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心理的なサスペンスと恋愛要素を描きながら、実際にはジュリエット・ビノシュの少女のようなときめきと、ギャップとして表れる!顔に刻まれたシワをクローズアップで映し続ける映画だ。それである程度成立させられるというのは、彼女の力として感嘆するほかないが、演出においては重要な部分がセリフで語られる箇所が多く、不満が残る。意中の男性に透明人間のように自然に無視されるシーンのせつなさは胸に迫ったので、もっとこのような映像的な見せ場が欲しかった。
ブライアン・デ・パルマのサスペンススリラーを想起させる、虚構が折り重なったフェティッシュかつ幻惑的な一作。脚本は盛り沢山だが、部分的にリアルだったり荒唐無稽になったりと、落ち着かない。ワイルドな魅力を放つミカエラ・ラマッツォッティが、愛する男に献身的に尽くすところから、次第に野獣のようになっていく過程は楽しいが、その一方で、作り手の女性像が旧態依然としていると感じさせる描写も少なくない。そこをアップデートしてこそなのではないのか。
カザフスタンの大地で西部劇「シェーン」を再現しているように見える作品。だがそれが様式美にまで昇華されているわけではなく、同様の構図が用意されたニコラス・ウィンディング・レフン監督の「ドライヴ」の洗練にも遠い。ある程度のバイオレンス描写はありつつも、現地と日本、監督二頭体制からくる遠慮が作品に影響を及ぼしている気がしてならない。母親役のサマル・イェスリャーモワの演技は圧倒的で、表情のみでも繊細な感情が手に取るように伝わってきた。
苦節30年……! ついに「呪われている」とまで言われた企画が実を結んだのは感慨深い。とはいえ、完成したものを実際に見ると、想像していたより淡白な作品。とはいえ、主演のアダム・ドライヴァーが魅力的で、見ていてとにかく飽きないこのタイミングで映画化されて良かったと思わせる。ギリアム監督の重要なテーマである、夢を見ることの力や、夢を信じる意志を掲げた描写はアツく、これを個人的に不十分だと感じた「スター・ウォーズ」の結末としたいくらいだ。
いまやSNSは誰もが見ず知らずの人と繋がれるネットワーク・ツールに。その善し悪しはさておき、おそらくヒロインのような女性は珍しくない。捨てられた50代の自分が、24歳の自分をSNSの中に創り(なりすます)、結果、図らずも若い男性に愛されるバーチャルな自分によって、50代のリアルな生の輝きを回復させるという筋書きは、いかにもありそう。冒険心をくすぐるSNSの世界と、ラブストーリーとが絡み合ったこの物語には、いまの時代ならではの人間の真実があるかも。
バロック期のイタリア人画家カラヴァッジョ作〈キリスト降誕〉の盗難事件の謎が基になっているそうで、絵の行方を追うサスペンスかと思いきや……、この事件を映画化するという設定になっていて、話はてんこ盛り。劇中映画の脚本家と女性ゴーストライターとの関係やマフィアの陰謀等々、虚実取り混ぜた人間関係が複雑に入り組み、混沌を深める。危うく混沌に巻き込まれるところだったが、絵の行方を追う話ではないと判明して納得。監督R・アンドーはL・v・トリアー嫌いだったのね。
養父と実父の、二人の父を亡くす少年の話だが、ストーリーよりも画面に映るカザフスタンの風景、動物、人々に魅入られる。まず、遠くに山並みを望み、朝日を受ける馬の背中から湯気が立ち上る冒頭からして、自然とすべての生命の息づかいを撮り込んだ画面に情感を引っ張られる。もちろんストーリーがどうでもいいというわけではない。こうした美しい村で起こる惨劇を静かだが、きちんと伝える演出が、村の裏面を暴き出す。森山未來が演じるカザフスタン人の父親役は素晴らしい存在感。
何度も頓挫した末に完成したこの映画に、良くも悪くもテリー・ギリアムその人の映画観を見る。主人公のCM監督は撮影に大苦戦。彼が学生時代に撮った映画の主人公と現地の村人たちは、その後の人生が狂ってしまっている。つまり映画に取り憑かれた者は、夢と現の間でもがき、結局人生をもち崩すというメタファーか。そうだとしても、ギリアムは自分を虜にしたものを映像にして残したかったのだろう。前半は話にキレがなく退屈だが、独創性と豪華な美術のクライマックスで少し挽回。
序盤のSNS擬似恋愛物語、中盤以降のあらかじめ失われた有り得たかもしれない物語、最後にたどり着く真実の物語……そのどれもが下世話で生々しく、嘘にまみれているがゆえに切なく、このエグ味こそが恋愛の真実だと感じさせる説得力のある脚本は、周到に仕掛けられたギミックも含めて見事だと思うし、端正ながらここぞという時に大胆になる演出の素晴らしさに加えて、メガネ熟女ビノシュが、もう可愛いやらエロいやらで、自分が求めているオモシロ映画の理想形に極めて近かった。
絵画ミステリとして導入はそれなりに期待したけど、展開するにつれ話のスレッドが何本も立つばかりでちっとも焦点が定まっていかず、途中から楽しみ方が分からなくなってくる上、絵画の話も段々どうでもよくなってくるし、ミスターXとかどうかしてるネーミングセンスの奴から細切れに送られてくる映画の脚本が最後までいく前に「傑作だから撮れるとこから撮っちまおう!」て、エロVシネでもそうはならんだろ、なんてツッコミどころもメガ盛りで、まあ、なかなかに面白くなかった。
森山未來がカザフスタン人役というのにはいささかたまげたが、なにより凄いのが精密な画作りで、美しく広大な風景の切り取り方はもとより、そこに置かれる人物、動物、果てはバスなどの無機物に至るまで、その動きも含めての構図が極限までこだわり抜かれているし、色彩の配置もこれ以上はないと思わせる仕事で、全てのカットでため息が漏れてしまうほどの素晴らしさだったが、穏やかな日常を唐突に襲う西部劇調の物語は小味は効いているものの、少し予定調和なのが惜しいと感じた。
テリー・ギリアム79歳、あらゆる艱難辛苦を乗り越えて完成にこぎつけた隅から隅までギリアム印の映画で、聞き及ぶ製作過程同様、映画の内容も混沌としているがゆえになんとも面白く、監督が本物のドン・キホーテになるまで神がこの映画を撮ることを許さなかったのではないだろうか? などということすら考えてしまい、自分も映画人の端くれとして胸に迫るものがあった。ギリアム爺さんが無謀な闘いを挑み続けていたのは断じて風車などではなく、映画という巨大な魔物なのである。