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物語の枠組は、当然ながら、前作と変わりはない。だが、松坂桃李演じる手塚彗という男の言葉が、ある種の説得力をもって人を動かすところが、検閲の実行部隊である良化特務機関の暴力で見せた前作とは違った膨らみを与えている。本を守る図書隊の行動など、誰も関心を持ってない、というときに、交差点で信号待ちする人々を捉えたショットが入るが、これには、現在に通じるリアルさがあった。ただ、誰のために本を守るのかということに、一歩踏み込んだ答えを示せない弱さはあるが。
本作の目的は、『サイボーグ009』と『デビルマン』、それぞれのブルーレイ発売のためなんだよね?手の込んだ宣材というか。そういうものに、レビューの必要があるのかね。どのみち、原作やアニメのファンだったら、誰がなんと言おうが、見に行くだろうし。まあ、一話が短いのは、半身で見ている者としては助かるし、予備知識はなくとも、それぞれのキャラの立ち位置がわかるのは、作り手の腕なんだろうな。ただ、さまざまなバトルでの勝敗のつけ方に、もう一工夫欲しい気がする。
原作が、全二巻で百万部だとか?それを映画にすると、こうなっちゃうのかね。なんの起伏もないドラマに。おそらく、原作コミックの場合は、主人公の、心の動きを細かく描き込んでいるので、さしたる展開はなくとも、読者を引き込んでいったのではないか? ところが、映画では、それが出来ないから、りかというヒロインに扮した芳根京子が、憧れの先輩の志尊淳を、うっとりと見上げる顔のアップをやたら頻発することになる。べつだん、彼女が悪いわけじゃないが、これにはゲンナリ。
ベトナムとの初めての合作映画だというが、話が盛り沢山で、情報量の多さでは、「先輩と彼女」の五十倍ぐらいある。ハノイの街を舞台に、田舎で認知症になりかけた老母を引き取った松坂慶子演じる日本語教師を軸にした物語に、太平洋戦争や全共闘運動のニュース映像が入るかと思えば、日本の敗戦後にベトナムに残って対フランスとの戦争に荷担した日本人のことや、ベトナムの伝説的な舞台女優の話が描かれるという次第だが、それをテンポ良く見せるのは、大森一樹だからか。
前作同様〝火の色は愉しかった〟というあの書き出しをイメージさせるカットがあり、ブラッドベリの小説『華氏四五一度』とトリュフォーによる映画化の延長線上に「図書館戦争」の原作と映画があると思う。ポエジーに替わるミリタリーアクションとロマンス。そしてブッキッシュさ、本フェチみたいなものはなくなり。榮倉奈々と岡田准一の身長差は楽しい。下村勇二振り付けのアクションがすごい。だが、この正当化はすっかり済んだというふうな好戦性が観て楽しむことを困難にする。
マーベル漫画映画で科学の粋たるアイアンマンと神話の存在であるソーがガチ対決すると奇妙な感覚になる。それと似た異世界遭遇感が本作にはある。面白くなくはない。しかし僕個人は原作に刺されているため、幼馴染を惨殺され人類に絶望し世界を破壊するデビルマンのほうがサイボーグより圧倒的にディープだと刷り込まれている。ゆえに、世界観のスケールダウン、と感じてしまった。現代の電子機器やネットとサイボーグ、特に003の親和は発見でありそこにリブートの可能性があった。
ヒロインが心惹かれる男がいてその男には彼を導いた年上の女の影が感じられる、とは本作から「ヒロイン失格」から「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」から至る所で見いだせる恋愛モノ人物関係構造なので名前をつけたらいいと思う。本作にある、非の打ち所のない先輩女子行状記録ファイルにちなんで〝先輩伝説コンプレックス〟とでも……。前半は画がフラットすぎる気がしたが後半はイケてる。芳根京子が良い。恋する者こそ真に強い、〝恋愛有理〟ということが描けていて良い
日越合作、どういう成り立ちの企画なのか、どういう映画なのかわからず見始めるが、風景、土地、人物たちの厚みに感じ入る。見応えを感じる。異国でロケすることが、逃げになっておらず、登場人物たちと絡み合っている。実話である、海外で介護生活をするということもまた、見出された必然だろう。さりげなく新鮮な松坂慶子、奥田瑛二もまた珍しくあっさりした感じ、草村礼子は「Shall we ダンス?」のたま子先生に匹敵するくらいの映画における代表作をつくったのではないか。
書棚に並ぶ書物が撃たれ、焼かれてゆく。「表現の自由」が踏みにじられる恐怖と痛みを視覚に訴える描写が、前作以上にシビアに迫ってきた。戦闘の本気度も格段に上がり、本を巡る命がけの攻防に息を呑む。「王子様」を一途に慕う笠原と鬼教官・堂上の凸凹コンビ、その少女漫画的な甘さをどう受け取るかで評価が分かれそうだが、榮倉奈々の笑顔の丸さには、数々の「ベタ」をも許したくなる威力が。松坂桃李演じる手塚の兄の存在感がやや希薄。より複雑かつ魅力的なヒールに描き得たのでは。
世代的にど真ん中(特に『デビルマン』)ゆえ、昭和を代表する両作のコラボの一報に心躍った。短いエピソード全3話で構成されるため、OPとEDも計3回ずつ流れるのだが、どちらも期待を裏切らぬカッコよさ。痺れる。永井豪氏が、「水と油」と語っていた両者のキャラクターが一つの作品として違和感なく融合され、さらに昭和から見た未来、現代から見た過去と未来が一つの世界に収斂されてゆく不思議を堪能できる作品に。〝人間の弱さこそ人間の強さ〟というテーマが時を経て「今」、響いた。
意中の人がいる先輩へ叶わぬ恋心を捧げるヒロインを応援しようと観客に思わせるには、冒頭から主人公を個性的に、魅力的に描き、かつその恋にある程度の説得力を持たせることが必須条件だが、本作はなぜかその努力を放棄。結果、主人公がただ身勝手で、頭の中がひたすらお花畑な恋に恋する女の子にしか思えぬまま終わってしまった。帳尻合わせのように、いいことを言うためだけに登場する大人の存在にも疑問が。もっと一人一人の人物に愛を、彼らの恋に本気の敬意を見せてほしかった。
62歳の娘と認知症の母との、異国での暮らし。現地ロケが伝える、ベトナムの風を感じる心地よい描写、ご都合主義ともいえる軽やかな展開に、抜き差しならない高齢化社会にあえて生み出されたファンタジーなのかと納得。が、ベースは実話と知って驚いた。歴史、戦争、学生運動、介護、一瞬の吉川晃司(!)……。大森一樹監督が現実混じりに描き出す、団塊世代の青春映画。この緩さも大人の遊び心とは知りつつ、認知症のおばあさんを無垢なマスコット的存在として描く風潮には見る度もやもや。