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とても良い設定でラストも可笑しい。ただ犯罪者の動機が「人情話」に傾いた分、かえって腰くだけという印象か。生田の男泣きをはじめ名シーンも多いのに、何か本当の敵を間違えているような気がして仕方がない私。この日本を構成する愚劣で悪らつな大多数の人々(滝藤とその一味、他)は生田君の運命をせせら笑い、弱者を食い物にして生きているわけで、釈然としないのは私だけじゃないと思うな。そういう個人的な恨みつらみを問題にしちゃいないぜ、と犯罪者集団は言うのだろうが。
タイトルから分かるようにこれは日記。劇的な葛藤を排除しており、男女の別れなどあっさりしたもの、それがいい。中心は日々の風景の移ろいと食事のメニューで、その提示の仕方があまりにさりげなく、ぼおっと見ていると時間の流れが分からないほどだ。監督が編集者で自分の方法論に絶対の自信があるらしく、鈴木亮平看護師の見事な、と語られる看取り場面など完全削除。ちと残念。妹すずちゃんがびっくりした「おっきい!」ブラってどのお姉ちゃんのだったか気になって気になって。
偶然のもたらす事件という発想は良好。ただし偶然で全部構成するから先がまる分かり、やっぱりそれはまずいでしょ。私の小学生時代のアイドル浜畑さんと園さんの共演を見られたのは眼福だが、極悪犯罪者に対する企画の態度が間違っていると思うので、星は削った。話の前後を逆転させる語りがかえって映画を間のびさせているのも、意図は分かるだけに惜しい。振り込め詐欺に注意を喚起するというより、逆効果じゃないかと心配する私はどうかしているのか。これは喜劇にならない素材だ。
様々な、全く異なるモチーフを片っ端からつめこんで物語を構成する手法。落語で言う三題話の感覚で、ただし三つどころじゃない。骨、おしぼり、盗撮DVD、延長コード、太陽光発電、エトセトラ。事物の取り合わせ方の無茶ぶりが見どころ、思わず笑っちゃうオチがさすがである。死者のナレーションで映画を回顧する脚本自体に一つのトリックが仕掛けられていて、つまらない男の人生譚に味を添える。それにしても川瀬と三浦で師弟コンビって発想が凄い。この人達の作品にハズレなし。
ネットを使って公害企業や公害人間を公開処刑!! いやこっぴどい処罰がせいぜいだが、一見、手が混んでいるわりには、予告犯の素性も、犯行の理由もチープでガキっぽく、人騒がせ映画のサンプルのよう。劇中、予告犯は、〝それが誰かのタメになるのなら、どんな小さなことでもやり通す〟と殊勝げに呟いていたが、実際、予告犯がやっていることは、小さなゴミをネットというブルドーザーで処理しているの図で、ただ世間の注目を浴びたいだけ。戸田恵梨香の高飛車演技も浮いている。
鎌倉の古い日本家屋で暮らす4姉妹のささやかな日々の波風。何よりもその落ち着いた華やかさが好ましい。4姉妹役の女優がそれぞれに役に馴染み、自分の音を奏でつつ、姉妹ならではのハーモニーを響かせている。女系映画にありがちなある種の生臭さがないのは、彼女たちがまだ発展途上ということもあるのだろうが、昭和的な器に盛られた新鮮素材の4姉妹=4女優に、何やらこちらまで食欲増進。瀧本幹也のカメラも軽妙で、是枝作品でこんなにいい気持ちになるとは画期的。
偶然をいくつもころがした人生の曲がり角コメディーという狙いはともかく、もう一つ弾まないキャスティングと演出のテンポのゆるさがアクビを誘い、実にまどろっこしい。同じミフネトシローという名前だったばかりに、見習い介護士と振り込め詐欺の新米受け子が入れ代わるという設定も、年齢はどちらも40代前後、がその言動は世間知らずの若者並で、笑うに笑えない。園まりと浜畑賢吉の起用も、知る人ぞ知るって感じで、さして映画のプラスには。教訓的なタイトルも押しつけがましい。
硬派の俳優という印象が強い三浦貴大が、柳英里紗を相手に大胆なセックス演技!! おっと、役者ならいつか通る道、大声で言いふらすことでもないが、けっこう、ねっちりとリアルで、デビュー作から観てるこちらとしては、何やらドキッ。それはともかく、都会でも田舎でもない水戸を舞台にしたクールなコメディーで、ひねった脚本とキャラクターはかなり面白く、ブラック度も純情度もそれなりに。〝男ってのはな、トシをとっても成長するものなんだよ〟という川瀬陽太の台詞が痛い。
映画でネットを描くのは難しい。現実の後追い、それも矮小化されたネット社会が物語の中心ではフィクションの負けは明らか。シンブンシなる集団が、どうということもないネット炎上した一般人に放火、強姦、暴行を行い、政治家には肉体的な危害を加えない狡猾さを見せられた後で感動的ないい話にされても白けるのみ。下層社会からの下から目線に見せかけた権力側のガス抜き集団にしか見えず。戸田恵梨香の刑事は部下を率いる貫禄がなく虚勢を張って上ずった声で叫んでいるだけ。
〈喪失感を埋める〉という是枝作品共通のテーマを、父を亡くした三姉妹+義妹の物語に凝縮させた珠玉の一篇。永遠に観ていたくなる女優たちの佇まいと姉妹感覚が絶品。歳の近い綾瀬・長澤と夏帆・広瀬へと自然に別れていた姉妹が、やがて同じ境遇を持つ綾瀬・広瀬が呼応しあう展開は、男たちを希薄化して女系映画へと没入することで映し出せたものだろう。「モテキ」の延長的な長澤の美脚狙いはカンパニー松尾譲りの擬似ハメ撮りでは効果的でも正調のフィルム撮影では悪目立ち気味。
撮影所の遺産に頼らずに低予算で娯楽映画の復興を目指すなら一にも二にもアイデアと技術で勝負するしかない。が、振り込め詐欺師、介護士、老いらくの恋にまつわる複数の挿話を捌くという正に熟練の技術を要する演出が尽くツボを外されると形骸化した映画のようなものだけになってしまう。事件の決定的な瞬間が各々の視点から回想される場面はサスペンスも驚きもなく、絵解きに終始。仁科貴の好演、園まりの健在ぶりに救われる思いだけに、風呂敷は小さく広げておくべきだったのでは?
世界をこんな風に見て映画にできる人がいるから映画はおそろしい。夜の繁華街を逃げる盗撮元教師と恋人を捉えた移動撮影から不穏感が立ちこめてたちまち見入ってしまう。教師の〈好色人生と転落人生〉がもたらすエロスと輪廻転生。大和屋竺「裏切りの季節」で組織が狙った写真を盗撮ビデオに置き換えたかのような大和屋的世界観に冨永的世界観が重なりあった極地が水戸に出現した。筆者が映画に求めるものが全てつまっている。川瀬陽太のくたびれた中年男と松浦祐也の怪演も最高。