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リンクレイター作品は、緻密さと風通しのよさの両立ぶりにしばしば感嘆させられるのだが、これもそう。彼と組むことでケイト・ブランシェットが実現した人物像も素晴らしいし、にもかかわらず彼女ひとりが場を制するのではなく、共演陣と有機的にからみ合っているのもとてもいい。追い詰められたバーナデットが、意外な(でも確かにこれ以外ない)相手に救いを求めてから先は、涙なしでは見られないと同時に、冒険の予感で俄然心がわき立つ。あと、建築ファン目線からもたまらん映画。
特殊能力を持つシスターが、神を信じない米国出身の黒人シスターをバディにして、悪魔の居場所と目的を探る前半はミステリ映画のような面白さ。中盤からは魅力的な女たちと少女が力を合わせ、勇敢に悪魔と闘う。人物設定は観てればわかるので前作を知らなくても大丈夫。完全にアクション映画と化す、やり過ぎ気味のクライマックスも面白いが、この映画はファーストショットをはじめとして俄然気合の入っている画面が多く、とりわけ、夜の雑誌スタンド前のシーンが異様に素晴らしい。
「GODZILLA ゴジラ」で渡辺謙に広島の惨禍を語らせたG・エドワーズは、今度はいきなりLAを被爆都市にしてみせるのだった。太平洋戦争の影もちらつくが、それ以上にヴェトナム戦争のイメージが強烈に引用され、観客を「ニューアジア」の側につかせる。わたし好みの要素の多いストーリーなのに、繰り出されるアジア的意匠(ブレラン的渋谷もあり)の大量さが物語るとおり、一本の映画にこれは盛りこみすぎだろうという感じで、ダイジェスト版みたいにせわしなく見えるのがもったいない。
事態がどんどんと混沌としていく序盤と、主人公の自作自演をこちらも疑ってしまいそうになる事件後の悪夢的展開を観ていると、たぶんユペール様が主演しているせいなのだけど、クロード・シャブロルだったらこれをどんなスリラーに仕立てていただろうかとも想像してしまう。それはともかく、ゴリゴリの政治サスペンスとして展開されるかと思いきや、最終的には女性の立場の弱さが印象に残る。「過去に性暴力を受けた、あるいは精神的に不安定である女の弱み」が狙われたという卑劣さ。
天才建築家と称された過去を持つ主婦バーナデットが極度の人間嫌いをこじらせ、突然南極大陸への旅に出る。主演ケイト・ブランシェット×監督リチャード・リンクレイターという魅惑のコラボはさぞや新たなワンダーを生み出すのではと予想していたのだが、映画は互いの良さを引き出すことなく、南極大陸の壮大な映像に救われながらも、凡庸な仕上がりだ。ブランシェットが地で演技しているかのようなフラットなキャラは、映画も彼女も活かさない。まさに「映画自体が行方不明」になってしまった。
前作「死霊館のシスター」の続篇で、仏女子寄宿学校を舞台にした善と悪のシスターの対決を描く。ほとんどが不気味な寄宿学校での夜のシーンとなり、何が起きなくても怖い設定の中、ジェットコースター的に恐ろしいことが次々と起きる。エクソシスト系ホラー映画ジャンルを徹底的にディープラーニングさせて生成AIで作ったかのようなマーケティング的/優等生的ホラー。つまり、そつがなく、映像お化け屋敷としての完成度は高いが、作家主義的な美学やエモーションがない。
人類とAIが戦争を繰り広げる未来を舞台に、AIの中心にいる「クリエイター」の暗殺を命じられた主人公と「クリエイター」と称される少女の形をしたAIとに芽生える絆を軸に物語はダイナミックに展開する。監督ギャレス・エドワーズのオリジナル脚本で彼が愛するさまざまな映画――「AKIRA」「地獄の黙示録」「スター・ウォーズ」――の要素をふんだんにちりばめながらもパロディではなく格調高い仕上がりで、新しい世界観を提示しているのが素晴らしい。映画史に残る新たな傑作の誕生だ。
名優イザベル・ユペールが仏原子力企業の労働組合代表を演じる、実話を基にした社会派ドラマ。内部告発者となった彼女が自宅でレイプされるという事件を自作自演と扱われ、圧力に屈することなく無罪を勝ち取るまでの話を描く。原発問題という日本人にとって他人事でない題材を、映画は精緻なリアリズムで描く。ただし事実に寄り過ぎて、映画はあまり起伏ない展開に終始する。ユペールの演技は卓越の極みで、映画祭で本作が上映されれば、間違いなく主演女優賞に推すだろう。
天才建築家でありながら職を捨て、創造しない日々を送るバーナデッドをケイト・ブランシェットが実に魅力的に演じている。彼女の語りはいつだって耳に心地良い。隣人オードリー役のクリステン・ウィグも素晴らしく、二人のセッションは緊張とユーモアの綱引きを見ているかのよう。行きたくなかった南極に自ら飛び込むことで自己を再発見する展開にカタルシスを味わえる一方で、夫の無理解が南極での再会によって何事もなかったことにされるのは少しご都合主義ではないかなと思ったり。
1950年代のフランスで繰り広げられる、シスター・アイリーンの悪魔退治。アイリーンとデブラ、女性二人の共闘には勇気づけられるし、安易にラブストーリーに落とし込まず、モーリスとはプラトニックな友情で結びついているのにも好感。ステンドグラスの羊の目が聖ルチアの目を探し当てたり、その羊が飛び出して暴走したり、ビジュアルで圧倒しようという気迫は存分に感じられるものの、モチーフが多すぎる上にそれらが有機的につながっておらず、もやもやが募ってしまった。
昨今頻出している、ありがちなAIものかと思って見ていると、別次元にいざなわれる。「ブレードランナー」に「ポネット」的世界観が滲出したような。AI版ポネットともいえる少女役に本作で俳優デビューを果たしたというマデリン・ユナ・ヴォイルズを配役した時点で優勝。ラストのあの神がかった表情、その示唆に触れるだけでも一見の価値がある。AI対人間の対立が次第に、人間対人間あるいはAI対AIに展開するにつれ、「AIも人間も結局は同じ」という台詞を反芻することに。
労働者の雇用を守るため奮闘するバリバリキャリアウーマンのモーリーンが、自身のレイプ事件には戦力を失う姿にリアリティを感じた。この手の社会派となると熱演を期待してしまうが、脱力気味に淡々と演じるイザベル・ユペールが新鮮。裁判官に矛盾を指摘され、反論する気力もなくただ涙を流すしかない彼女の、やり場のない思いがじわじわと伝わってくる。奪われた言葉を最終的に取り戻す復活劇に静かな感動を覚える。派手な盛り上がりはないけれど、地に足がついた良作。