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あまり製作費をかけてない戦争映画だなあと思って観ていたら、別のジャンルの要素が流れこんでくるのだった。とっちらかしたままの要素がいくつかあるのが気になるものの、基本的には、撮影所時代に撮られていたBムービーのテイストをうれしく甦らせた映画。キャストの知名度は高くないが、心根の優しい主人公を演じるJ・アデポ(D・ワシントンの「フェンス」で長篇映画デビュー)も、折り紙付きの血統のW・ラッセルも、ヒロインのM・オリヴィエも魅力的で、今後伸びてきそう。
パリ到着から亡命までの数日間をベースに、ヌレエフの幼少時代、レニングラードでの修業時代が複雑に交錯する構成。彼が「ここではない場所」を常に求めつづけていたという解釈に説得力があり、主演者が見せる高慢な微笑も、いかにもヌレエフっぽくて魅力的。でもせっかく本物のダンサーを主演に迎えたのだから、もっとダンスをたっぷり見せてくれてもよかったのに。ところでヌレエフのパリ滞在と亡命は、2015年にBBCのドキュドラマにもなっているとかで、こちらも大変気になる。
アウトローと「聖なる娼婦」の物語、または、死を直視した悪人が善行に目覚める物語の類型に属するストーリーだが、主演ふたりの身体と表情を的確にとらえる演出と、ロケ地の風土を空気ごとつかみ取っているかのような映像により、類似作品とは一線を画す、独特の情感あふれる作品に。犯罪映画らしからぬ音楽の選択も正解。「女性ならでは」とか「ヨーロッパ人ならでは」とかあまり言いたくないのだけれど、メラニー・ロランのセンスがはっきりと打ち出された映画なのは間違いない。
これまたBムービー的題材だけど、装いは最先端科学。とはいえそれが説得力増大につながっているかはまた別問題。前半部分の面白さはむしろ、家族がいない理由をどう取り繕うかとか、電源をどう確保するかとかにある。ところが後半、物語的に重要と思われる部分がなぜかはしょられていて、突然の方向転換に戸惑うばかり。さらに、スリルが最高に盛り上がるはずの部分での、演出の生ぬるさにはびっくり仰天。シリアスにやってもそうでなくても、もっと面白くできたはずの映画なのだが。
ノルマンディー上陸作戦の大作をいろいろ見てきたので、冒頭の米軍機内で落下傘部隊の兵士たちが話す会話の内容が軽く、いざ戦闘場面に突入しても画面はB級映画予算だなと思って見ていると、ターゲットのナチス軍陣営のなかに白衣のマッド・サイエンティストが登場。占領下のフランス人を実験材料にして、「ヒトラー千年王国」をつくるための肉体改造の血清を完成する物語が始まる。あげくは人面メイクのすごいホラー映画に転じるので、びっくり。B級ファンはこれでいいと満足するかも。
レイフ・ファインズがルドルフ・ヌレエフを研究し、どうしても映画化したかったという意気込みがよく伝わってくる。オレグ・イヴェンコも期待にこたえ、伝説のダンサーを体現し、バレエにかける情熱を激しい身振りとことばで演じて、みごと。監督みずからヌレエフのバレエ教師役をつとめているが、脇役もよく、パリの美術館などが丁寧に描かれているので、ヌレエフが亡命したくなる気持ちも分かりやすい。KGBを相手にアンドレ・マルローまで関係してくる亡命シーンは圧巻だった。
アメリカの犯罪小説を原作にしたジャンル映画。ベン・フォスターとエル・ファニング主演のロードムーヴィーでもあるのに、「俺たちに明日はない」とは全く感触がちがう。演出がメラニー・ロランでフランス的映像感覚と暗さが全篇に漂い、フィルムノワールの娯楽性を楽しむというよりはアート系作品の感じ。不治の病ではなかったのに、ベンが終始、酒とタバコを口にしながら、咳こんでいるのも、暗い要因だ。キメのこまかい演出や演技、編集もいいので、カルトなファンにはお薦め。
基本的にはフランケンシュタインの物語だが、神経科学が発達している現代、キアヌ・リーヴスが倫理の壁を越える暴走をしても、とりわけ異常な人間像には見えない。研究所の上司ジョン・オーティスが金儲けの目的で医療開発企業をやっている設定にし、キアヌ・リーヴスは家族愛のためにクローン人間を作る学者にしているからだ。われわれも日常的に使用している機械に対して、好きなものと嫌いなものがあるので、主人公がロボットやクローン人間に感情移入する娯楽作品も成立する。
輸送機の床を簡単に撃ち抜くナチス・ドイツの対空機関砲。兵士たちがグズグズの肉片と化すなかでのパラシュート降下。機関砲から放たれた曳光弾が飛び交い、高射砲の砲弾が炸裂しまくるなかでの空中降下。空中版「プライベート・ライアン」とでも呼びたくなる導入部で早くもアガった。降りてからはホラーへ移行するが“小隊もの”の雰囲気をキープしており、そのハイブリッドぶりも巧みで文句なし。トンプソン機関銃の派手な発火炎や快調な排莢も◎。B級的世界を堪能できた逸品だ。
バレエの世界とその住民にはまったく無知の身ではあるが、しっかりと楽しめた。レイフ・ファインズによる緩急を効かせた演出もさることながら、やはり魅せられたのはヌレエフという人物。生まれついてのボヘミアンなうえに全身でもって芸術を愛する彼に国やイデオロギーという価値観はまったくもって意味がない。このピュアネスぶりが刺さるし、他国のダンサーとの共鳴がこれまた染みまくるのだ。ル・ブルジェ空港での亡命も派手さはないが、彼に魅せられるがゆえに異様にアガった。
舞台は88年の米国。人によって違うと思うが、自分的には同国が同国らしかったギリギリの頃だと思っている。で、映し出されるのはアメリカ原風景を存分に感じさせるモーテル、ダイナー、バー、国道といったものばかり。というわけで、ウィリアム・エグルストンやスティーヴン・ショアの写真集を眺めているような94分。主人公の病をめぐる皮肉なオチや意外と現実的な逃避行の収束など、爽快感がまったくないのもなんだか染みる。ただ、ベン・フォスターは80年代を生きる男に見えず。
科学の発展と倫理観のせめぎ合いを大きなテーマにしているはずだが、科学者キアヌは妻子のクローン製造を秒で即決。物語的にも誅罰的にもクローン妻子になんらかの悪しき変調が起きていいものだが、それもナシ。とにかくすべてがイージー。しかもクローン製造よりも、死んだ妻子に代わってキアヌが欠席・欠勤の連絡、メールの返信、SNSのコメント応対するほうを難儀に描くあたりは笑うしかない。キアヌ・リーヴスは出演作のムラがありまくる俳優だが、これは明らかに残念なほう。