パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
公開年:
現在の文字数:0文字
氏名(任意)
12-16歳の少年たちの微妙な成長期の身体を描いた「バレーボーイズ」という北欧の優れた記録映画があるが、こちらはアメリカの国立少年合唱団(その存在を初めて知った)に選ばれた貧しい出自の12歳の少年の成長を描いた劇映画だ。つまり、とりたてて新しいテーマではないが、D・ホフマンを始め見事な演技陣を配し、声変り直前の少年の精神と肉体の危うさを示して切実。クリスマスに家に帰れない寄宿舎生活の孤独に、ケストナーの「飛ぶ教室」をちょっと思った。合唱場面にうっとり
優秀なハッカーたちが国際間の情報の盗みあいに活躍しているという世界の現実を背景としたこのドイツ映画では、天才ハッカー青年が、ピエロ姿のネット犯罪集団に挑戦する。自分も相手も一様に死神のように頭巾をかぶっていて、まるでこの地下社会のユニフォームみたい。スーパーヒーローを気どりながら、負の世界の英雄であると誇るしかない主人公を見て、こんなことをしていったいなにが面白いのかと私は思ってしまう。最後にちょっと太陽が見える。これでは世界の破滅は近いな。
「アリのままでいたい」という日本のすてきな昆虫記録映画を私は楽しんだが、これは蟻のように小さくなって蟻たちを仲間とする縮小型スーパーヒーローの物語。全篇のユーモア感覚が快感だが、アドリブばかりの喜劇俳優が出ているからではなく、もっぱらそれは、マイケル・ダグラス演じるアントマン服発明家の存在感のおかげなのだ。とぼけているようで真剣で、ゆうゆうたる味わいに、彼の出演シーンだけでも楽しい。彼の娘役を演じるエヴァンジェリン・リリーも新しい女性像を好演。
「経済成長ってなんなの? なぜ必要なの?」とシアトルに住む92歳と86歳の車イスの女性ふたりがニューヨーク・タイムズを読んで疑問を持ち、大学に押しかけて教授にこの単純な質問をして追い出され、ついにニューヨークに行きウォール街の財界大物パーティにはいりこんで同じ質問をするこの記録映画は、アメリカ人の最良の部分がノルウェー・デンマーク・イタリアの映画人を刺激して作られたのだろう。この映画の観客たちの多くよりこの老女たちのほうがずっと若いのでは? 必見。
少年合唱団が日本ツアーで大好評、というエピソードが本作にも出てくるが、天使のようなルックス、歌声、ライバルばかりの寄宿舎での厳しいボーイズ・ライフと、まさに多くの日本女性のハートを鷲づかみにするツボが満載。少年たちが皆とてもいい。特に、主人公を演じる新人ギャレット・ウェアリングの、生意気さ、賢さ、演技力は見もの。歌声は吹き替えだとしても、発声時の緊張感、歌いあげる表情、悦に入った微笑みがリアルだ。才能を磨き成長する古典的な物語を手堅く描いている。
実生活では冴えないハッカー青年と、彼を拾った若者たちが、インターネット犯罪で社会を挑発する。はみだし者の青春群像に見える中盤辺りは、今年公開された「予告犯」を連想させるが、こちらはさらにダークに物語が入り組んでいく。何より、ネットのハッキングの世界を、ここまでしっかり視覚化してみせた映画はまれだろう。まっすぐにエグいところを突いてくる厭らしさは、なるほどドイツ映画。30代半ばの監督の嗅覚は鋭く、新世代のアプローチを感じさせる。オチはやや微妙だが。
最初に登場するマイケル・ダグラスが若くてびっくりだが、その20数年後から物語が本格的に始まる。主人公と仲間たちはコソ泥、彼に目をつけ〝アントマン〟化させ、最小の体を訓練する科学者とその娘はかなりマッド、さらにより一層危険な科学者も登場。リアルな戦慄とユーモアを交えた悪知恵の乱舞。ポール・ラッド演じる普通の、でも裏ありの賢者が、振り回されてばかりいるのに不思議と誰よりも魅力的な存在となっていく。これまでにない、でも王道感あるヒーローもので面白い。
92歳と86歳。アメリカ、シアトル在住のおばあさんのドキュメンタリー。それまでも社会に関心を持っていた茶飲み友だちのふたりが目下気になるのは、経済。経済成長とは必ず人を幸せにするものなのか? 疑問に思ったふたりは学び、さらにはウォール街へ向かう。あるイベントに乗り込むシーンは一見コメディだが、実はかなりの戦慄的瞬間(よく撮れたな)。ドン・キホーテのようにも見える彼女たちの突く真理。それを支持する監督の自由さは、映画の自由さそのもので胸のすく思い。
たぐいまれなる幼い才能の原石が、人格破綻者の鬼教官J・K・シモンズによって完膚なきまでに打ちのめされるような映画では間違ってもない。これはうたがいのない「人間」への信頼にささえられた王道の十二才映画であり、変声期とともにやがて失われてしまう特別な季節の約束されたはかなさを元に、紋切型の展開であることなどいっさい顧みない一貫した推進力で突き進んでゆく作品である。そしてそれがたいへん心もとない。デブラ・ウィンガーなど渋すぎるベテランと少年たちに拍手。
ハッカーものとしては、これはなかなかの拾いものである。ネットワーク上のやりとりを可視化し、ハッキングをアクションに結びつけることでまっとうに犯罪活劇たりえている。結末もちゃんと観客をおどろかせてくれる娯楽仕様。ただ、この絶妙な古臭さ、ダサさはなんなのだろう。おおよそひと昔前の「スタイリッシュ」。いまの若者像において描かれてほしいのは、ハッカーよりも「バカッター」などとも通称される幼い承認欲求のほうなのだけれど、それにほんの少しふれた作品でもある。
監督を兼任するはずだったエドガー・ライトが最終的に降りたのは、「アメリカへの自己批評」というマーベル作品に色濃くある政治的含みと、ライトがやろうとしたヒーローもののパロディとがうまく合致しなかったからではないか。結果完成した作品は、双方を折り合わせる格好になった印象がぬぐえない。見どころは多く、一般家庭でのアクションシーンなどたいへん楽しく(エドガーがやりたかったのはきっとこれだ)ポール・ラッドもよいだけに、別のバージョンを思わず空想してしまう。
シャーリーもヒンダも、とにかくめちゃくちゃチャーミング。しかも思想的には完全に左であり、活動はたいへんラジカルである。ふたりのおもしろさ、過激さは、いつも画面をはみだしている。マイケル・ムーア的な突撃型映画でありながら、カメラの存在がふたりを見守り、見守るがゆえにしだいにエスカレートしてゆく点では、むしろ原一男流のアクション・ドキュメンタリーにより近い。ふたりが所属する活動組織については、パレスチナを舞台にした別の監督のドキュメンタリーもある。