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劇場空間を活用した演出に自分はおおいに弱いのだが、ウィーンのオペラ座を舞台にした場面のそれがすごくいい。モロッコ市街に来ればもちろんカーチェイスがあるし、さらにそれに続くバイクチェイスのスピード感たるや。超絶アクション大作としてこのまま押すのかと思いきや、「個人の信念が圧殺される」「自分の代わりなどいくらでもいる」という諜報員の悲哀もにじみ、本格スパイ物の匂いをもただよわせる。トム・クルーズが最高なのは言うまでもなく、共演陣との化学反応も楽しい。
序盤の数シーンを見て、わりと最近日本のTVドラマでこんな場面を見た気がすると思ったが、ついにはこちらの気のせいでなく、世界的有名映画の明らかなパロディも登場する。だがそれが「引用の織物」とかではなく「つぎはぎ」という印象になってしまうのは、ありきたりなパターンをその場の思いつきで引っぱり出しては、話を展開しているかのようであるせいだろう。俳優たちの魅力ももっと引き出されるべき。中盤から濃厚なエモーションがそれなりたちこめてくるのはちょっといい。
あまりに痛ましすぎる過去から目を背けざるをえない男女が、ヒッチコックの「めまい」の変奏のような状況にからめ取られていくこの心理劇は、もちろん、ホロコーストを新たな切り口から語ろうとする試みでもある。変遷していくニーナ・ホスの身体が映画を牽引し、彼女とこの監督が組んだ前作「東ベルリンから来た女」同様、音が丁寧に演出される。セクシュアリティに含みのあるレネ役の造形も印象的。そして『スピーク・ロウ』が歌われるクライマックスは圧倒的な凄みがあり、必見。
冷静で分析力に長けた大統領が、森の知識を持つ少年の力を借りて危機を打開し、少年を成長させていく話かと思ったら、「二人ともポンコツ」というまさかのパターン。でもその呑気さが味わいだし、何より山岳風景が絶品なので、夏休みのファミリー映画としてニコニコ観ればそこそこ楽しめるかも。……と思ったけど、わりと残酷なシーンもあって、しかも、現実にそんな死に方したらその画ヅラじゃ済まないよという中途半端さだから、教育効果という面から見てどうなのかはわからない。
あまりに「3」「4」が傑作だったので期待したけわけだが、〝つまらなくはないが、しまらない〟感じに。ウィーン国立歌劇場での暗殺者3人入り乱れも流麗なようで散漫だったり、モロッコでのカー&バイク・チェイスも車と単車が雄大な景色に吸い込まれてしまったりと、なんだか〝地の利〟を見せ場に反映できていない。謎めいた女の投入など、よりスパイ映画たらしめようとする努力や要素も空回り気味。とはいえトムのスタント・マゾぶりは素晴らしく、そんな彼を観られれば満足ではある。
隣国とはいえ、その時代や世代が抱える郷愁感のディティールはすべて重なるわけじゃない。でも、分母的にどこか近しい部分があるから、韓国の青春グラフィティは楽しめる。色ボケの主人公、幼馴染みの恋など、物語からキャラ造形、語り口にいたるまで、徹底的に80年代の青春映画or青春マンガしていて良い。直接的な表現はないものの、子供がガキとして十把一絡げにされていた時代感も出ていて○。「アジョシ」での人間のクズ役が鮮烈だった、キム・ヒウォン演じる先生がこれまた◎。
いくら顔面が変わっていたり、収容所帰りで常時フラつくほどの虚弱体質になったとして、自分の嫁だと気づかないものだろうか。知人や友人だったらまだしも、ちょっと前まで夫婦をやってきた仲のわけだから、仕草やそのあたりでピンとくるんじゃないか? まぁ、そうならないからこそ燃える物語であるし、戦争がもたらす容赦無い破壊や抗えない変質を表している部分もあるのだろう。たしかに演出もキャストも魅せるのは否めないわけで、変なことを考えずに観ればグワァーときたと思う。
山岳地帯という舞台の閉塞感と開放感、デカい獲物を捕るまで山を降りられぬ少年の逼迫感を活かせておらず、それに従って敵との追いつ追われ具合も弱いまま終了。だが、サクサクして心地よい語り口、91分という尺、適度に派手な見せ場が咬み合っていてツルリといける。銀色の脱出ポッドから飛び出してくるサミュエル、自ら体を折り畳んでフリーザーに入ったうえにヘリで宙吊りにされるサミュエル、スキンヘッドに生傷が増えていくサミュエルなど、彼絡みの画はいちいち磁力が強い。
CGやハイテク技術に依るパワーアップでなく、専らトム・クルーズの肉体を駆使したアクションで観せるのが嬉しい。息を呑む見せ場はふんだんにあるがそれを繋ぐ、二転三転するストーリーが上手く作られている。脚本・監督のC・マッカリーの功であろう。「アウトロー」でもロバート・デュヴァル、ヴェルナー・ヘルツォーク! を上手く使ってノワールな雰囲気を出していたが、今度も脇役がみな生きている。デ・パルマ、ジョン・ウーなど錚々たる歴代監督に伍する才能だ。
良き時代の日本映画を観るような懐しさだ。学帽、制服が日本とそっくりのせいもあるが、若者たちがそろって硬派で純情だからだ。ヒロインの暴力的不良少女(パク・ボヨン)がなんともいい。鈴木清順「けんかえれじい」のキロクの少女版だ。男女の力関係が逆転しているのも面白い。「男一匹ガキ大将」や「ビー・バップ・ハイスクール」などいろいろ入っているのもお楽しみの一つ。ラストは「愛と青春の旅だち」をヌケヌケと戴いているが、イ・ジョンソクが格好良く決っている、お見事。
アウシュビッツで死んだ妻にそっくりの女に出合い、本物に仕立て上げてその遺産を狙う。原作はユベール・モンティエの『帰らざる肉体』で、出版当時話題となり、マクシミリアン・シェルで映画にもなった。これを題材にヒッチコックの「めまい」を再現しようという意図は面白いのだが、夫のヒロインに対する心理には納得しがたいものが残る。友人や両親が、本人だと直ちに認めるのに夫だけが最後の瞬間まで気づかないのは、ラストシーンの感動を考えての逆算なのだろうが不自然だ。
十三歳の誕生日に、村の掟に従い一人で山奥へ鹿狩に行く少年と、テロリストにハイジャックされる大統領専用機をカットバックで描く導入部からワクワクさせる。S・L・ジャクソンは、ヒロイックな人物ではなく、頂点に立つ者の孤独、怯えを抱えた正直で小心な人物で、彼がユーモラスな対話を通じて少年に心を開いていく件は脚本の妙。脚本監督ヤルマリ・ヘランダー。長尺大作の多い昨今、これを一時間半という生理的に心地よい時間にまとめて、一気に見せる編集はイサギヨイ。