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勇気ある告発やジャーナリズムが、いかに世の中の狂気を押しとどめる力があるのかを示す、本作の訴えかけるメッセージは重要なもの。アウシュヴィッツ収容所での惨状を、人々がにわかに信じられなかったという描写もなまなましく、当時の状況が現在の問題として、リアルに感じられた。その一方で、映像に美学的なこだわりを見せる意義については理解し難い面も。この題材であれば、より多くの観客が共感できるような、物語を主体にしたアプローチの方が相応しかったのではないか。
怪奇的恐怖を扱いながら、「牯嶺街少年殺人事件」の世界観に触発された面もあるという原作ゲームを、またさらに映画にしているのが面白い。ゲームで印象的だった横スクロール風の演出が、本作ではそれほど活かされていなかったのは残念だが、製作費などの都合で大掛かりな撮影を断念せざるを得なかったのは理解できるところ。とはいえ、時代の狂気と悲劇を写しとった物語やテーマ、拷問の描写などは、配信ドラマ版よりもさらに我々の現実と繋がる恐怖を描き得ていると感じられた。
ジャウム・コレット=セラが製作に関わっているだけあり、アメリカで作ったかと思うようなスウェーデン映画だ。空が舞台ではあるものの「オープン・ウォーター」や「海底47m」と同じく、海洋サバイバルものとしての見どころ十分、迫り来る数々の危機に目が離せなくなってくる。中でも燃料補給のための決死の行動は手に汗握る臨場感で、冒頭こそ共感しづらかった登場人物たちに同情を覚えるほどだった。クライマックスのロケーションにも驚かされるが、ラストの展開だけは弱かった。
ゴッホの絵画作品風に世界を描いた「ゴッホ 最期の手紙」とは、また異なるかたちで、本作の登場人物であるアーティストの作品をアニメーションの中で使用し、現代のクリエイターとコラボレーションした趣向が新鮮。いたましい出来事だからこそ、それを絵にすることの意義や意味をも考えさせる。フランスからメキシコに舞台を移し、カラフルな色彩によって“線”が消えていく絵画的手法に迫ることで、ジュゼップの心理の変遷まで描いた点からは、彼の人生を真摯に考えた姿勢が伝わった。
ナチス・ドイツが隠そうとしていた実態を暴き出す。人間の所行とは考えられない蛮行が本当に行われていたとは……。映像に戦慄する。主人公の二人が収容所の外へ脱出するまでのドラマとしてのスリルはさておき、受け止めるべきは劇中で提示される、(ドイツ軍による)殺害者数や、それに使った化学薬品などのエビデンスで主題を強調する意味。行われた真実を伝える監督の覚悟。そしてエンディングで現代の政治家らの音声をかぶせ、過ちを繰り返すことへ警鐘を鳴らした意味も。
同じ白色テロが題材の名作「悲情城市」「牯嶺街少年殺人事件」とは違う、今の時代のポリティカル・エンタテインメントとして評価できる。不穏で混沌とした現代の世界各地、いや今の日本でこの映画を見ると、例えば劇中、軍人風の衣裳をまとった国家権力の象徴が強いる「忘却」が、リアルタイムの恐怖に。国民の忘却を待つかのように隠蔽し、意味のない言葉を繰り返し、はぐらかされていては歴史に向き合えません。原作ゲームを知らずとも、主題とズレた見方だとしても、感応する。
主人公が元恋人同士。そのワケアリな関係の二人が乗ったセスナ機で、パイロットが急死したために、絶対絶命の大ピンチに陥る。スリルとパニックのシチュエイションは整っている。景色も美しい。主人公の二人は演技もそこそこで、微妙な雰囲気を醸成している。パイロット役のK・デイヴィッドも含めて、キャストの調和が魅力的。なのに単調なストーリーに加えて肝心な脚本が浅いので、せっかくのコンセプトがぐらぐらして面白さ半減。唐突で都合のよい終わり方にも不満が残る。
画家の伝記と、彼との友情を孫に語り聞かせる老人の思い出ばなしの豊穣さを兼備。監督オーレルが新聞などで活躍するイラストレーター/漫画家だけあって、このアニメからは主題以上の、作品全体にアーティストとしての二人の、感性の響き合いがにじむ。鉛筆による線描画のような人物と水彩画のような背景がなめらかに動く前半に対して、後半の色鮮やかな見せ方もうまい。孫に語る構成にしたことで物語を単なる歴史に終わらせず、現代へバトンを繋いだストーリーも評価したい。
「面白い」などという言葉を使うことが憚られる内容とはいえ、序盤にアウシュヴィッツ内のあまりに非道い惨状を見せられるが故に脱走囚人二人への感情移入度合いが半端なく、ナチスはもとより、分からず屋のヘタレ赤十字にも怒り止まらず、終始手に汗握り見入ってしまったわけだが、これが史実だと思うとやはり簡単に面白いなどとは言えない……けど、やっぱり直接的な残酷描写を巧妙に避けつつも静寂の中で呼吸するサスペンス演出の切れ味が抜群で、面白かったとしか言いようがない。
大ヒットホラーゲームが原作らしく、映像表現にはあらゆる工夫が施されており製作陣の気合いがうかがわれるものの、白色テロルという社会派要素と裏切り者は誰だ的なサスペンス要素、死後の世界と霊、果てはクリーチャーまで出てくるホラー、スリラー要素に加え、禁断の恋を扱った恋愛要素までもを盛り込んでいるのは流石に欲張りすぎなうえ、時制をやたらと入れ替える構成も話をややこしくしているようにしか感じなかったのだが、ゲーム世代の若者にはウケる内容なのかもしれない。
絶体絶命のシチュエーションに私生活で悩みを抱えている登場人物が放り込まれるというパニック映画の王道ど真ん中の作品で、パニックの舞台がセスナという以外は殆ど新鮮味がないとはいえ、ジャンル映画としては一定水準を保った面白さで最後まで飽きずに楽しむことができるし、中盤、燃料切れに端を発する「冷たい方程式」的な展開が顔を出したときはドキリとしたのだが、その部分をびっくりするくらい淡泊に処理しているのはもったいないと感じたし、倫理的な引っかかりも覚えた。
実在した風刺画家、ジュゼップ・バルトリと語り部でもある憲兵の友情を軸に、スペインの内戦から逃れた難民たちがフランス政府によって強制収容所に入れられ虐待にあう、というなんとも皮肉でおぞましい歴史を荒々しい描線で綴った本作、陰鬱だが牧歌的でもある画が逆に悲惨な状況をよりリアルに脳内再生させる効果はあるのだが、地のアニメーションとジュゼップが描き続けた風刺画の雰囲気が寄りすぎており、彼の生涯とメッセージを描くにあたり、この手法は功罪あるように感じた。