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製作のゴースト・ハウス・ピクチャーズは2004年の清水崇監督によるハリウッド版「THE JUON/呪怨」からスタートした会社で、近年は「ドント・ブリーズ」などのヒットも出しているが、どうしてそんな社のオリジンにかかわる大事なフランチャイズを、こんな生煮えのかたちでリブートしてしまったのだろうか。ニコラス・ペッシェは前作の「ピアッシング」もそうだったようにすべてのシーンを不穏さで塗りたくってしまう困った監督で、根本的にホラー映画の監督に向いてない。
近過去の事件の映像化、エンドロールではお約束のご本人登場という、クリント・イーストウッド級の飛び抜けた演出能力がないと標準以上の作品にはなり得ないのに、近年ずっと流行っているフォーマットの作品がまた一つ。バンコク出身イギリス人監督トム・ウォーラーによるハリウッド的なカメラワークや編集のおかげでテレビ番組の再現ドラマの域は脱しているものの、結末を知る観客にとって、登場人物が出入りし続けるこの単調な構成では、物語のカタルシスは生まれようがない。
プラスチック製品の不法投棄が例外なく引き起こす海洋汚染と、一部のプラスチック製品が含有する化学物質が人体に与える影響。そうした繋がってはいるものの、基本的には個別に語るべきイシューを、編集によって「完全に同じ問題」として見せてしまうこのようなプロパガンダ作品の倫理性について、メッセージの是非とは別に、映画ジャーナリズムは敏感であるべきだ。また、恒例の指摘となるが、本作は2年以上前からNetflixで配信されている作品に別タイトルを冠した作品である。
日本に支社のない配給元(フォーカス)の影響もあって、日本ではこれまでその高評価に見合わない不遇をかこってきたアニメーション・スタジオ、ライカの作品。本国ではユナイテッド・アーティスツの配給となったこの新作も、傑作「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」同様、子供の観客を見くびらない硬質なテーマ選びとキャラクター、そして何よりも脚本の巧みさに唸らされる。中盤の酒場での乱闘シーンを筆頭に、絶妙なバランスのアクションの押し引きによるリズミカルな表現も見事。
事件の舞台となる幽霊屋敷の劇的なおどろおどろしさ! 血しぶきを浴びたステンドグラスの模様がドクロに見えたりもして!? しかし、夫の死という現実から気を紛らわすべく、先輩刑事の忠告も聞かず、連鎖する殺人事件にのめり込んでいく主人公・マルドゥーン刑事のキャラクターがふんわりしすぎて、没入感を損ねている。守るべき息子をわざわざ屋敷の前まで連れて行ったり、禁煙をやめてしまったりと、甘い設定にアンドレア・ライズボローのクール・ビューティが台無し。勿体ない。
目的は18年6月23日、タイの洞窟に閉じ込められた13人の少年たちの救助。その結果についても周知の救出劇の映画化で、バンコク出身のウォーラー監督は何を見せようとしたのか? タイ警察や米軍、世界中から駆けつけたケイブ・ダイバー、炊き出しなどを手伝う地元住民らが一丸となった現場の混沌がドキュメント・タッチで描かれる。タイの首相にビザの相談を持ちかけるシーンなど、現場で派生したであろう、妙な生々しさも“生きてこそ”の力強さとして、好感の持てる妙味がある。
クジラに夢中だった少年時代を経て、本作を製作したというクレイグ・リーソン監督。ロマンチックなアプローチになるかと懸念するも、母となり、環境問題に目覚めたタニヤ・ストリーターをはじめ、様々な見地に立つ専門家の意見を盛り込みつつ、アメリカ、ドイツ、フィジー等々、世界の海プラごみ事情を網羅。地球規模の問題にふさわしい仕上がりで、未来の実害に対するイメージ喚起に成功した。飛べない海鳥の腹を見て、まずは消費量を減らすことから取り組まねばと謙虚な気持ちに。
冒頭の、きれいな空のパープルと溶け合った湖の描写から、エメラルドグリーンの美しい森等、主人公たちが冒険する、色彩豊かな世界はまさに眼福だ。それぞれの足音や、地図にしるしをつけるペンの音、繊細な音響も、作品の世界観を立体的にしている。小気味よく正論を吐くアデリーナに、ゾーイ・サルダナを起用するセンスも素敵だ。秋色(!)の毛並みのMr.リンクが、氷の谷底で絶望するシーンが印象的だった。〈Do-Dilly-Do〉に乗せて、趣向を凝らしたエンドロールまで楽しい!
東京の“ある家”からアメリカの“ある家”に「呪い」が持ち込まれ、それに感染し連鎖していく3家族の悲劇。3つの時系列を同時進行で描くのだが、ジョン・チョーなど演技巧者が多数出演しているのもあり、それぞれの家族のドラマは余韻を残す。しかし謎を追求する刑事側の行動に「?」が多く、サスペンスとして広がるはずの構成がうまく機能していない。ホラーとしても既視感ある展開で、配信中のドラマ版「呪怨」が疑似実録物という新たな角度から構築していただけに、残念。
タイトルそのまま、2年前世界中で話題になったタイでの洞窟遭難事故の映画化。ディテールを作り込み当時の現場をドキュメントと見紛うレベルで再現、P・グリーングラス作品を彷彿させる全篇手持ちカメラと細かいカット繋ぎで描くが、状況説明がほぼ会話なのと、主要な役が素人(前半活躍するポンプ業者、後半の救出に向かうアイルランド人ダイバーなどは、本人が当時の自分を演じている)というリアルの追求が良くも悪くも緊迫感を削いでしまい、救出劇のカタルシスに欠ける。
海にプラスチック性のゴミが大量に流れ、それがどう人体に影響するのか、なぜ自分に返ってくる愚行を人間はやめられないのか、ということのメカニズムが様々な現場を取材して描かれる。時々「本作が始まってから米国で○万キロのプラスチックが捨てられた」といったテロップが入り、問題を体感させられるのも良い。ただ「プラスチック容器は化学物質だから紙の皿に」と提言する場面、紙は紙で森林破壊の問題にも繋がるな、とも。ある観点からの事実をそれぞれがどう受け止めるか。
昔ながらのストップモーションの技法と最新のテクノロジーを融合することで、ライカは新しい世界を構築してきたが、本作は特にキャラクターの温かみが感じられ(主人公がヒュー・ジャックマンにしか見えなかった)、美しく再現された“自然の風景”、ユーモアを交えたアクションも素晴らしく、その没入感が楽しい(視覚効果のデータ容量は100万ギガバイトらしい)。主人公の冒険の動機や顚末、Mr.リンクの存在、その運命をシニカルに描き、「現代」が抱える問題にも繋がる。