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結末は良いが、事件を冒頭に持ってきて謎を強調したことでオチありきの映画になってしまった点はいただけない。時系列順の語りでは観客がついてこないと不安を感じたゆえの選択にも思えるが、前フリとして機能するならば、原告側をひたすら平板な悪役として描く裁判場面の緊張感のなさが正当化されるというわけではないだろう。また、単に美しいものとして捉えられる自然描写にも疑問が残る。沼や湿地、そこに暮らす生き物たちの不気味さや恐ろしさを無視しない道もあったのでは。
保身ありきで行動する教師や警察、同様に教室内での立場を敏感に感じ取って立ち回る生徒たちをめぐる、かつての少女漫画やメロドラマを思わせる過剰な演出は、所々くどいと感じなくもないが、規範を何よりも重んじる彼らにとって性的指向のブレがどう映るかを強調する点で決して悪くない。また、あえてしつこく葬式やリハビリの詳細を見せることにも、尺が延びるリスクと見合うだけの意義は感じられる。台詞に頼らず孤独や怒りを表現したヨンヒ役チョン・ヨビンの面構えも印象深い。
野外での車をフル活用したワンショットものという、ロックダウン下だからこそ可能になるような、これまでにない映画を撮ろうとする気概は伝わってくる。しかし、今後の人生を左右するはずの重要な一夜に、ほぼひっきりなしに電話で話し続けながら行動する主人公の姿は、さすがに説得力に欠ける。単調な画面が続くなかでもサスペンスを持続させようとする工夫だということはわかるが、観客を退屈させてはならないと意識しすぎでは。もう少し緩急を効かせる余裕が欲しかったところ。
コロナや気候変動といった時事的な要素を取り入れることで、すでに山ほど存在する似たような映画から差別化を図ろうとする狙いはわかる。だが、ワクチンをはじめとするコロナ対策を揶揄するためなのか、なぜ誰もが政府や科学者の指示に黙って従うのかがほとんど説明されないため、作品の核となる設定がまるで納得できないものとなってしまっている点が致命的。緑の党と保守党をめぐるギャグだけは笑えたが、左右陣営双方を冷笑するようなユーモアのあり方にも個人的に全く乗れず。
湿地に住む娘のロマンスと街の住民たちによる偏見や差別、殺人事件の真相を探るミステリ、そして湿地帯の清々しい自然描写など、そのどれもが丁寧に綴られている。そしてその根底にあるのは、自然を愛でながら征服しようとする文明側の暴力や矛盾だろう。それらは最終的に悲劇として、湿地の娘に襲い掛かる。一見、それら文明側に対して、自然の無垢さや純真さを称揚する映画にも見えるが、そこに止まらず正当な野蛮さをもって抵抗するデイジー・エドガー=ジョーンズが良い。
女子生徒が失踪した。川へ身投げした可能性が高いが、遺体は見つかっていない。どうやらその生徒と惹かれあっていたもう一人の女子生徒が何かを知っているらしい。その女生徒を追いながら、学内の集団いじめや親や先生たちの無関心を描き出す。途中で生徒の死亡すらあっさりと認めはするが、最後までなにがどうして起こったのかを明確にすることはない。描かれたことすべてが彼女が死んだ理由でもあり、すべてが見当違いでもあるかのような本作の描く「わからなさ」が印象深い。
ワンカット映画には、近年では「ボイリング・ポイント/沸騰」のように多くの情報量をまとめあげる技巧を誇るものと、可能な限りシンプルに、情報を削ぎ落としていくタイプものがあるようだ。ワンカットでドラッグ・ディーラーである主人公を写し続ける本作は、ほとんどが電話をかけながら車を運転している様子で構成されている。なるほど、このようにすればとても効率よく映画が撮れそうだ、と感心した。ただ、犯罪者なのになぜか英雄のように描かれる主人公は気になるところ。
人類滅亡を目の前にして、描くべき瞬間はそれでいいのかと終始疑問で、本作で描かれる場面はどれもあまりピンとこなかった。設定がどんなものでも、描かれるリアクションや感情は真に迫るものであってもらいたいと思う。しかし本作のクライマックスとでもいうべき、もう後戻りできない自決の際で、急にコミカルな演出をして登場人物たちに対して一歩引く態度も好きではない。極限的な状況における絶望感も悲しみも煌めきも滑稽さも、すべてが中途半端に感じてしまった。
湿地と沼の境、吹き抜ける風、揺れる木々、暮色の空に飛び交う鳥の影――。原作で微細に綴られる自然の描写をそのまま写し取ったかのような映像の力を何より感じた。極限まで一人で生き、それでも他者の助けを得て命を繋いだ少女が凝視した自然の、人間の、残酷さと包容。水の流れのようにすべてがタイトルへと辿り着くラスト。自然の奥の奥、人間がもっとも動物に近づく場所へ導かれたとき、本当にざわっと鳥肌が立った。一点、少女の描写にあと少しの野性味と個性があれば。
露悪的とも言えるほどに一切の綺麗事を許さない重たい空気が全篇を貫く。一人の少女の失踪を巡り、学校、家庭、警察がどう動き、どう捜索が進んでゆくかの描写が妙にリアルで生々しい。さらに、描かれる女子校の生態には、「女校怪談」シリーズ以上の恐怖を感じた。自分の罪悪感を人に擦り付けて生きる人間の醜悪さをひたすら抉る本作、女子校に置き換えた監督自身の体験が基と知り、未だ自ら昇華し切れぬ思いが鑑賞後のもやもやを生んだのではと推測。チョン・ヨビンの目に震えた。
94分のワンショット、とはいえ「ボイリング・ポイント」の醸す圧倒的な臨場感や流れゆくノンストップのスリルとはまったく異なる“静”の緊迫感が漂う。カメラはほぼ、車を運転する主人公を捉え続け、走る車内で次々繋がる電話のやりとりを核に物語は進む。視覚以上に耳に訴える構成ゆえ、各々脳内で映像を補う必要があり、そこに乗れるか否かが賛否の分かれ目か。ハリウッド・リメイクされたデンマークの「ギルティ」を思わせる、ラジオドラマや朗読劇風の味わいがじわじわ沁みる。
ほぼ主演と言える「ジョジョ・ラビット」のローマン・グリフィン・デイヴィス(双子の弟たちも出演)の実母、カミラ・グリフィンのデビュー作。アットホームな聖なる夜に終末の絶望と葛藤を盛り込んだ設定は面白く、意欲も十分伝わるものの、脚本の弱さがネックに。集まる曲者たちの背景とキャラが捌き切れず、尊厳死を巡るテーマ自体ぼやけてしまった。人類を滅亡させる毒ガスの正体すらわからず、終盤の危機感も脆弱に。同じ最後の晩餐なら、「ドント・ルック・アップ」に軍配。