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「ひとくず」は児童虐待という重いテーマとベタや泥臭さや安っぽさが妙にマッチして泣かせる映画になっていた。しかしその後の「ねばぎば新世界」や本作はいただけない。エンタメを目指した途端に安さだけが際立つ。画の安さはまだ仕方ないが、お話の安さはどうにもならない。「ベイビーわるきゅーれ」の時代にあの程度のアクション見せて満足なのか。上西さん、安上がりに慣れちゃダメですよ。自分だけ気持ちいいのも。これじゃすぐ飽きられちゃう。嗚呼、こうやってまた友達を失くす。
脚色が違うと思った。夢と現、生と死、その境界や存在の曖昧さをやりたいならば、現や生をリアルにやってこそ、夢や死や存在の不確かさが際立つのでは。原作にないものを足すのではなく、原作で地の文でしか語られていない言葉を芝居にしないと。原作の疑い方が違うし。これじゃただの夢オチ。夢だから何でもアリとしか見えず、登場人物の誰にも寄り添えない。金門島ロケはいいが、日本語中国語混在も設定だけで生きていない。「ツィゴイネルワイゼン」という最良の教科書があるのに。
漫画家志望の青年が戦時中にタイムスリップする。窓には紙が貼ってあり、学童疎開後でもある。なのに煌々と灯りがついている。あろうことか看板とか神社にも。この時代、灯火管制でしょ。犬を探しているが、犬猫は供出してるはず。仮に夢や幻想だとしても、それくらいの時代考証はすべきでは。一事が万事。それがこの映画のすべてを物語る。そもそも青年はなぜ狼の話を書こうとしているのか。それと戦争が関係あるのか。思いつきの羅列にしか見えない。もう少し練ってから世に出して。
森田芳光脚本を根岸吉太郎が撮った「ウホッホ探検隊」の成功を思い出す。なんというシャープな企画。脚本監督が別で広がる作品世界。甘い着地は嫌だなと心配してたら、とんでもなく不道徳なラスト。ウホッホに微かにあった結婚や家族への幻想は微塵もなく、個人だけが屹立する。16歳との淫行を警察に疑われ、やってないのにプライバシーだと答えを拒む瀬戸康史。映画の代表作になったのでは。作品ごとに別の顔を見せる河合優実が魅力的過ぎて。末恐ろしい。城定→今泉にも期待が高まる。
しがなく、しょぼくれ、過去のトラウマにさいなまれている男だが、なぜかケンカはめっぽう強い。上西雄大はそういう役によくはまる。そんないかにも上西的な主人公が大阪・西成で大暴れする活劇。諜報機関の工作員時代の記憶を失い、日雇い労働者となっている男が、難病の娘の手術費用を稼ぐために、アンダーグラウンドの面々と対決する。奥山和由プロデューサーと組んだこの作品は、闇仕事のたびに金銭の出入りをテロップで強調するが、ドライというよりコテコテの犯罪映画。
現実世界の不確かさ、というものは奥原浩志の一貫したテーマなのだと思う。そういう点で原作者の小川洋子の感覚とよく響き合っている。台湾の海辺のホテルを舞台に、日本人俳優と台湾人俳優が入り交じる異郷のドラマに仕立てても、その世界観は揺るがない。原作のフォルムと奥原の視点に確固としたものがあるからだ。男と女の生の実感の根拠となるSM的なエロティシズム。それを一種無国籍的な乾いたタッチで描き出すのに、金門島という寂れたロケ地が大いに貢献している。
日露戦争の明治、太平洋戦争の昭和、そして現在。絶滅したニホンオオカミを題材にした作品を描こうとする若い漫画家が3つの時空に迷い込むファンタジー。「アルビノの木」で人間と自然の関係に向き合った金子雅和監督の、ある意味で壮大なドラマ。死者との対話、環境破壊、近代文明批判。込められたテーマの重さに志の高さがうかがえるし、映像も美しい。ただそこを突き抜けて現代にどう刺さるのか、を求めたくなってしまう。ヒロインの阿部純子に確かな存在感がある。
今泉力哉の鋭角的、理知的な恋愛劇の脚本を、城定秀夫監督が柔らかく受け止めて、抑制の利いた情感を醸し出している。このコラボレーション、互いに角をたわめていないのが面白い。今泉演出ならもっとこうするだろうなと想像しつつ、城定が今泉脚本の毒を城定なりにうまく生かしているのがわかる。まるでフグの調理人のように。女子高校生役の河合優実をはじめ、俳優たちが生き生きしているのはその証左。脚本、監督が逆の組み合わせの「猫は逃げた」をあわせて見ると楽しい。
かのジェイソン・ボーンのごとき謎だらけのタフガイが、過去を問うだけ野暮なワケありの人びとの溜まり場でもある大阪・西成に流れ着いたら? そんな奇想天外なアイデアを導入部に、存在するもの全てに値段が付けられた、いびつな現代社会の暗部をも炙り出さんとする意欲は買い。敵か味方か判別できぬ同僚・津田寛治との心震える波乱の顚末や、ザビエル頭の誇り高き殺し屋・加藤雅也を筆頭に強烈なキャラクターが暴走する“死闘篇”への助走として、やや控えめな印象の序章。
舞台や時代を特定させず、陽と陰が交錯する物語のロケーションに、表情が刻一刻と変わる台湾の金門島の絶景はよく似合う。それだけに、疑似父娘風にも映る男女の倒錯的な性愛の行方を思わせぶりに覗き見させた挙句、丸ごと覆すかのような仕掛けを講じる選択は、文学を映画に落とし込む手法としてアリであれ、グロテスクさにも美を潜ませ、感覚に直にふれる原作の肝の部分も損ないかねず、疑問が残る。生と死の狭間に佇む、“海辺の何でも屋”的なリー・カーションが儲け役。
スカイツリーの程近くに、数十年前の戦争の記憶が今も眠る東京。戦没者の果たせなかった想いや、彼らが確かに存在していた名残りを処女作へと昇華させることで、ひととしても作家としても飛躍する漫画家志望の青年の心模様の移ろいを、内省的な繊細さで笠松将が好演。時空のねじれの中、季節外れの夜空に打ち上げられる冬の花火が、亡くなったひとたちへの親愛や思慕の情を募らせる。漫画を実写化した設定の劇中劇で極寒の自然の過酷さを伝えつつ、温かな余韻が染みわたる幻想譚。
結婚式を控えた迷惑千万なカップルをめぐる、どいつもこいつもな男女が織り成す痴情のもつれ合い。顧客の信頼を得ながら欺いてもいるウェディングプランナーも、映画「卒業」嫌いを宣言したそばから二股の背徳感に溺れる婚約中の女性も、ツッコミどころ満載だが、当人らは本能の赴くまま、身を任せているに過ぎない。エゴそのものの愛に理性やモラルを求めること自体、いかに気色悪く無意味であるかを見せつけ、甘い夢も、身も蓋もない現実が凌駕してしまう、しょっぱい恋愛劇。