンピュータゲーム風の画面あり、この手の作品の定番「屋上バトル」あり、とバラエティ豊か。突然出現する佐野史郎は「デビルスピーク」っぽい。マッチョアスリートみたいな秋元もなかなか目の保養であった。
知ってる顔(俳優)と知らない顔を自在に組み合わせて、互いに反映し合う三つの挿話をゆったり描きだす。微妙にくすっと笑えるシチュエーションがある一方で、奥さんを通り魔に殺されて生活破綻しちゃう男と、友人の子どもにいたずらしたと誤解されてしまうエリート弁護士のエピソードが切ない。挿話によって同じ人物の異なる面が現れる感覚はアニエス・ヴァルダの「冬の旅」の線だね。長さの魅力は認めたいものの、この長さは野心のから回りでもある。おしっこの場面が素晴らしい。
時代は違うが「フィッシュストーリー」からやってきたみたいな渋川清彦の雰囲気が良い。物語自体よりもキャラの魅力にじわじわと迫っていく演出が魅力的。バンドに専念するためにバイトを辞める、というあんちゃんのことを誰も最初よく分かっていないわけだが、渋川の視線を観客も共有することで色々なことが見えてくる。このあんちゃん、渋川のへまをこっそり解決してくれたり、芸が細かい。どろどろした耳垢も凄い。横恋慕という難しい主題をキュートに扱える監督の力技に拍手を。
〝頭〟が高いの何の。いくらドラマの視聴率が高かったといっても劇場版の場合、基本的設定やキャラクターなどはそれなりに説明すべきなのに、この「MOZU」、いきなり始まって、いきなり語り出し、ドラマを知らないこちらは、ナニこれっ。いや、それを言えば映画のほとんどはいきなり話が始まるのだが、本作の場合、ドラマの続篇のように作られているので、これでは頭が高いとしか言いようがない。しかもどうにか人物や背景に追いついても、虚仮威しの場面が延々、勝手にやって!!
雨宮慶太のダーク・ファンタジー『牙狼〈GARO〉』シリーズは、設定やキャラクターは変わっても、いつも悪と正義、光と闇が反転、反復し、何やらアレンジだけ変えた同じ歌の繰り返しのような。今回は人間界をベースにして、心が病んだ魔戒法師狩りを任務とする媚空の行動を、アクションとサイケデリックな映像で描いていくが、雨宮世界特有の禅問答的流れはともかく、媚空役・秋元才加のロボット並みの硬直演技とアクションがいささか味気無く、睨み顔からしてワンパターン。
3人の人物とその周辺のエピソードは、まさに〝現代日本〟の丸かじり。橋口監督は、道ですれ違っても誰も気にとめないような3人(正確には2人で、もう1人に関しては監督自身も突き放して描いている)の思いと行動を、彼らの息使いまで聞こえるように丁寧に描き出し、ディテールの細やかさも素晴しい。通り魔に妻を奪われたアツシの仕事が橋梁の点検というのも暗示的で、一見安全で平和そうな日本もたたけばあちこちで見えないヒビ割れ。でも見上げれば青空も……。本年度の最高作。
もう、渋川清彦ったら、またウダウダ、グダグダの役なのね。むろん、彼はいくつもの作品でさまざまな役を演じていて、「アレノ」では濃いセックス演技も見せているが、「お盆の弟」ほかの、どうってことのない日常の中でゴロゴロしている役が妙に似合うのも事実で、特に今回の、タバコばかり吹かして仕事などほとんどしない自動車の修理工役はピッタリ。そんな渋川が主役だけに、作品もとりとめなくウダウダ、しかも誰もがいつでもタバコをふかしている。ゆるいのはいいが、それだけでは。
TVシリーズ未見のまま観ると、あまりに西島が不死身のヒーローなので驚いたが、派手な見せ場から見せ場へと繋ぐことを命題にした〈急〉ばかりで〈緩〉が事件解決後までないのが難。その〈急〉を形成する爆発なども日本映画にしては派手なぐらいでロケットランチャーを走行する車から発射するなら、発射から着弾まで1カットで見せて欲しいもの。「ピース オブ ケイク」同様、松坂桃李は振り切った役の方が似合う。 しかし、長谷川博己とのカラミは2人して過剰さが過ぎて苦笑。
昨年のTVドラマ『戦艦大和のカレイライス』あたりから一皮剥けた感のある秋元だが、本作でも彼女の身体性と虚構に向き合う真剣な表情が世界観を一手に背負い、「牙狼〈GARO〉」の延長上に位置する設定なので、とっつきにくい部分を補ってくれる。こんなにも特撮と相性のいい女優とは思わなかった。監督はスタントマン出身かつガメラやイリスに入っていた人なのでアクションとVFXの配分も申し分ないが、秋元や須賀の生身の動きが魅力的だけに、CGが興をそぐ面もあり。
今年の私のベストワンです。作者が登場人物を不幸の谷に突き落として嘲笑っているような日本映画ばかり観ていると、映画とはこんな卑しいものなのかと絶望しそうになる。不幸な状況に主眼を置くのではなく、それでも生きていく人の感情を描くことが映画なのだと救われるような思いで本作を観た。恋人を失い、あるいは失いかける中で、日常は灰色になりながらもそれでも続く。そこに正論の様な顔をして向けられる悪意も巧みにすくい取られているが、それは今この国に蔓延する空気だ。
ヘラヘラしつつ、そこに哀しみとおかしみを抱え持つ中年になりかけの男を演じさせれば、今や渋川清彦の独壇場だ。本作でも自由に生きる若者に羨望の眼差しを向けながら、愛想笑いを浮かべて冴えない自分をカッコ良く見せようとする渋川の哀愁がたまらなく良い。学生の卒業制作として扱うには監督のキャリアは異例だが、油の匂いと冬の冷たい空気を充満させた自分の見たいものだけで専有した等身大の世界を作り出し、従来の俳優・音楽業出身監督とは異なる才能の誕生を予感させる。