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かなりウェルメイドに作られている。時代を交錯させ、章ごとの展開が事件を複雑化させる。徐々に加害者と被害者の周囲をめぐる人間関係が露呈し、一連を見届けた鑑賞者がきちんと納得できるように事件は帰結する。それゆえに、少しちゃんとしました感が強い。この人がこうなって、これとこれが繋がってといった、人物相関図を作りたくなるような映画。そうなると「なるほど。よくできたクライム・サスペンスとして、最後まで飽きずに見終えました!」と発展が難しくなってしまう。
世界的スーパースターにはさまざまな事情がある。マスメディアはそれを暴くことを試みるが、切り取ることのできない一面が存在する。恋愛事情を追いかけようとするも、愛の具体的なかたちや中身は知ることはできないのだ。メイとジョンの間に確かな愛があったことを明らかにし、失われた時間はやはり存在したことを再確認するために、一つ一つの記憶から手繰り寄せて制作したように見えた。それにしては(あえてかもしれないが)、観客と共有できる具合にポップに再構築されている。
レゲエとソウルが体に染みている私にとって最高の映画。偉大なミュージシャンの魂を描くときに必要とされるのは、その生き様を限られた時間のなかでどう映すか。本作ではボブ・マーリーの“笑顔”が印象付けられている。その瞬間を見逃していなかった。それだけで涙できるのだから、充分だ。ドキュメンタリー含むボブ・マーリー関連の作品はすべて良い。そう、何があろうとも世界は"one love"だから。エンドロール、彼の鼓動に合わせたリズムに自然とからだが動いてしまった。ラスタファリ!
見る人を選ぶ。クレール・ドゥニかドニ・ラヴァンのファンか、もしくはフランス映画史を愛する人など。そうでなければ、まずこの大胆さと繊細さを楽しむことができないと思う。軍隊を中心に置く作品を「集団映画」と勝手に呼んでいるが、(例えば「フルメタル・ジャケット」とか) 総体的な意味での整列から個の乱れを描く。本作は肉体的な反応に目が向けられ、理解よりも先に生々しい感覚を獲得できる。あらすじから決して想像できないように魅せ、一筋縄ではいかないのがクレール・ドゥニ。
2021年のロシアの映画製作がどういう状況だったかはわからないが、古今東西のさまざまな映画をきちんと学んだ人が撮った作品という印象(ちなみに監督はジョージアとウクライナにルーツがある人らしい)。手のこんだ構成とこだわりの映像で、いつの間にやらぐいぐい引きこまれる。これと同様に実際の事件に想を得たポン・ジュノの「殺人の追憶」もそうだったが、捜査と並行して警察組織の堕落が描かれる趣向で、ソ連時代が舞台とはいえ、権力こそが狂っているのだという痛烈なメッセージが。
ジョンとヨーコが別居していた期間は「失われた週末」と呼ばれているそうだが、いったい誰にとって「失われ」ていたというのか。この時期を彼と過ごした女性がみずから口を開き、さまざまな誤解を解く。ジョンの先妻も現妻もからむ複雑怪奇な関係もさることながら、ビートルズの元メンバーからM・ジャガー、D・ボウイまで登場する活気ある日々はまぶしいばかり。ジョンの人物像と愛の物語が、豊富な映像資料でテンポよく語られる。でも、悪役にされてしまったヨーコにも言い分はあるよね。
音楽伝記映画として飛びぬけた出来というわけではないし、演奏されるマーリーの曲がほぼすべて彼本人の音源から取られている(つまり口パク)のが、「ボヘミアン・ラプソディ」あたりと違って正直上手くいっていないように見えたりするのだが、ラスタファリズムをごまかさないでちゃんと描いているあたり誠実な作りだと思う。バックステージもの好きとしては、楽曲が生まれるプロセスを描いたシーンががぜん面白い。マーリー夫妻を演じるふたりに魅力があり、ボブ以上に妻のリタに興味がわく。
いまごろわたしごときが褒めてもかえって作品に失礼なんじゃないかと思えて申し訳ないのだけれど、やっぱり褒めないわけにはいかない。故郷を離れた男たちの特殊な場に監督が向ける視線や、嫉妬の研究といった面も重要だが、それ以上に、一つひとつのショットの美しさと生々しさ、およびそのつながりが生み出す生々しさ、画面から独立して機能するナレーションなど、すべてが思考と感覚を触発する。あと、すでにネットミームになってるらしいけどやっぱりドニ・ラヴァンの突然のダンスは必見。
旧ソビエト連邦での52名を殺害した連続殺人鬼をモチーフにしたサイコスリラー。熱血捜査官が容疑者を逮捕したところですべてが解決したかと思いきや事態は思わぬ展開を見せる。監督したラド・クヴァタニアはCFやカニエ・ウェストのMVなども手掛けるだけに技巧派で、凝った編集もあり最後まで飽きさせないが、策士策に溺れるならぬ技巧派技に溺れる的なトゥーマッチ感。画作りと技巧性ではフィンチャーを想起させるが、フィンチャーのような洒落っ気はなく、ロシア的鈍重さが画面からのしかかる。
ジョン・レノンがオノ・ヨーコと別居していた18カ月間の時期にレノンと同居していた中国系アメリカ人メイ・パンの証言で描く新たなレノン像のドキュメンタリー。彼女の赤裸々な証言で語られるレノン、マッカートニーから多くのアーティストの私生活が新鮮で、ロック史が少し塗り替えられるインパクト。貴重な証言映像、プライベート写真に加え、アニメを効果的に使った映像編集も見事。ただし、あくまでパンの視点であり彼女に都合よくまとまりすぎではと。オノ・ヨーコがこれを見たら怒り狂う予感が。
レゲエの巨人ボブ・マーリーの絶頂期を描いた音楽映画。いわばレゲエ版「ボヘミアン・ラプソディ」を狙ったと言えるが、残念なことに肝心のライブの描写が、楽曲に当て振りしているだけなので全然盛り上がらない。また群衆CG技術を多用しており、これまたCG感が強くて醒めてくる。「ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド」という傑作ドキュメンタリーが既に存在しているだけに悲しい。それでもマーリーの楽曲には突き動かされるものがあるので、楽曲力に星ひとつ追加。
仏クレール・ドゥニ監督の未公開作で、アフリカのジブチにおける外人部隊の訓練の日々を描く。主人公の指揮官をカラックス作品で知られるドニ・ラヴァンが演じ、新入りの兵士との複雑な愛憎が物語の軸になる。アフリカ、外人部隊、ラヴァンといい材料が揃っているのだが、映画は極めて単調に展開する。ラヴァンならではのシーンが随所にあるが、エンディングを含めて彼の役者力に頼りすぎで脚本の詰めが甘い。退屈なポエムのような脚本を作家主義と見なすフランス作家主義映画病の典型。