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ビートたけし原作、二宮和也主演、そして監督は快作「鳩の撃退法」のタカハタ秀太とくれば、否応なく期待が高まるというもの。実際、シンプルなラブストーリーとして好感の持てる佳作に仕上がっている。でも正直、この組み合わせならもっと手に汗握る別企画を観てみたかった。前作で冴え渡った監督兼任の編集ワザも、今回はおとなしめ。広尾近辺をテリトリーにする「そこそこ生活に余裕のある」主人公なんて興味も共感も抱けないと思ったが、二宮和也の嫌味のない好演はさすが。
あらゆる多様化についていけない、アップデートできない世代の悲哀を描いた諷刺コメディ……にしたかったのかもしれないが、アップデートできてる側との対等な相対化がなされないので、学びも成長もなく、総じて自己憐憫と開き直りに終始する。加えて、ドラマ版で全部やりつくしたのに無理やり作った劇場版の典型のような、弛緩した構成も苦痛。これだけ当代一の人気俳優を揃えながら、ちっとも面白くならないのは逆にすごい。「だから映画って嫌い」とドラマファンにも言われそう。
この題名なので、J社の自浄努力も大したものだと思ったら、そういう話じゃなかった。誘拐犯に脅迫された大物政治家が己の罪を告白するという内容だが、現実のドス黒い醜聞を考えると、罪の中身が弱い。それよりも、人質救助よりスリリングに描かれる免罪工作、当然のように行われる世襲政治、警察やマスコミと結託した情報操作、不正取引の情報提供者への暴力的恫喝、そして弱者を加害者に設定する無神経さに対し、さして問題視しない作りに背筋が凍った。実に現政権らしい一作。
映画公開の頃にはコロナ禍も終わるだろうと考えた楽観性(あるいは希望)は否定するまい。とはいえ先日発症済みの身としては、感染者が1人も登場しないのに「今の世界を描いた」ような態度はいかにも視野が狭い。そして中盤以降の家族のドラマとも無関係すぎる。主人公の新人監督が悪辣なプロデューサーに「人間をもっとよく見て」と再三言われるのは、作り手の実体験か、恨み節まじりの自虐か。物語が進むにつれ「俺もそう思う」と頷いてしまうのは、敵役に同調するようで悔しい。
それにしても、男の真っ直ぐな純情を真っ直ぐに描いたこのメロドラマがビートたけしの原作とはいささかこそばゆい。喫茶店での出会い。ちょっと儀礼的な会話。偶然再会して一緒に飲むコー匕ー。他愛ないお喋り。彼は週1回の逢瀬を重ねる中で彼女への思いを深めていくが、彼女は自分のことは一切語らない。後半に明らかになる彼女の過去と現在は、かつてのハーレクインロマンもかくやだが、ゆったりした丁寧な演出が話を引っ張り、飽きさせない。友人役の桐谷健太と浜野謙太がいい。
映画というよりは、人騒がせなゆとりキャラ三羽烏に、流行や世相、国籍や世代の違いなどを絡めた連携プレイ仕立てのテレビコント集でも観ているよう。当然、俳優陣の演技もテンション高めの上っ面。むろん、脚本の宮藤官九郎も、水田監督も、あえて上っ面路線でシニカルな笑いを狙っているのだろうが、土下座や小学生たちの大人顔負けの正論など、かなり悪ノリ。ゆとり世代には女性もいるのに、ボクたちだけでドタバタして、だからなのか、見終わっても何一つ残らない。
政治家の因果が家族に報い! 孫を誘拐された国会議員を巡るサスペンスで、背景には過去の利権絡みの裏取引などがあり、保身と打算に走る政治家たちの醜いエピソードも。むろん警察もマスコミも役に立たない。そんな中、僕らは望んで国会議員の子どもに生まれたわけではない、という次男役の中島健人が、誘拐された姪っ子のために走り出すのだが、そのわりに緊張感が希薄なのは、誘拐事件より、政治家情報が多過ぎるからか。とはいえ伏線はあるにはあるが、犯人は確かに予想外。
“映画の映画”も時と場合で進化(異化?)する。愛にイナズマなら、カメラは雷鳴? いや、雷鳴は大袈裟だが、連作短篇ふうな章立ての進行と、ベースの映像に主人公たちが手にするカメラの映像を交えた演出は、余裕とユーモアがあり、章ごとの切り上げかたも小気味いい。オリジナル脚本で監督デビューするはずだった花子の無念の頓挫。調子のいいプロデューサーや、鼻持ちならない助監督はパターンだが、実家に戻っての後半は花子のキャラも一転、カメラももう嘘は許さない!
携帯電話を持たないヒロインという設定は、携帯時代の作劇を解放するようで結局は古めかしくなる。しかしながら、アナログだからといって大仰な描写や、古めかしい女性観には向かわず、難病催涙映画との差異が際立つ。抑制した台詞と演技も一貫して揺るがない(アドリブめいた描写は余計だが)。二宮が絶品なのは当然として、映画では違和感があった波留が感情を押し殺した役どころも相まってベストアクトの演技を見せる。「HANA-BI」「Dolls」への返答ともいうべき佳篇。
ドラマ版は未見ながら、映画に親しい俳優たちがクドカン脚本でワチャワチャする姿を見るうちに、すんなり坂間家へ入り込めてしまう。柳楽が自由奔放に振る舞い、安藤が強烈な磁場を発揮する。それをすべて受け止める岡田、松坂も見事。過剰なまでに今の風潮を取り入れた作劇は、後世に2023年の時代感を伝えるのでは。若者にウザがられる年齢になった世代が、若者ぶることと、精神的な若さを維持することの差異を鮮やかに映し出す。2作同時期公開される水田監督、本領発揮の一本。
「悪い奴ほどよく眠る」+「天国と地獄」を思わせるポリティカル幼児誘拐サスペンス。犯人側を終盤まで一切見せず、正義と倫理で要求を突きつけてくる無機質な存在にしたのは現代に相応しいが、古典的な犯人像に収拾されていったのは不満。重要な役どころが、配役の比重によっておおよその見当がついてしまうものの、しっかり者のようで抜けたキャラを演じさせれば右に出る者がいない中島歩が今回も良い味を出していたり、報道記者役の美波が意外な存在感を出すなど配役の妙が際立つ。
過剰な設定と、カリカチュアされたキャラクターに乗れるかどうかに尽きる石井作品。若手女性監督が自作を奪われる過程が、これでは監督交代もやむなしに見えてしまう(嫌な助監督の三浦貴大が絶品)。粗雑で語彙もないが、それでも映画が撮りたいが見えてこない。主人公が周辺にカメラを向けるときの暴力性に無頓着なのも引っかかる。生き別れの母の顚末を携帯で聞くだけで済ませてしまうのは、糸電話や日記を駆使する「アナログ」と続けて観たこともあり、思うところ多し。