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星取りを担当していて楽しいのは、掘りだし物の良作に出会えたとき。NY郊外のスケートパークに、10代後半のスケボー女子が増加している事実すら知らなかった。ヒスパニック系の母子家庭に育った主人公をはじめ、人種も多彩な女の子たちの日常的な友情、パーティ、恋愛未満の感情がリアルに描かれている。プロの俳優やモデルにはない雰囲気だと思ったら、監督がドキュメンタリーを撮ろうとしていた素人の女子が大挙して出演とのこと。豊かな映画づくりの時間が流れている。
19世紀末が舞台だが、夫婦のあり方の実験を描いた物語として鮮烈な印象を受けた。田舎娘がパリで暮らす小説家の若妻になるところから、ブルジョワの女性を夫婦共通の愛人として持ち、夫は若い女性に走り、コレットは性同一性障害をもつ女性と同性愛の関係になる。そのような形ではあっても、ゴーストライターとして夫のために小説を書き続けることが、この夫婦にとっての家庭生活であり、「子ども」を持つことを意味していたというセリフで泣いた。夫婦の形に決まりなどないのだ。
89年のベルリンの壁崩壊から30年を契機にいろいろ研究していたところで、実話を基にしたタイムリーな映画を拝見。戦後のドイツは東西に分かれたが、壁の建設はずっと後年の61年になってからのこと。本作では、若者が祖父のお墓参りを口実に西側のベルリンへ遊びに行ったり、抑圧的な体制側に抵抗した高校生たちが少人数にわかれて西側に亡命したり、壁ができる前の市民の往来が描かれる。社会主義に対する世代間の認識のちがいを基にしたドラマも見応えがあり、大変勉強になった。
還暦をすぎたら自分の畑を持ちたいとひそかに思っている。化学肥料や放射性物質による汚染を心配することなく、野菜の滋味を堪能したいからだ。石原さとみばりの美少女であるキム・テリは、田舎に帰ってきて『ソトコト』のような田舎暮らしを満喫しているように見えるが、それなりにリアリティとの葛藤もある。落ち込んだときに彼女が手づくりでつくる蒸し餅、マッコリ、激辛のトッポッキなどの素朴な韓国料理がとてもおいしそう。国内ではなく韓国で畑を持つべきなのか悩ましい……。
スケボー女子の格好良さも含め、画面が終始、スマホ会社のCM映像を見ているよう。音楽と効果音の入れ方がそれに輪をかける。出演者たちはいかにも素人っぽいし、ストーリーはオーソドックスだが、全篇が映える。これを映画の新しい潮流とまでは言えないが、一つの表現スタイルとしてはアリかも。SNS万能時代ならではのスタイリッシュな青春映画。今どきの若者はみんなスマホに夢中なので、生の会話をする機会がめっきり少なくなっている断絶も、この映画を見ながら思った。
21世紀の今も世に性差別は尽きるまじ。19世紀となるとなおのこと。『フランケンシュタイン』のメアリー・シェリー、この映画のコレット。女性が自分の名前で作品を発表することの困難さには嘆息。けれどそればかりが主題ではない。コレットが著した物語に勝るとも劣らないくらいにドラマチックな同性も含めた恋愛遍歴や結婚歴を、この前半生の伝記映画では描ききれていないと、ちょっぴり感じる。コレットのどんなところをドラマにしたかったのか。監督の明確な意図を感じたかった。
これが(社会主義)国家の実相だと言ってしまえばそれまでだが、ハンガリー動乱で犠牲になった市民に黙禱を捧げた高校生の、その僅か2分間の行為が国を敵に回す事態になるとは!? しかも実話だというし、その後の人生を左右される大ごとにまで発展したのだからなんとも恐ろしい。友情と信頼関係、あるいは家族の事情など。クラウメ監督の、十代の若者たち個々人の反抗、そして決断に至るまでの「理由」の、サスペンスを孕ませた見せ方がうまい。青春ドラマとしても優れている。
自然・食・暮らしなど、人と不可分の関係にあるこれらを題材にした物語は、いろんな国や地域でローカライズが可能だと、今更ながら思った。韓国の四季をベースにした今回は、畑を耕して苗を植え、収穫した農作物を料理したり、干し柿を作ったり。詩情豊か、かつ全篇の美しい映像は和み効果抜群。反面、就職に恋愛、何ひとつうまくいかない都会暮らしに疲れたヒロインが、田舎に戻って始めた美味しく美しい生活、こうもすんなりいくのだろうかと、突っ込みたくなる気持ちも少し。
ヒロインが練習中にケガをして血を流す冒頭のシーンが秀逸。女子にとって思春期は名実ともに血の流れる季節。勉強もスポーツも男の子と同じかそれ以上にできると思っていたのに、あるとき突然共学から男女別のクラスに分けられる感じ。男子のほうが話も合うし一緒にいて楽しいけど下ネタにはついていけないとか実に生々しい。その戸惑いや揺らぎが、居場所を失って転々とする境遇に重なる。ボードが乗せて滑るのは女性の未来そのものだ。J・スミスがいい感じのクズを好演。
作品選びに演者のポリシーやテーマを強く感じられる俳優がいる。キーラ・ナイトレイもその一人。本作の彼女は、夫との共犯めいた関係から、男性の理想を反映したミューズやアイコン役を引き受ける時代を経て、同性愛や前衛パフォーマンスという形で人として昇華する。女性の解放や平等を訴える作品は昨今の「#MeToo」運動の盛り上がりもあって後を絶たないが、それは同時にこの問題がいまだ未解決であることを意味する。これらが一日も早く愚かな過去の古典になることを切に望む。
「戦後ドイツ」と一言で言ってもその時期や場所によって事情は少しずつ異なってくる。本作で描かれたのはベルリンの壁ができる前、共産主義の理想に邁進する東ドイツの姿だ。明度と彩度を抑えた不穏な街並みに反し、高い教育を受け将来を嘱望される若者たちの瑞々しい情熱が、その後のドイツの行方を占う若さと未来を象徴しているようだ。民主主義を体現する彼らの闘いの眩しいこと。そこには中心となる二人の青年・テオとクルトの対照的な美しさも一役買っていることは言うまでもない。
原作漫画はもとより、橋本愛主演で映画化された日本版のスタイルをほぼ踏襲している印象。その上で登場する料理やお酒のレシピは餅やマッコリ、トッポッキなど韓国のものを採り入れ、驚くほど違和感なくリメイクしている。やや曖昧すぎるきらいのある三角関係や、家を出ていったヒロインの母親の描写も過度な補足説明は控えられ、どちらかというと要素を詰め込むほうが得意な韓国映画としてはかなり異色と言える。三浦貴大が演じた青年役のリュ・ジュニョルがいい仕事をしている。