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家庭内暴力から逃れられた女性と娘たち。その新居をDIYで建てていく過程が、彼女たちの傷ついた心の回復とシングルマザーの自立をそのまま象徴していて、視覚的に秀逸な設定だと感じられる。製作規模は小さいが、だからこそ身近なリアリティがあり、企画、脚本、主演を務めたクレア・ダンの情熱がひしひしと伝わってくる。全ての女性へのエールを劇中曲で表現する演出も心を熱くさせるが、シーンに上手く嚙み合ってない箇所があり、選曲や編集など、細部では少々荒い点が見られた。
ブータンの奥地にある村が舞台となっていて、とにかくそこまでの道のりの険しさを時間をかけて表現していく前半部や、村の生活が具体的かつ丹念に描かれている箇所が素晴らしく、監督が映画づくりを学んだケンツェ・ノルブ監督からの継承を感じる点が味わい深い。その一方で、この村に多様な生き方を選ぶ自由がないことを、本作では幸福の国ブータンの好イメージに重ねようとしている。皮肉だととらえることもできるが、人権問題の根を深くしてしまう作品になり得ることを留意したい。
まだ見ぬ世界に巣立っていきたいという憧れは理解できるが、そんな青年の想いを小さな妹の視点で同情的に語っていく趣向は、女性に男性の身勝手さを応援させているような構図になってしまっていて、居心地が悪い。本作最大の演出的特徴だった、青年が大人へと成長するモーテルでの印象的な構図も、テーマを語る以外の意味で機能しているとは思えず、それぞれのシーンにも厚みを感じられないため、全体的に内容が薄いと感じる。マーゴット・ロビーの傑出した存在感に救われている。
“ループする一日”という題材は、近年の同ジャンルである「ハッピー・デス・デイ」シリーズ、配信作品「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」における様々な新趣向や、個性的な主人公の魅力によって更新されている感があるが、本作はこれら2作ほどには過激でも先鋭的でもないため、93年公開の「恋はデジャ・ブ」以前に後戻りしているように思える。主要キャストの悪ふざけはさして笑えず、ループを続けて日々を繰り返した末の登場人物の精神的な境地は、浅いところに留まっている。
映画冒頭の、母が父からDVを受ける様子を隠れた場所から目撃した娘と同じ恐怖心が、見ている間中ずっと気持ちを支配する。そうした中で描かれる主人公の恐怖心や怒りや無力感、羞恥心は事態に立ち向かうシングルマザーのリアルな苦しみそのもの。そこから見える個々人のニーズに寄り添えない福祉や社会サービスは痛烈なメッセージ。その一方、物語の軸をなす皆が集まって助け合うアイルランドの「メハル」の精神に救いも。世界中の大勢のサンドラと娘たちの幸せを願う気持ち沸々。
劇映画とドキュメンタリーの両方の特質をもつハイブリッド映画の様相。主題の主人公の自分探しはさておき、学ぶ楽しさや知る喜びが満ちあふれている村の子どもたちの笑顔や仕草がむしろ作品の価値を決定。中でも利発な生徒を演じる少女ペム・ザムちゃん。知識を吸収しようとする熱心さがきらきらする瞳にそのまま映り、そのプリミティブな輝きに★一つ。村長の子どもらに対する教育重視の姿勢が、GNPやGDPでなく、国民総幸福量を使用しているブータン王国の国の形と重なる。
30〜40年代を描いたいくつかの秀作と同質の、時代の感性を、終始まとっている。銀行強盗、男女の逃避行とくれば「俺たちに明日はない」が浮かび、期待も膨らむ。M・ロビーが脚本に惚れ込んで実現したそうで、さて彼女はF・ダナウェイに並ぶか……。結果は、彼女の情熱は存分に伝わり、かつかなりのシーンにドラマチックな要素は散見されるが、ストーリーには盛り上がりが不足。ロビーは能力もスター性も発揮しているが、相手のユージンのキャラクターが平凡だから、か。惜しい。
このタイムループ・コメディは、A・サムバーグの主人公がすでに長年ループ中にいて、C・ミリオティを巻き込む点がユニーク。よって二人の噛み合わない遣りとりが、上級生と新入生よろしく面白い。加えて、タイムループの中にいる二人を通して、人生の哲学的考察もちらり。つまり老いることなく好きな人との関係が輪の中で続く幸せと、反対に歳を重ねながら生き死ぬことの、どちらが意味ある人生か。大人のジョークが連発するお遊びモードの喜劇には意外な隠し味が仕込まれている。
タイトルとポスタービジュアルからは想像できない壮絶な物語であり、家庭内暴力、シビアな親権裁判、劣悪な住宅事情など、シングルマザーが抱える苦難のフルコースで、時に目を覆いたくなるような暴力描写に加え、終盤のある事件に至っては意地悪も大概にしてほしいと観ているこっちが創造主に恨みごとを言いたくなってくるのだが、それらから逃げずに立ち向かうヒロインの姿と家作りを無償で手伝う仲間たちの温かさ、そしてすべての支えになっている子どもたちの笑顔に心打たれた。
都会の落ちこぼれ教師が、麓から徒歩で一週間という僻地にある人口わずか56人の村の子どもたちに数カ月間勉強を教えるだけの極めてシンプルな映画で、不満たらたらの都会っ子の主人公が村に入った途端に突如人格者になったかのように見えてしまう脚本構成には多少の難を感じるとはいえ、カワイイ生徒たちとの触れ合いを描出した実直で素朴な演出には嘘のない優しさを感じるし、人間の営み、教育、幸せについて、声高ではなく耳打ちでそっと教えてくれるようなステキな映画だった。
田舎でくすぶっているツッパリ童貞君が逃亡中の美しき女性銀行強盗犯に出会い……というプロットは古典的とはいえ(かくいう自分もこの設定に類似したVシネマを撮ったことあります)総じて期待通りに展開する分かりやすさは娯楽映画としてはたいへん結構だし、モーテルの浴室で心を通わせてから初体験までの流れを長回しワンカットで捉えるなどの油断ならない演出もあるのだが、二人の事情や苦悩は理解こそできるものの、あまりに手前勝手な行動の数々に感情移入を阻まれてしまった。
タイムループというSFジャンルは、ストーリーを転がすのが思いのほか困難であり、初期設定のセットアップを終えて、主人公がループの状況を受け入れて以降は、繰り返しの描写が増えて中だるみしがちで、劇中人物同様に作り手も物語をいかに循環から脱出させるかが勝負になってくると思うのだが、本作はあらゆる工夫を施した脚本とアップテンポな演出で退屈をはねのけた末に見事な着地を決めている成功例で、いくつかの思考実験要素がさりげなく練りこまれていることも素晴らしい。