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「リング」公開から25年、いまだに同じものを期待されるのはさぞつらかろう……と思って観ていると、まるで白石晃士監督のお株を奪うかのようなオカルト怪物ホラーになるので驚いた。シソンヌ長谷川忍演じる霊能者のキャラクターがめきめき立ってくるあたりから映画は暴風圏内に入り、ジャンルの先駆者的イメージなど自ら踏みにじるような演出に振り回される。亡霊ならぬ暴霊=ファーストサマーウイカの進撃にも目を見張るが、いちばん怪物性を感じるのは中田秀夫監督その人だ。
キャラクターを我がものにした菅田将暉の芝居は見ていて楽しい。顔のアップ濫用がやや気になるが、アイドル映画としては正しい作りだろう。劇中のセリフで「犬神家の一族」を引き合いに出すのもハッタリにあらず。軽妙な定石外しと、意外に重たい因襲劇の合わせ技で、ミステリとしても楽しませる。もちろん映画的なサムシングなど求めず、素直に人気ドラマの延長として向き合える人が、いちばん楽しめるであろう一篇だ。ただし事件解決後のくだりは、悪い意味で最近の映画的に長い。
あの大人気マンガの満を持しての実写映画化だが、やっぱり「なんじゃこの話」としか思えない荒唐無稽さは変わらず。快作「ハケンアニメ!」の吉野耕平監督だから、突飛なストーリーもテンポよく多角的に見せ、各方面の思惑が交錯する憂国ポリティカル軍事サスペンスとして飽きさせない。充実の出演陣のなかでは、ヤバい目をしたタカ派の防衛大臣役の夏川結衣が絶品。VFXを駆使した海中戦が見どころだが、それより潜水艦自体のフェティッシュな描写がもっと観たかった気も。
90年代に原田眞人作品を追いかけた身としては、ただただ嬉しい犯罪映画。地べたを這いずる小悪党が勝負に出る、そして大いに追われ、逃げる、監督得意の作劇に高揚。それをまた、原作の設定を変えてまで女性を主役にしたのも英断。安藤サクラの醸す「しぶとさ」に胸踊り、サリngROCKという新鮮な才能との出会いも嬉しい。関西弁のセリフの応酬も小気味よく、場所によっては他県にセットを建てたという大阪描写もムード満点。瑕疵がないとは言わないが、好きが全部上回った。
事故死したはずの理不尽な存在に取り憑かれてしまった橋本環奈の、恐怖演技百態?! 探偵役を兼ねているのがミソか。彼女の元同僚の妻子に起こった悲劇からスタートするのだが、子どもが唱える呪文とか、仰々しい禱祷師とか、あれやこれやのエピソードがみな唐突で、終盤に明らかになる奇っ怪な教祖との因縁など、後出しジャンケン並み。そして呪われたライター。当時好意を抱いていた元同僚に彼女が贈ろうとしたモノだが、喫煙者が嫌われる現代にライターとは、何考えているんだか。
原作の漫画はドラマ化もされているそうだが、この作品、物語的な設定からして、アララ、市川崑監督の“金田一耕助”シリーズの、中でも一番のヒット作「犬神家の一族」の二番煎じもかくや。キャラクターだけではなく、一部、演出までヌケヌケと模倣している。石坂浩二が演じる金田一はフケが飛び散るボサボサ頭で、こちらの大学生探偵は天然パーマだが、遺産相続を巡る一族の足の引っ張り合いも共通する。と中盤までかなりシラケて観ていたのだが、ドッコイ、後半の展開にはアレヨ、アレヨ!
この長大な原作漫画を、人物やエピソードの省略は当然としても、よく2時間弱にまとめたものだと、まずそのことに感心する。世界の核保有国に向けた大胆不敵な海江田四郎の海底からの挑戦。場面の半分近くを海図や戦艦絡みのデータ、さらに専門用語や会話によるやりとりが占め、いわゆるアクションは皆無。けれども製作にも名を連ねている海江田役・大沢たかおの、すべて計算済みと言わんばかりの自信に満ちた演技が力強く作品を引っ張り、絵空事とは別の実感がある。吉野監督に拍手を。
原田監督の前作「ヘルドッグス」は、キレのいいアクションと遊びごころのある演出が際立っていて、ハラハラ、ニヤニヤ、大いに楽しんだが、今回はニヤニヤ的な場面はほとんどない。演出もストレートで、主演の安藤サクラも前屈みでツンのめるように動き回っている。大掛かりな特殊詐欺グループのメンバーで、弟がいる。そんな彼女が組織の裏をかこうとしたことから、出口なしの状況に。その過程で見えてくる彼女の生まれ育ちが壮絶で、観ているこちらも前のめり。そして嗚呼、弟。
そのまま撮れば「ペット・セメタリー」になりそうな話を、笑いと恐怖が紙一重であることを熟知した中田秀夫が緩急ならぬ〈笑恐〉をちりばめる。日本幽霊顔のウイカを、身体性を生かした動きで怖がらせつつ、極端に猜疑心を持つ設定で笑わせる。シソンヌじろうの俳優としての才は認識していたが、長谷川が丹波哲郎クラスの怪優ぶりを発揮するとは。すべて受け止め猪突猛進する橋本と、被虐がエスカレートして狂気に達する重岡も良い。息子が生まれたばかりの身には後半は辛すぎましたが。
ドラマ版未見で予備知識なしで観ても問題なし。横溝正史パロディとは一線を画し、「犬神家の一族」を導入に用いて(06年版「犬神家」のキャストも登場)、似て非なる着地点へ。事件と謎解きが映画でやるスケールが不足だとか、一族の名前をテロップで出す非映画的な見せ方に引っかかるが、菅田の茫漠とした雰囲気とボソボソした喋りが魅せる。市川崑版「悪魔の手毬唄」を思わせる入浴シーンを見れば、菅田に金田一役をという願望が高まるが、本作での充実ぶりを見れば余計なことか。
現実の急速転換を前にするとリアリティより虚構性のみが浮上。結果、大沢・玉木への依存が強まるが、2人の演技を惚れ惚れと眺める分には満足。両者が切り結ぶ場面が平板だったのは残念だが。大沢は三島的な雰囲気が出せるだけに思想を垣間見せてほしかった。米国政府の動きを日本映画的なサイズで見せるのは苦しく、わが国の政府描写は「シン・ゴジラ」感が強い(夏川結衣の防衛大臣が余貴美子と酷似して見えるのは“名美”つながりか)。最後は、ここで終わり?と声が出そうに。
毎回原田映画を好ましく観つつ、カットが細かすぎる編集、脱線しすぎる挿話、情報量過多といった近作の不満が一掃され、Vシネマ時代が甦ったよう。ヒロインの逗留地として大阪を描き、ここではない世界へ向かおうとするのは渋谷を描いた傑作「バウンス」と同様だが、安藤の身体性を生かした撮影が大阪の空気感を作り出す。大胆な配役は相変わらず素晴らしく、天童よしみまで良い。未知のサリngROCKの存在感にも圧倒。原田組最古参の宇崎竜童が見事な老いを見せ、助演男優賞確実。