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25億円相当の財宝を盗み出した老窃盗団の実話を、マイケル・ケインはじめベテラン俳優たちが演じるという企画がいい。ロバート・レッドフォードの「さらば愛しきアウトロー」同様に、「ミニミニ大作戦」など俳優たちの過去作のシーンが挿入されるのも楽しい。その上で郷愁に溺れ過ぎず、窃盗団の面々をひたすら強欲に描いているドライな演出にもリアリティがあって良いが、その反面、人物像に奥行きがなく、独立した映画としては共感する部分が見出せないまま物語が進行してしまう。
一家が自前の救急車で“もぐり”の救急活動を営んでいるという、ドキュメンタリーとは到底思えない取材対象に度肝を抜かれた。家族一人ひとりのキャラクターが立っていて、TVアニメ「マッハGoGoGo」そっくりだ。優秀でたのもしく大人びている息子たちが、闇事業に従事していたり振り回されていることは社会的な損失に思えるが、同時にこの稼業が“自己責任社会”のなかで必要悪とされていることがよく分かる内容になっていて、観る者に複雑な現状をまるごとぶつけてくる。
あらすじを読んで、中国の人口抑制政策を批判する作品なのかと思いきや、逆にチベットの保守性や因習を背景に、“子どもを産む役割”に縛られる女性が家庭の中で自主性を奪われ続ける地獄を映し出す恐ろしい一作だった。それを理解すると、劇中の“魂の生まれ変わり”を予感させる抒情的シーンが呪いそのもののように感じられる。演出面での新しさは希薄だが、思想的にはかなり進歩的。いまの日本映画界に、ここまで国内問題をクリティカルに描き出せる作家が存在するだろうか。
マカオからやってきた女性がバルカン半島を無軌道にめぐる物語だが、様々な出会いや出来事があるだけで、主人公の人生において決定的な何かが起こるわけではない。だからこそ、即興的に撮られていると思われる多くのシーンが新鮮に感じられ、観客である自分も主人公として旅をしているような錯覚にとらわれる。これこそ良い意味での“観光映画”そのものではないだろうか。ホステルでの出会いや交流が素晴らしくリアルで、複数の国を越境する監督ならではの国際感覚が活きている。
お年寄り+若者一人による集団強盗を題材にしたこの映画は、クライム・サスペンスを楽しむというよりは、若者を除く老人の人生の重みと歳を取ることの悲哀に、むしろ見応えがある。キング・オブ・シーヴスと呼ばれるほどのスキルとは対照的に、肉体に老化がありありしているのが面白い。耳が遠かったり、肝心な時に睡魔に襲われたり。強盗には致命的な現象に、歳が近いので共感するも、犯罪ドラマとしての緊迫感が今ひとつ。それでもベテラン俳優の豪華共演が醸す風格に★一つ進呈。
終始、驚きに満ちたドキュメンタリーである。公的な救急車の数の少なさに驚かされるが、してみると主人公一家のような私営救急隊稼業の存在は必然だろう。加えて業者間の競争、要請者から日銭を得る、業者に違反切符を切り賄賂を要求する警官、利用者。もちろん主人公一家の事情も。等々、夜の救急車の舞台裏を追うことで、行政や医療や市民生活が抱える問題が浮き彫りになる。さながら快調に展開するハリウッドの劇映画を見ているようだが、記録映画ということがそれ以上に驚く。
時代が変われば価値観や習慣も変わる。ここに描かれるチベットの祖父、夫婦と息子たちの三世代家族も然り。映画は一人っ子政策や輪廻転生といったこの地の伝統に根ざした家族、人間、信仰、暮らしといった、いくつかの題材が同時並行的に展開するが、避妊具を風船にかこつけたタイトルの二重性が物語るように、ユーモアと思慮が削がれることはない。政治的な方向にぶれない点を評価したい。それでいて登場人物個々人の視点が風船に集約されていく様を表現する監督の力量が秀逸。
映画の起点として劇中に登場する「別れの博物館」なる施設をネットで検索したら、クロアチアのザグレブの旧市街にありました。監督は自らをシネマ・ドリフターと称しているそうで、なるほどエピソードとシチュエイション、そして全体の流れには、その手法が反映されている。リュックひとつで異国を移動するヒロインを、美しい風景とともに写し込んだ画面は、さながら動画美女図鑑。展開にメリハリが欲しい気もするが、ドリフター的ではある。監督の手法を今後も注目していたい。
ヨボヨボのロートル窃盗団が金庫破りをするという実話ベースのプロットは面白いし、耳が遠くて仲間の合図を聞き逃したり、見張り中に居眠りこいてしまうなどというお年寄りあるあるも笑えるのだが、6人もいるジイさんたちのキャラ立てと計画の全容の説明がまだ中途半端な段階で最大の見せ場であろうミッションシーンに突入してしまう構成には疑問を感じてしまったし、折り返し以降で描かれる事件後の物語もいまひとつ切れ味が鈍く、せっかくの素材をさばき損ねている印象を受けた。
深刻な公営救急車不足のメキシコシティで闇救急車で生計を立てる家族、という元素材から映画的であるうえに、ドキュメンタリーとは思えない的確なフレーミングやカッティング、公道で繰り広げられるカーチェイスの迫力など、劇映画さながらに完成度の高い画面設計には驚かされるばかりで、ナレーションを排して、警察や政治、時に利用者を口汚く罵りながら金のために人助けを行っている彼らの背中から清濁あわせ呑んだ人間の善の本質を炙り出さんとするドライな眼差しにもシビれた。
コンドームを風船にして遊ぶ悪ガキが父親にド叱られるトップシーンで手早くテーマを提示し、産児制限政策が行われているチベットの大草原に、性欲強めの夫婦、出家した女、子づくりを強要される羊たち、などのキャラクターを周到に置いたうえで、輪廻転生という信仰の葛藤を浮き上がらせるためさりげなく試験管ベイビーの話題を潜り込ませるなど、牧歌的な画作りとは対照的に意外なほど緻密な計算が施されている作劇なだけに、風船の如くふんわりしたラストには多少の物足りなさも。
映画を支配するぬるい空気は心地よくもあるのだが、物語がいくらなんでも場当たり的すぎて、何ゆえにこうまでガバガバなんだ、と首をかしげるも、監督トークショーで「脚本を用意せずにスタッフ3人と主演女優のみでとりあえず現地に乗り込んで、旅先で出会った人たちを役者としてスカウトし、即興で物語を作っていった」という制作形態を知り納得至極……とはいえ映画自体はまだ「面白い」の域には届いていないのだが、この変態的な方法論には唯一無二の傑作を生む可能性を感じる。