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時代考証と人種や性をめぐる現代性を両立させつつ、久々の新作で今改めて真正面から高らかにアメリカの理想を謳う姿勢には胸を打たれたし、これまでとは一味違った役柄を演じるマーゴット・ロビーも良い。だが、特にデ・ニーロ登場以降の実話に寄りかかるような物語のまとめ方は、持ち前のユーモア以上に、前作発表以降のトランプ時代への優等生的な応答の要素を必要以上に強調するものとなってしまっている。はじめて組んだルベツキの持ち味があまり発揮されていない撮影も今ひとつ。
ポンコツ中古車版「ナイトライダー」といった趣の一本。コメディ作品ゆえある程度仕方ない部分はあるのだが、ヤクザに追われる主人公たちからは終始全く緊迫感が感じられず。ヤクザ側、特に社長とナンバー2の顔と佇まいが魅力的だっただけに、追跡劇がうまく機能していなかったのがなおさら惜しい。ではコミカルな演出が楽しめたのかというとそちらも振るわず。笑いのセンスが合わず、クスリともできないまま映画が終わってしまった。ベタな親子愛に帰着する展開も手垢にまみれたもの。
「なまず」にも登場したシンクホールを中心に持ってくる設定はとにかく面白く、密室ものや脱出ものの定型をある程度なぞりつつも、十分に新鮮味のあるエンタメに仕上がっている。だが、特に穴が出現するまでのダラダラした展開と全く笑えないギャグの数々が続く序盤は、後半の伏線として生きてくる部分もほとんどなく、非常にもったいない。なかでも隣人マンスの変人ぶりをやたらと強調する小ネタの数々は、後半とのコントラストを強調したかったのかもしれないが、いずれも冴えない。
レストランの空間設計や料理、客のふるまいの細部におけるリアリティを追求することは、前半の風刺的なユーモアとはうまくマリアージュしているものの、後半のより過激な演出とは食べ合わせが悪いと言わざるをえない。バラエティに富んだ客をある程度の人数用意した背景には、おそらく味覚にも嗅覚にも訴えられないなかでコース料理が進んでいく前半がダレ場とならないよう意識したという事情があるのだろうが、物語が転調するにつれ脇役たちの行動にどうしても疑問が湧くように。
過去に起きたラッセル監督のハラスメントや、姪への性暴力疑惑が取り上げられている。現在、こういった映画“外”のことを無視し映画そのものを見ることは不可能に近く、複雑な心境で見るしかない。本作は豪華俳優陣たちの共演が売りなのでなおさらだ。なお、絶妙に脱線を重ねズレていく監督流の会話術は本作でも健在。だがズレていった先に一体何者なのかもわからず、ここがどこかもわからない、というような最良のラッセルが描く真の複雑さは獲得出来ていないように見えた。
タイトルにもある、父親が残した1987年型“ステラ”を一番の相棒として、そのオンボロでとても遅いステラに乗りながら、追っ手からどう逃げ切り、裏切り者を追うのかという、スローなカーチェイスを描くという志には感心する。しかしステラのことを描こうとするあまり、しばしば挟まれる父親との思い出は、それこそむやみに映画がスローになってしまい、最後まで乗り切れなかった。クライマックスのオチもステラの不思議な力に頼りすぎており、なんでもあり感は否めない。
ご近所トラブルコメディかと思いきや、実はディザスタームービーという展開には驚いた。しかしご近所感は最後まで手放さず、ディザスターご近所コメディというあまり見たことのない映画になっていることにまずは感動。ディザスター描写はかなり安っぽく、臨場感は皆無だが、映画はその後も進化していき、地底遺跡探検ものを経て、最終的には潜水艦映画へと変貌を遂げる。そうして、忘れかけていた頃に「きちんと挨拶する子」というフリを使った渾身のギャグが炸裂。爆笑しました。
「ウィッカーマン」や「ミッドサマー」のような村カルト映画と『注文の多い料理店』が掛け合わされたような映画で、端正なショットとセリフの間合いなどで緊張感を持続させるのは見事。しかし最終的な結末がかなり早い時点から予想できてしまう点や、特にラストショットだが、なによりも画面の見栄えを優先するような画作りは多々気になった。しかし、第一声を発した瞬間に、しょうもないけど、憎めない人間だと感じさせるジョン・レグイザモは最高。彼はいつも最高だけど。
絢爛なる面子、監督得意の歌と踊りが与える躍動と昂揚、ギミックもありつつ驚くほど真っ直ぐな社会的、かつ個人的なテーマ、鑑賞後ひたひた漂う多幸感……。純粋に映画だけを評するなら、平均以上というか、正直大変面白く観た。デ・ニーロの演説に、大いに「今」を感じたし。ただ、愛や友情や権力に屈しない姿勢の意義を謳い、こちらもそこに感じ入ったならなおさら、背後に潜むハラスメント案件が心濁らせ澱ませるのも、また事実。今に続く堂々巡りの自問含め、一見の価値はあり。
本当に今年の映画か訝るほど、20年ぐらい前の韓国活劇のノリを見事踏襲した一本。そう「風林高」に代表されるキム・サンジン映画や、キム・ジフンのデビュー作「木浦は港だ」などに見る、泥臭さとベタな笑いをだだ漏らしにして、田舎町でチンピラが暴れ回り、最後はほろっと人情で〆る、あの感じ。それ自体は好物だが、本作の場合、旧式の“ステラ”を介し亡き父と距離を縮める泣かせ部分が本筋と溶け合い切らずに併走を続け、結果、観客置いてけぼりで走り切った印象が。
原題は、映画「なまず」でもキーワードになった“シンクホール”。念願のマイホームが、突如地下深く沈み込む大災害を描く映画……には違いないが、ベースはあくまでもコメディ。「悪いやつら」が忘れられないキム・ソンギュンと今回もハマり役のチャ・スンウォンが演じる住民二人を核に、家庭や職場の人間関係もしっかり盛り込んだ群像劇だ。前作「ザ・タワー」では微妙だったパニック+笑い+ドラマの均衡が、笑いに基軸を置くことで程よく調和。力の入った画作りにも目を惹かれた。
コース料理仕立ての構成。となれば静かなる助走に始まり、徐々に緊張感を高め、やがて恐怖という名のメインディッシュに突入する、いわゆる序・破・急を勝手に想定して臨んだが、本作は初っ端から主菜をチラ見せすることも厭わぬ潔さが! いわくのありそうな面々が集い、見るからに怪しい密室に閉じ込められ、溜めも起伏もほぼなく、いかにも奇妙な展開を辿る。直截的な社会風刺含めこれが現代の『注文の多い料理店』……なのか⁉ カーペンターによるB級バージョンが観てみたい。