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これはシナリオではなくストーリーですと新藤兼人に言ったのは溝口健二だが、本作にはお話しかない。不倫する人される人の深淵も描かず、書けない苦悩書ける人への嫉妬にも興味がない。血の通った人間がどこにもいないのだ。小さな話をより小さく。あるのは昨今の不倫絶対許すまじの価値観だけ。自分だって不倫するかもしれないし、書けなくなるかもしれないという低い視点こそ、エンタメには必要なのでは。ハリウッドはそうだけど。主演二人、なぜこの脚本で出ようと思ったのか。
惜しい。スマホでもドキュメンタリーが撮れる今、主人公がテレビに踏み止まり何を目指しているのか分からない。局に言われるままマスコミ批判は引っ込めるし。小さな学習塾を経営する父も同じ。理念が分からないから、女生徒に手を出す枷がない。タイトルの天秤、何と何を秤にかけるのか。父の罪を言うか言わないか? 正しさって、その程度?テーマに手が届かない。半径1メートル映画の多い中、志は見事。どうして演出力はあるのに脚本力は弱い映画ばかりなのか。惜し過ぎる。
対立と葛藤がドラマならば、𠮷田恵輔の登場人物はそれらを他者との関係ではなく、あくまでも自分の中で処理しようとする。自分を赦せて初めて他者を赦せる。拳闘を描いてさえそうなのだから、本作も然り。それが極めて今っぽい。が、文学でなく映画でやるのは容易なことではない。現実を安易に借り物競走せず、時代を描くという離れ業。フィクションとしての強度。脚本に嫉妬。演出には嫉妬すら出来ない。これで松坂桃李がもう少し分かれば。今年のベスト・テン、前作と2本入るか。
想像以上の酷さ。「政治色よりかは、夫婦のあたたかいハートウォーミング」と監督。それ、この題名の映画作る意味ある? しかもこのクソ政権下で。案の定、政治にもジェンダーにも批評性のカケラもない。政治色を出さないことは政治を考えないことではないはず。勝負の選挙演説、生徒会か。妊娠して辞任って、世界に恥ずかしくないか。ノンポリという名のポリティクスこそが現状維持に加担するという最たる見本。これを面白がる人がいるのか。エンタメ舐めすぎ。★はつけたくない。
んー、こういうの、テレビドラマでやればいいんじゃないですかね?映画でやる必要がありますか? てっきりキラキラ映画かと思っていたら、オリジナル作品だというのでそれなりに期待して観たのにげんなり。大したアイデアでもなければ、しっかりとしたシナリオがあるわけでもなく、画面はふざけたズームインとかしていてとにかく薄っぺら。正直、ディスりどころしかない。もっと面白いキラキラ映画もあれば、テレビドラマもある。若き監督よ、なんか、とりあえずもっと頑張れ。
なっげ、と思って身構えていたのだが、あっという間に時間が過ぎた。ドキュメンタリー番組のディレクターの女性の仕事ぶりと、彼女の身の回りで起こる些細とは言えないドラマが描かれる。瀧内公美がとにかくいい。途中まで文句はなかった。しかし、こんな終わり方をしてはいけない。映画の中で描かれたように、どのような仕事や生き方にも落とし前は必要なのだから、映画それ自体にもふさわしいエンディングがあってしかるべきで、ぶつ切りで終わるのは納得がいかない。
まともな人が2人くらいで、あとはヤバい人とかわいそうな人しか出てこない映画。タイトルの「空白」、正直イミフ。英題の“intolerance”、カッコつけてるだけでもっとわけわからん。日本社会の抱える閉塞感と人々の心の中に潜む闇を描き出すことに𠮷田恵輔監督は挑戦し、決して失敗しているわけでもないのだが、結局何を訴えたいのかは見えてこずひたすら胸糞が悪い。「古田新太の怪演!」とか評価してほしいのだろうけど、役者の演技をどうこう言って済むなら批評はいらない。
日本初の女性総理とその夫の愛を軸にした新手のメロドラマ。中谷美紀、田中圭の好演もあり、不覚にも見入る。女性がリーダーとして働くことの難しさに直面するうえで、パートナーの果たす役割が強調される。シングルマザーの広報官なども登場するが、結局男性の手助けなしに女性は羽ばたくことができないということを突きつけている。荒唐無稽でコミカルに仕立てられた物語の中でそのリアリティが妙に痛い。こんな世の中すら当分訪れないのだろうと思うと悲しい気持ちになる。
夫と編集者の不倫に気付いた女性漫画家がその経緯を作品に描く。さらに自分の不倫まで描く。その草稿を夫が盗み見て困惑する。筋立ては確かに面白い。どこまで現実なのか、どこから虚構なのか。見ている観客にもわからないし、どんでん返しも待っている。それなのに見ていてどうしてこんなにハラハラ感が薄いのだろう。回想シーンのせいか、説明的なショットのせいか、サスペンスフルな緊張感に欠けるのだ。ニコニコしながら夫に復讐する黒木華は、はまり役。辛口の終幕には納得。
情報化社会の過剰な懲罰意識を描く映画が多いが、この作品はそこから一歩踏み込む。一方で叩かれる側に手を差し伸べつつ、一方で自身が叩かれる側へと追い詰められるテレビディレクターの内面のきしみを描くのだ。隠蔽された真実に迫るという職業倫理をもつ者が、身内の過ちを隠蔽する。そんな矛盾した行動を、説明抜きに具体的な画面で見せていく。春本雄二郎監督のカメラは対象にダイレクトに迫り、人物の葛藤を露わにする。ラストの6分を超すワンシーン・ワンショットは圧巻。
人間関係の機微を繊細かつリアルに描いてきた𠮷田恵輔監督のまなざしがついに社会に突き刺さった。懲罰意識が異常に高まった不寛容な社会、安全な位置から無責任に標的を非難する群衆、事なかれ主義で人を切り捨てる組織、分断と対立をあおり増幅させるメディアとネット。そんな社会を「空白」と名付けてタイトルとしたところに、この作品の志の高さが読み取れる。𠮷田の冷徹な観察眼と確かな演出力に拍手を送りたい。古田新太の暴走する身体を初めて正面からとらえた映画でもある。
中谷美紀の初代女性総理はさまになっているし、田中圭の夫も面白い。でもせっかくのタイムリーな題材が生きないのは、細部にリアリティーがないから。仕事も、政治も、生活も、育児も、出産も絵空事。稚拙な政治ドラマに延々とつき合わせて、仕事をバリバリする女性とその夫の関係という肝に焦点が絞れない。行き着くところは出産と仕事の両立の可否。ポリティカルコレクトネスに反すること自体は結構だが、あえて物申すに足る説得力がなければ絵空事はますます空疎になる。