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まるでYouTube動画のような、同ポジのまま短くつまむ独特の撮り方、編集に、はじめ戸惑った。しかし、宇宙人の手がかりを探す旅が始まると、一気に世界が広がっていく感覚があって、あの編集は日々の閉塞感を表していたのかもしれないと思った。設定も現実感がないし、旅の中で人間関係が深まるわけでもなく、それぞれの人物のこともあまりわからないままなのに、なぜだか写っている人々の皆に切実さが感じられる。YouTube的表現と映画的抒情が混ざって生まれた、現代のSF。
ずっと平熱のままという感じがする、不思議なスパイ・アクション映画。最新のハッキング技術やAIがモチーフとして多用されるけど、なんだか少し胡散臭かったり、捜査に協力させられる有名俳優の素顔が、どことなく自信なさげなのも、スパイ映画の定石を踏んでいるようで、まったく別の解釈をしているような感じがした。爆発もカーチェイスもあるけど、ラブロマンスはなくて女性スパイが格好良いのがよい。絵空事のようなスパイ映画だけど、アクションする肉体は真実味を帯びていた。
9.11から数年経ったアフガニスタンを舞台にした、テロ組織と韓国政府の取引を描くサスペンス。実現するのが難しいだろう設定なのにもかかわらず、無理を感じない撮り方がされていることに驚く。凄腕の工作員役は、『愛の不時着』のヒョンビンなのだが、あくまでスターとしてではなく泥臭い人間としてそこにいる。私はなんと途中までヒョンビンだと気がつかなかった。わかりやすい損得を用いた論理的な交渉ではなく、もっと複雑な心理戦としての戦いが描かれていることに痺れた。
ジャンルとしてはフェイクドキュメンタリーなのだけれど、映像や芝居の質感からはじめ劇映画だと思ってしまった。しかし、ふいに監視カメラや、ペットカメラなどの定点映像が挟み込まれたときにその領域が溶けていく。次々と不可思議なことが起きるその現場に、カメラを持ち潜入するが、その彼らを撮っているカメラがあり、過去のビデオの視点はまるでこちらを見ているよう。現実がどこなのか迷子になるくらい複数の映像のレイヤーが敷かれ、その間をイメージが媒介していくようだった。
『三体』以後、中国産SFがブームだが、こんな愛すべきSF映画の珍品がつくられていたとは驚きだ。あまりに低予算の素朴な手づくり感、巧まざるすっ惚けた笑いは「不思議惑星キン・ザ・ザ」を彷彿させる。メランコリックなUFOオタクの主人公の怪しい磁力に引き寄せられるように旅の途上で奇人・変人がゾロゾロ登場してくる。中国辺境最深部の鄙びた景観が次第に〈異界〉の様相を呈してくるのも見所である。高度経済成長とは無縁な敗残者たちが抱いた夢想の顚末はなかなかにほろ苦い。
ガイ・リッチーは少年時代に「明日に向って撃て!」を見て映画を志したが、劇中であからさまなオマージュを捧げているシーンがあり微苦笑を誘う。そんな遊び心、ユーモアが随所にあり、最近の末梢神経を刺激するだけの大味なアクション大作が目立つJ・ステイサムの中ではかなり楽しめる。冒頭からマクガフィン風に登場する“ハンドル”なる謎のアイテムをめぐるハイテクによる攻防戦もいかにもイマ風ではある。ロマ・コメで鳴らしたヒュー・グラントが演じる悪役ブローカーが笑える。
辣腕ネゴシエーターの丁々発止の暗躍を描く映画は少なくないが、2007年にアフガニスタンで起きたタリバンによる韓国人23名拉致事件をヨルダン・オールロケで撮ってしまう今の韓国映画界の胃袋の大きさにはいささかたじろいでしまう。人質が2名射殺とほぼ史実通りのプロット、そしてタイムリミットの設定による緊迫感の醸成。イデオロギーを脱色させ、タリバンの酷薄さを露わにさせつつ、エリート外交官とはぐれ者の工作員のバディ・ムーヴィーとして成立させる王道の語り口には感心する。
昔、映画批評においても疑似ドキュメンタリー・タッチの功罪が俎上に載せられたことがあるが、この映画は既存のフェイクドキュメンタリーの手法を駆使したホラーの欠点が露わにされている印象が否めない。おどろおどろしいナレーション、呪いのビデオテープ、そして謎めいた祈禱師の出現と加害者に憑依し狂っていくヒロイン。手持ちカメラのぶれた映像と主観ショットの濫用etc。いずれも迫真的なリアリティを出そうとして、かえって喪失させてしまっているように思えてならないのである。
「トンソン荘」とともにフェイクドキュメンタリー風だが、目撃者たるカメラの位置付けは厳密ではない。宇宙への幻想が失われた21世紀を生きる心優しき宇宙オタクのオヤジが未知との遭遇を求める旅を追う。謎解きの情熱もまたひとつの愛のかたちだから、夢見心地の狂気に誘われもするし、時には実存的な不安を伴う。合理的な時代性に反した情熱との折り合いは面白いテーマだが、中年男の夢の珍道中に付き合う仲間たちの悲喜こもごもは、演出と演技に退屈して、ぼくには間が持てなかった。
「ジェントルメン」「キャッシュトラック」に感心したガイ・リッチーの新作。後者で組んだジェイソン・ステイサムの映画は粒揃いだし、前者で組んだ近年のヒュー・グラントは突き抜けている。ウェルメイドな娯楽職人の少ない昨今にあって、つい観てしまう貴重な英国の人材。今度の出来は前作よりも平凡だが、収穫はオーブリー・プラザで、スクリューボール・コメディ的な演技センスが光っていた。今月の他の3本とは違って、リッチーとステイサムには「型通り」にも「芸」があるといえる。
2007年のアフガニスタンでイスラム過激派が韓国人キリスト教宣教師グループを誘拐、この人質事件をめぐる外交官と諜報員の奮闘を描いた社会派娯楽作。センセーショナルな題材だが、タリバンと拉致被害者への洞察に欠け、すぐに古めかしいパターンを踏襲したヒーロー物語に変わる。アクションスリラーに新たな個性を加える演出の飛躍もないし、カン・ギヨンとヒョンビンの熱演にしても後半に進むほど平板なものとなる。堅いことを言わずに楽しめる場合もあるが、ぼくは興醒めしていた。
この星取りレビューでは依頼された作品を見るので、ほぼ予備知識なく向き合うのだが、これは殺人現場もの、呪われた事件の調査・考察もののフェイクドキュメンタリーであった。余程のアイデアでもない限り、この手はしばらくもういいのではないかと感じているが、しかし、パターンの中の違いを楽しむジャンル映画なので、門外漢にとやかく言われる筋合いはないともいえる。映像は洗練されているが、その分だけ“フェイク”としてはありきたりなのであって、何よりそれほど怖くはないのである。