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アウトローではない自分がここで発する「リアリティ」という言葉にどれだけ意味があるかわからないが、シノギの詳細から登場人物たちの顔つきやエスニシティまで、現代のヤクザ&半グレ映画としての「リアリティ」に驚かされた。暴力描写や性的描写に頼らないストイックな構成、逆光を多用した硬質な画作りもジャンル映画としては画期的。人物背景を大胆に省略してスピーディーに展開していく手法は、まるでソダーバーグ作品のよう。監督、脚本、主演、すべて新人。これは事件だ。
主人公のどこに魅力を感じればいいのか最後までわからなかった。それは劇中での設定も同様。夢破れた劇団主宰者が、妹の死(その死因にも脱力)をきっかけに思い出作りのような最後の舞台に挑むのだが、無賃労働の劇団員が彼女についていく理由がさっぱりわからないし、デビュー作の裏側が明かされた後はなおさらだ。本来は表現をするような才能がない人間が表現の道を選んでしまった悲劇に、製作から押し付けられたJポップ曲の場違いな響きが重なって、一層物悲しい気持ちに。
綿密なリサーチに基づいてこの困難な題材に取り組んではいるのだろう。しかし、いきなり観光映画のようなくだりが入ったり、叙情的なJポップ曲が流れたりと、ナラティブに深刻な破綻をきたしている。そして、その破綻の元凶である現在の平均的な日本映画の脆弱な製作体制でこの題材を扱うこと自体に、自分は否定的だ。子役に与える心理的影響を考えても、監督によほどの覚悟がなければ作るべきではないし、本作の演出の甘さや凡庸な着地からはそこまでの覚悟が感じられなかった。
「どこかで見たことがある話だな」と思ったら、2年前のNHK『腐女子、うっかりゲイに告る。』と同じ原作。やたら「ホモ」というワードがでてきてギョッとしてたら、たった3年前に出版されたその原作のタイトルに思いっきりそのワードが。つまり、NHKがいろいろ配慮してドラマ化した作品を、敢えて3年巻き戻してみたということか。それだけコスリ倒すのには根強い若年層のニーズがあるのかもしれないが、同種の海外作品に頻繁に触れている観客なら問題意識が素朴すぎて面食らうだろう。
目のつけどころは面白い。ヤクザでも堅気でもない。一匹狼でもなく誰かとつるんで行動しているわけでもない。ヒーローにもアンチヒーローにもなれない中途半端なワルの半グレ。正直、あまり共感が持てない主人公の話だが、ぶっつけ本番的な粗っぽい演出と、彼が関わるどのキャラも演技を超えたリアリティーがあるのには感心する。名簿ビジネスなど、個人情報の売り買い。そんな仕事から抜け出すべく主人公は投資家に転身するのだが、後半はヤクザ映画もどきになり、ちと残念。
96年生まれで演技歴もあるという監督の長篇デビュー作で、聞けば普段は出版社で働いている由。才能とチャンスがあればいくらでも映画が撮れるんだと感心したが、正直、このデビュー作、ヒロインの周辺に週刊誌ネタふうの事件やエピソードをあれやこれや盛り込みすぎて、逆に散漫で摑みどころがない。しかもこのヒロイン、逃げ腰の責任転化が目立つのもいただけない。脚本をもっとシンプルにして、妹をパワハラで死なせたりしなければ、ヒロインの劇作家になる夢も純化したのに。
実際に起こった痛ましい児童虐待事件を基にした社会派のサスペンスで、探偵役は関東地方の児童相談所の新人職員。いやサスペンスとか探偵などと書くと児童虐待に便乗した社会派気取り再現映画と誤解されかねないが、児童相談所の実情やその業務の限界にも踏み込んだ展開は、かなりしっかりしていて、いわゆるお役所仕事への批判も忘れない。ではあるが、親に虐待される子役たちの演技、演出があまりにリアルすぎて、余計なことだがこれも一種の虐待じゃない?と思ったりも。
高校生の純と家族持ちの恋人との性愛シーンがかなり生々しい。おいおい、大の大人が未成年男子を相手になんてこと! ただこの場面、あくまでもナマ身の純を見せるための演出なのだか、本来の自分を変えても普通の男子、普通の青春を送りたいと思う純の気持ちの背景として効果的。そしてBL漫画好きを隠したい同級女子。そんなぼくと彼女の交流が微妙な思惑を含んで描かれていくが、自分は普通ではないと思う内なる差別意識を自ら壊す彼女の姿は感動的で、演じる山田杏奈に拍手。
心躍った。マイケル・マンやN・W・レフンの如き語り口と撮影だがそれは小手先でなく、仁義ある半グレの誰にも知られぬ英雄性を描くオリジナルとして本作は大きく立つ。カタギでノすため三河島の焼肉屋で済州島からの不法入国者のツレを切れば後に前科者だと自分がITベンチャーに切られ、弟分の仇は激情から私的に果たす。その因果を山本一賢演じる主人公石神がきれいに過ごして、裏と表、内と外が繋がる。主人公のコハダの握りの食い方が良い時点で優れた映画の予感はした。
しゅはまはるみの老け役が良い。実際四十代なのだろうが、いまどきのひとプラス他人に見られる商売の常で三十代に見えるところを、つくって六十くらいの役をやることに、映画の面白さと役者根性と若けりゃいいという風潮へのアンチを感じた。松井玲奈と日高七海が同年配の他の女優らに埋没しない佇まいなのも良かった。筋立てもまあ分かるが、個々の状況と人物が投げ出されっぱなしで終わることと、流れる曲の合わなさには疑問。だからラーメンすする音で終わって良かった。
今年9月封切りの「君は永遠にそいつらより若い」(監督脚本吉野竜平)でも部分的な描写として児童虐待の察知と児童相談所の業務に劇的なものとアクションの契機が見出されていた。2019年の千葉県野田市の事件を題材にしたと思しき本作はこの主題を全面展開し、ほとんどホラー映画、ほぼ「呪怨」のプリクエル。フラットめの画面は普通煽り不足のマイナス評価要因と捉えるが本作では題材の陰惨さが強すぎてもはや煽る必要はなかった。現代的な題材の重要な実録映画の出現。
先日「きのう何食べた?」に関して文章を書き公開したがその文中で私はBL漫画を低く見るかのような表現をし、それを指摘するリプをもらい、これを重く受け止めた。日本映画史を知る者ならポルノ映画がそこに占める位置を知りポルノ文化を低くは見ないが、内なる差別があったのかと。8歳のとき従姉の本棚にあった『キャプテン翼』(と思った漫画)で見た、翼とロベルト本郷が絡む衝撃がいまだに去らない私は多分BLが苦手だ。本作を従姉(現在既婚)の青春の一頁と妄想した。